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【完結】検察審査会の人々  作者: 鈴音あき


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検察審査会の人々33

小林さん頑張ってオムライスを完食。

「皆さんお帰りなさい。ゆっくりお昼休憩してきましたか?」


「ゆっくりはしてきたけどオムライスが苦しかったー」


「オムライス?」


波野さんが会議室で議決書草案の作成をしている会議室にみんなでワイワイと帰ってきたのだが。


オムライスが苦しいとの、謎なワードが出てきたので波野さんは不思議な顔をした。


「ランチでオムライスを皆で食べてきたんですが、思っていた以上にサイズが大きくて……お腹がいっぱいになって苦しくなってしまいまして」


「ごめんなさい~」


小林さんが申し訳なさそうに謝ってきた。


「そんなに謝らないでください。俺がオムライスのサイズをチェックしてなかったのがアカンかったんですから」


「でもあのサイズであの料金は反則やとオレも思うわ」


渡辺さんが満足そうな機嫌のよい顔で感心している。


「1200円のオムライスではないですよね」


有馬さんも同意する。


食事を済ませてからは、皆で中之島公園に移動して小林さんはお腹が落ち着くまで公会堂の玄関前の階段に座ってのんびりと休んでもらい、比較的に元気で動けそうなメンバーは公園内を散策してみたり、バラ園の先まで行ってみたり、思い思いの過ごし方をしてきたのだった。


「さて、それでは皆さんお揃いなので集中していきましょう。午前に議決した暴行事件の草案を作成した分を確認してもらいます」


波野さんが昼休憩の中で作成した議決書の草案をパソコン画面に出して朗読していく。


「……以上、審査員の慎重で公正な審査に寄り、検察官の不起訴処分は相当であると判断した。……と、纏めてみましたが如何でしょう?」


波野さんは朗読を終えると、パソコン画面から顔をあげて全員の反応を待つ。


「ええんちゃいます?」


「そうやねぇ。疑わしい事してたから被疑者が飛び出してきてもみあいになったんやし」


北口さんが同意する。


「ではこれで議決書草案を確定させて、原本を成立させます。皆さんお疲れ様でした」


波野さんが議決書の清書をするためまたパソコンをいじる。


その間はちょっとヒマになるので、オフレコタイムになった。


「もしホンマにバイク泥棒や無かったとしても、勝手に他人ん家の庭に勝手に入って来たらビビるし、何か用事か?って出てくるし、バイクの近くにおったら泥棒と勘違いされてもしゃーない思うで」


「そういえば、この被疑者さんは不法侵入で逆に被害者訴えたりせーへんのかな……」


「わざとではなくても怪我させたのが自分やからって被害届は出さんかったんちゃうかなぁ」


「えぇ? 被疑者さんええ人過ぎんか?」


「せやなぁ、もし本物のバイクの窃盗犯やったとしたら、見逃したことになるんちゃう?」


「犯罪者を取り逃したと?」


「うんー……」


「疑わしきは罰せず?」


「そう言う事になるんかなぁ」


「被害者さん泥棒目的やなかったんやったら、これを機に紛らわしい事はせんとこうて思ってくれるかなぁ」


「盗んでないし触ってただけやし。ピッキングツールもそれらしい代用品もあるけど、ピアスのチャームの域から出てへんし」


「中途半端やな~……。白なんか黒なんか、はっきりすればええのに。グレーやとモヤモヤする。どうにかならんかな」


皆で口々に思っていることを話していくと、望月さんが不満そうに呟いた。


「まぁ、たぶん泥棒やったらまた何かやらかしてくるんちゃうか? それまで見守るくらいしか出来んで?」


「自治会がしっかり機能してるんやったら防犯担当者が回覧板作ってご近所のパトロール強化するやろうし、もしかすると警察もパトロールしてるかもしれんし?」


「そうしてくれてると住民の皆さんも安心できるけど、被疑者さんが自治会に声をあげてるかどうかやな」


「自治会の話か? それやったら最近は自治会に入ってないとか、自治会自体が解散してることもあるらしいで? もしそんなとこやったら警察の見回りをお願いしたり防犯カメラを自腹で設置するしかないし、個人の力だけやと限度があると思うわ」


