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半分の世界で出会った優しさ

半分しか見えない世界は、とても不便でした。道を歩けば人にぶつかり、ものにぶつかっては転んでばかり。そのたびに、心のトゲトゲがまた誰かを刺しそうになります。


「見えないの!どいてよ!」


そう叫びかけたとき、トゲトゲお化けの手を、そっと支える人がいました。


「大丈夫? こっち側、見えないんだね」


それは前に一度、トゲトゲお化けのトゲにさされて泣かせてしまったクラスメイトでした。

トゲトゲお化けは思わずうつむきました。


「どうして助けるの。前に、ひどいこと言ったのに」


クラスメイトは少し笑って言いました。


「だって、困ってるでしょ。それに、あのとき、少しだけ泣きそうな顔してたから」


その言葉を聞いたとき、トゲトゲお化けの胸の奥で小さな音がしました。からん、と、何かが落ちて割れたような音でした。

それはトゲトゲお化けの心を守っていたトゲのひとかけらが落ちた音でした。そしてトゲが消えると、その場所から、小さな温かさがにじんできたのでした。


また別の日。トゲトゲお化けは階段でつまずきそうになりました。今度は前に「こわい」と言って離れていった子が、トゲトゲお化けを支えてくれました。


「ゆっくりでいいよ。つかまってて」


トゲトゲお化けは、喉の奥がつまる感じがしました。


「……ごめんね。いつも、こわくって。」


ぽとり。またひとつ、トゲが落ちました。

トゲが落ちるたびに、トゲトゲお化けの中に知らなかった痛みがあふれてきました。これまで自分が刺してしまった人たちの顔が、半分の世界の中に次々と浮かんできます。でも同時に、その人たちの優しさも、はっきり見えてきました。

買い物帰りに荷物を持ってくれたおばあさん。ものにぶつかりそうなトゲトゲお化けを助けてくれた知らないお兄さん。心配そうに見つめる先生の目。

半分しか見えないはずの世界なのに、トゲトゲお化けには前よりたくさんの「優しさ」が見えるようになっていったのです。

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