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【完結】検察審査会の人々  作者: 鈴音あき


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検察審査会の人々22

「証拠不十分。やなぁ……」


早川さんが呟いた。


「そうやな……」


向井さんが同意する。


「そもそも、夫婦喧嘩やで?」


望月さんからは冷めた言葉。


「被害者の不貞な~」


平野さんは結婚後の生活の理想を崩されて幻滅している。


「夫婦の日常生活の中で証拠になるようなモンあるわけないしな」


「証拠って言うけど、どんなんが証拠になる?」


「レコーダーとか?」


「えー。夫婦の会話に音声記録として残すこと自体が疚しいことがあるんちゃうのって、私は疑うけど……」


「ていうか大事なこと家族で話してるのにうわの空やった可能性ない? 美人で若いお相手さんのこと考えてたとか。で聞いてても聞こえてなかったり……とか」 


松田さんと北口さんが主婦目線で話す。


「全くの赤の他人がおれば良かったのに、証人が息子家族と娘夫婦って。……せめて弁護士がおったらなぁ。顧問弁護士は何をしてたんやろ。大事な話するからウチ来て~、て言えば来たんちゃう?」


残念そうにいう。


「被疑者もそういう人を中に入れんかったんは、……なんか悪意を感じとられても文句は言えんかもな」


「そうやなぁ」


「でも、最初の名義変更の話の家族会議で証拠て存在せーへんのんちゃう?」


「家族会議てゆうても、ええ加減な話し合いやって被害者が軽く思ってて聞き逃す事てあるやん?」


「ただでさえ浮気を疑われてて、鬱陶しい妻からの苦言もあって、言い訳やらに思考を巡らせていた。とか。いろいろ推理できて私は楽しいけど、本人さんは切羽詰まってるんやろな……社長の座をとられてるやし」


二人の想像する世界がサスペンス劇場に突入しそうである。


「これが本当に被疑者による犯行だというのなら、用意周到すぎて恐ろしいですよね。そんなに冷淡な性格の人なんですかね?」


有馬さんは眉をひそめて発言した。


「あ、……そうですよ。この状況にするには被疑者が上手く誘導せんかったら絶対にどこかで発覚したり失敗するんちゃいます?」


河野さんも発言する。


「そんなに恐ろしい事考える人やったら、きっと自分の名義にして独り占めするんやろうけど、息子の名義にしてるんやろ? 

実家が続けてきてた会社を子供に継がせてやりたいって親の気持ちで動いた……とも思えるな~」


「たしかに、家業が他人になる夫に取られるかもしれんって思たら、自分の血のつながった息子に譲りたいて考えるか……」


うーん……、と皆が一斉に唸ってしまった。


「なんか新しい情報があればええのになぁ。記録も証言ばっかりで小説読んでるみたいで、これが決め手やってパッと見て分かるものが欲しいなぁ」


「記録はこれで全部です。これで判断をしてもらわないといけないのが難しい所ですね……。身内同士での裁判なんて、騙した騙されたの状況を立証するのは一族の恥をさらすことになるので、本当は世間的にも良くはないから司法には委ねたりすることはないのですがね」