「え!? 自治会入ってない人おるん!? 自治会が無いってなんで!? あるのが当たり前やと思ってた!」 


松田さんがビックリして口調を荒げる。


「僕去年自治会の役員やっててな。会長は若い人にやってもらうことができて、僕は楽させてもらったんやけど……今年度の役員決めるの大変やったんわ。自分の家の事情ばっかり主張してやりたがらへん。

家族が協力してくれへんから出来へんとか、病気で会議に出席出来へんとか、やったことないから出来んとか。やったことないんやったら一回やってみればええやん!て怒りたくなったわ。

やりたくないのはわかるけどな、誰かがやらな自治会って組織が回っていかんやろ? ずっと役員やれなんて誰も言うてないし。期間は一年やし難しかったら助けてもらったり手伝ってもらえばええんや。

ボランティアやと思ったらええのにな。

まず、高齢化で役員になるモンが少ない・空き家が多いとこは数年ごとに役が回ってくる。酷いとこやとオリンピック並みの頻度やて。

自治会の仕事のせいで休日が潰れるのが嫌・若い人が役員になっても本業が忙しくて仕事に影響が出てしまう・女性であれば妊娠出産が分かって離脱する……。

いろんな事情があるんは分かってるで。けど、自治会に入ってるんやったらいずれは役員やらなあかんのは分かってるはずやしな。会費納めたら後はほったらかしとかありえへんで。

あ、街灯あるやろ?あれの管理してるのって実は自治会やって知ってた?

前までの自治会の定例会は嫁さんが行ってくれてたんやけど、僕が定年退職で会社務めが終わったから時間があるってことで、一年間役員の仕事やることにしてな、初めての会議に出席した時に街灯の話聞いて驚いたんや。

地域のことに詳しい民生員さんも定例会に来てもらって会議してたら、あそこに住んでたおじいちゃんがどこそこで倒れて亡くなってたとか、防犯灯の設置の角度で住民が眩しいって苦情があったり、ここに高齢者が住んでるから声掛けしてるとか、乳幼児や小さい子の飛び出しに気を付けてとか、あの道は~あの土地は~そこの道路の水たまりは市のどこの課に問い合わせてとかって教えてくれてな、ホンマにいろんな話が出てきてたわ。なんや、僕の知らんご近所の話がいっぱいで楽しかったで。

まぁ去年の役員さんたちは優しいメンバーばっかりやったから、地域の会議とか行事があれば、皆で役職関係なしで助け合って和やかにやれたから問題にはならんかったけどな」


早川さんが経験したことを話してくれた。


「あー、自治会の大切さを語ってしもたわ……。僕が言いたいのは、ご近所での声掛けとかコミュニケーションとるとか小さいことでもええんや、自治会や地域での組織がしっかりしてたら泥棒は近づかへんってことらしい。おばちゃんたちの道端での井戸端会議があるやん? あれも結構防犯になるらしいで?」


「へぇ?」


「外で話してる人がいてると泥棒はまず実行せーへんねんて。見られたら捕まるからな」


「犯行に及んだときに見られてなくても見られたんちゃうかって不安になるから?」


「そういうことやな。せやからご近所同士で仲良うしてたら声掛けも自然と増えるやん? ただ挨拶するとかだけでもええねん。犯人が自分にも声かけられたら顔覚えられるんちゃうかって心配になるし、そういう地域には泥棒って来うへんらしいわ。これは防犯担当者が警察から聞いてきた話やねん」


「今回の被害者さん、シロやったら紛らわしいことはせんとこうって反省するやろか?」


「シロであってほしいわ。せやないと、犯人取り逃がしたことになるし。頼むで、被害者さん!」


「クロやったら早く捕まってほしいなぁ」


「でも捕まるてことはまた誰かの家にドロボーするってことやで?」


「ん-。どっちがええんや? ドラマでは犯人かもしれんからしっぽ出すまで泳がすってことが出来るんやろうけど、それってありなん?」


「泳がせてわざと罪を犯させて実行犯として逮捕する? そんなんわざわざ被害者作ってどうすんねん。てゆうか、新たな被害者が可哀相やん」

 

「そうやんなぁ……」


「議決書に、被害者さんの窃盗犯を疑っているって事を記載することって出来へんかなぁ?

当時つけてたピアスのチャームがピッキングツールの代わりに使えるんやし。

検察官が被害者さんのピアスがただの装飾品やとしか思ってなかったんかもしれんけど、審査会のメンバーは似合わないピアスに納得できへんし、チャームが解錠の道具になってる可能性を払拭できるのか?

その辺を証明できん限り、被害者さんの証言を信じられへん。……とか?

だいたい他人ん家に無断で入ってバイクの鍵の周りに指紋ついてて、何が見てるだけやねん。盗る気満々やんか。それやのに自分が被害者やなんてなんちゅう自分勝手な物言いやねん」


望月さんは被害者がクロだと思っての発言だという事だろうか。


「今回の事件、検察の捜査が甘いのかもしれませんね」


「検察官にピアスの話を聞くことはできませんか?」


「議決は出来てるけど、被害者が犯罪者である可能性を考えたいです」


「気持ちは分かります。ですが、それは事務局で検察に意見書として提出しておくことにしませんか?」


苦笑いで波野さんが提案する。


「あー、僕らの仕事は飽くまで暴行事件の審査であって窃盗犯を捕まえることではないと……」


審査会の仕事は逮捕することではなく検察の判断が正しかったかどうかの審査をすることだ、とブレーキがかかった。


「そうですね。検察に意見書を出して改めてこの地域のバイク泥棒の警戒をしてもらうほうが無難な対応になるのではないでしょうか?」


「そのうえで被害者さんも参考人として引っ張ることは?」


「参考人としてなら捜査に協力というカタチで新たに話を聞く事にはなるかもしれませんが。検察官は警察が捜査して出てきた資料からしか取り調べるしかありませんから、警察が見落としていたのなら気づかないのかもしれませんね」


「えー? ドラマでは検察官めっちゃ外に出て捜査してたのに?」


「ドラマやから出来たんやで?」


「実際にはそんなことはないんですよ。検事さんいっぱい事件抱えてるんでそんな時間はないですよ」


「それにもう議決書は成立させてしまってるし?」


「あー。そうやった」


「もう今回は意見書出して、再捜査してもらえるかどうかは検察と警察の判断に任せるしかないわなぁ」


なんとも味気ない会議の終了に皆不満が漏れているようだ。


そして、次回の審査会は交通事故を取り扱うとの予告があったので解散。


現場の下見に参加する人が集まり事務局が用意してくれたメモを片手に裁判所を出発。


今回も向井さんと有馬さんの愛車に分乗して事故現場に向かった。

読んでくださってありがとうございました。


自治会の話が出ましたが、地域の組織に入れ~!なんて強制はしません。

私も会費払ってるけど、どんなことに使って何でそんなことするんだろうって考えたこともなかったので。

総会の資料読んでも分からないことだらけだし、委任状出して会費払えばそれでいいんでしょって。情けない大人でした……。

でもその地域で生活していて住民同士のつながりが出来て困ったことがあれば自治会の役員さんに相談したらすぐに対応してくれたりで、安心することがあったりもします。

ウチのご近所さんは本当に仲良しみたいで、よく話しかけられるしオバちゃん同士でスポーツセンターで運動したりカラオケ行ったりしています。

向こうの○○さん入院したで~とか、あそこの✕✕さんの子が小学生なるで~とか、生活の知恵や料理のレシピなども、いろんな情報が入ります。

挨拶だけのはずが道のど真ん中でお喋りが続いたり。

そこまでの地道な努力が手間かもしれませんが、たまにはご近所付き合いしてみませんか?


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