波野さんが希少な事案であることを教えてくれる。


「当事者の新しい情報? 生活に関してなんですけど……。

梶さんにさっき電話で聞いたんですけど、今は被害者は別居してます。

別居先は不貞のお相手の家にて同棲状態らしいです。

被疑者は自宅で息子家族に来てもらって同居しているそうです。

梶さん夫婦は被害者とは疎遠になって、今回の申し立てがあったこと知らなかったそうで、めっちゃ驚いてました」


「連絡とってみてくれたん?」


「はい。こちらの会議での内容は言いませんでしたけど、今どんな状態になってるのか聞いておきたくて。勝手なことしてすみません」


「事実確認だけで終わってるならええですよ。誰が何を喋ったのかは守秘義務が発生しますのでNGですのでそこを気を付けてくれれば」


「ありがとうございます。それでですね、……まだ離婚はしてないらしいんですよ」


「え? 別れてない?」


平野さんがきょとんとして信じられないと首を傾げた。


「あれだけの騒動を起こしておいて……まだ?」


望月さんがまた冷たく言い放つ。


「へー……。別れたくないって言うてんのって被害者のほうか?」


山城さんは少し興味を持った言い方だ。


「そーなんちゃう?」


早川さんも同意した。


「だって、被疑者はもう被害者の事なんとも思ってへんねやろ?」


平野さんが疑問を呈する。


「被害者も被疑者のことはどうでもええから不倫してるやん?」


どんな利害関係があるのかは分からないけど現状維持でお互いに穏やかに暮らせているなら不服申し立てしなくても良いのでは……と考えてしまう。


すると、看護師をしている小林さんが困ったような表情で吐露する。


「それはちゃうらしいで……。男って妻と愛人と恋人を大事に出来るもんなんやってー」


「はあぁっ!? なんやねんそれ!」


またまた平野さんが激しく反応した。


「妻を養っている自分、カノジョには甘えたい自分。他にも部下にはカッコ良くて頼りになる自分。いろいろ見られたい自分を演出してるんやて。最後には男のロマンやー……とか。スタッフの一人が酔った勢いで旦那さんへの愚痴をずっと喋っててなー。めんどくさいのに捕まって大変やったわ」


「アホらしな、そのダンナ……つーか別れへん妻の方も変な話やわ」


「そこが夫婦のフシギってことやねー」


「そんな男はそのうち痛~いしっぺ返しがあるんとちゃう? カノジョから、私といつになったら結婚してくれるの? とか!」


「そのダンナも恨まれて背中から刺されてしまえばええねん。なんやそれ。アホか」


「食事を作りながら包丁持ってブツブツ言いながらやったらホンマに殺されそうやん!」


「怖いなぁ……」


「刺したらあきませんよ。捕まります。止めましょうね」


女性たちが過激な批判のやり取りをしてしまっているので、波野さんが平坦な声で突っ込んだ。


「……ホンマや。話がどんどん物騒になってる。

ちょっと、違う話題にしませんか? 私まだ独身で、結婚にはまだ夢を持っていたいんです。お願いします……」


平野さんが懇願していた……。


俺もこの話題はついて行けなくて、既婚者の話を聞いていて結婚が怖くなりそうだ。


「でも、話題を変えてみたとしても、多分また同じトコに戻ってきて、被害者のことボロカスに批判すると思いますよ……?」


望月さんがスンとした顔でいる。


「そうやろか……」


「先週の予告で波野さんが言うてたやん。男と女の痴話げんかやって。

で、夫婦仲の七不思議があるんやろ?」


「あれ? 先週の予告は恋人同士て言うてたん違ったっけ? 婚約者やったて訊いたような? てことは夫婦ではない……。……うん? 取り扱う事件が違う……?」


「あ、すみません。それがですね、先週の予告の件は直後に申し立てが取り下げられたんです……」


波野さんがバレた、という顔をした。


「「「えええぇッ!?」」」


衝撃の事実!


「何どうゆう事それ!?」


「どうゆうもこうゆうも、……そうゆうこっちゃ……」


ため息を漏らした波野さんは申し訳ないと思いながらも関西人らしい返事だ。


「それで、その次の傷害事件を審査してもらうことになりまして……」


「はあぁ……」


皆さんもつられてため息を零す。


「申し立てを取り消すゆうことは、起訴を諦めた?」


「あ、もしかして。諦めたんやなくて、仲直りした?」


「えー、より戻したん?」


「そうなんです……」


「ふーん……」


感心か無関心か……どちらでも良い同意の反応をしたのは平野さんだ。


「良かったやん」


良かったと言いながら別の事を考えていそうだなぁ。


「取り下げに来た時に弁護士さんと一緒に当事者の二人が揃って、御迷惑かけました、って頭下げてたんやって。私その時は席を外してたから本人たちの事情は聴いてないんやけどな。

お互いに誤解があったらしいわ。共通の友達から叱られて、また結婚に向けての話し合いが始まるそうで……」


結婚式場はキャンセルしてしまったのでまた新たに選びなおしだと、仲良く喋って帰って行ったという……。


「なんや、審査会の審議になる前で良かったと、思った方がええんかな?」


「それでええんちゃう? だって、他人に自分たちの行動が調書で晒されるんやで? 知られたくない恥ずかしい事を知られてしまうのは私はイヤやなぁ。この人たちはギリギリ間に合って良かったと思います」


「そうや。一つでも争いがなくなったて喜んでおかな……」

読んでくださってありがとうございます。


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