表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】検察審査会の人々  作者: 鈴音あき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/38

検察審査会の人々20

なかなか上手く文章が纏まりません。

何となくこんな感じ……?で事件を書いてます。

「え、何で梶さんの奥さんの名前があるの!?」


俺は本当にびっくりして大きな声で叫んでしまった。


「なに~?知り合いがいてるん~?」


「梶さんはバイト先のセンパイ?上司? バイト始めた時の仕事を教えてくれた変な人で、調書にある署名はその奥さん……ぁ」


俺は思っていることをそのまま口に出してしまった。


「……変な人?」


あはは、向井さんがそっちに反応した。


「はぁ、そうです。ヘンタイですね」


もう、開き直ってしまった。


「変態……?」


首を傾げて望月さんも反応した。


「うん……。頭ン中を見てみたくなる人です。面白いですよ」


「えー……。見てみたいかも?」


望月さんの顔面がだらしなく崩れた。


「旦那さんの方の梶さんならバイト先の書店に務めてるんで、行けば会えますよ? 今日は閉店までシフトに入ってますね」


「じゃあ、審査会が終わったら行く! 見たい!」


「恵ちゃん、動物園に遊びに行くみたいな言い方や」


「ちゃんと本買いますぅー! てことで、早く終わらせましょう!」


望月さんのやる気が出てきた。


目が光ってる。


それまでは前回の波野さんの予告で内容を聞かされていたし、会議が始まってすぐに望月さんの強烈なパンチが入ってからちょっと雰囲気が暗くなってたけど、これで和やかに進められるかもしれない。


今日の議題は男女の愛憎が絡んだ傷害事件。


熟年夫婦の取っ組み合いの喧嘩から、夫が怪我をして警察官が出動、どうしてもお互いが許せなくて司法の力まで借りなければ収まらないほどにヒートアップしてしまっている。


波野さんからの記録を見ながらの説明を聞いての感想は、安っぽいドラマみたい……、だと思った。


なんだよこれ?


と皆が思っている時に望月さんのお言葉が出た。


「何で?お互いに好きになって結婚したんちゃうの? 家族にも友達にも私たち幸せになります!って盛大な結婚式までして約束したんやろ? 何で離婚とか、別れるとか、我がまま言うとるん。ええ歳して恥ずかしないんか」


はい。御尤もです。


「そうやねんけどな……ははは。恵ちゃんはそういう我儘な大人にならんといてな~……」


と、宥めたのは山城さんだ。


既婚者は苦笑している。


独身者たちはどうコメントしていいのか分からず黙ったまま。


記録を読み進んで、証人調書を読んでいたら梶さんの奥さんの名前が出ていたのだ。


「へー。梶さんの奥さんって社長令嬢……」


「複雑な心境やな~。被疑者が母親、被害者が父親って」


「あ、梶宗一郎さんの証人調書もあるわ。事件の日は夫婦で実家に来てたんやね」


「えーと。事件が起きたのは二年前? たしか梶さん結婚したのが三年前やったな。新婚さん夫婦の前で親が喧嘩して流血沙汰って、どうなの? 梶さんも体育会系じゃないし、奥さんもおっとりしてるらしいから喧嘩は止められんかったんかな……。うーん、お巡りさんに止めてもらった方が良かったて事か」


梶さんの義理の両親は、会社経営者の娘と取引先の社員とのお見合い結婚だったらしい。


被疑者と被害者の間で『愛人を作らない』という約束があったが被害者がやぶってしまったのが喧嘩の始まりだった。


まぁ、結婚したら不貞を働かないのは当たり前のことだと思うんだけど、そこは政略的なものがあれば仕方ないのか? 俺には分からない世界だ。


婿養子に入り、被害者は会社を大きく成長させた。


被疑者は経営を手伝いながら、息子と娘を立派に育て上げた。


どうやら被害者は根っからの仕事人間で、会社を増やして大きくさせるのが生きがいとなり、子供のことは妻任せでほったらかし、忙しくて家には殆ど帰る事がなかった。


被疑者は生まれた子供が双子で育児に掛かりきりになって会社経営の手伝いどころではなくなった。


自立して出ていったので、被疑者はこれからは会社の経営に本格的に携わっていこうとした時に、被害者に女の存在がちらほらと見えて、調査会社に依頼した。


結果は、自分の会社に勤めている秘書だった。


四六時中どこに行くのも一緒で、そういう関係になっていても不思議ではないだろう。


五十代半ばの社長と二十代女性秘書なんて、疑ってくれと言わんばかりではないか?


愛人発覚というベタな出来事にため息が出る。


それで被疑者は被害者の名義にしていた会社を、自分の名義に変更させた。


このままでは代々継いで来ていた会社を乗っ取られるのではないかと危惧して、被疑者は複数ある会社の名義のほとんどを息子に引き継がせた。


これを数か月前の家族での食事の際に話題に出して了承させたというのだが、被害者には記憶がないらしい。


証人の梶さん夫婦はその確認のために事件の日に実家に呼ばれたそうだ。


「梶さん夫妻は本当に証人の扱いやな。会社の名義は梶さんの奥さんの名前にしてないのは何で?」


北口さんが家族で経営してるなら娘名義の会社がないのが不思議だったようだ。


「ホンマやね」


松田さんが同意する。


「嫁に出したから?」


「えー? それやったら実家のゴタゴタに巻き込んだら可哀相やん。ウチやったら絶対呼ばんわー」


「あの、もしかしたら、なんですけど、いいですか?」


「高山君、なにか心当たりが?」


「はぁ。多分ですけど、名義変更は辞退したんやないかと」


俺は梶さんの奥さんがどんなことをしている人なのか知ってるので、簡単に説明する。


「梶さんの奥さん、人形作家なんです。動物の人形作るのが得意でいろんな場所で個展を開いてるくらいに凄くて有名なんです。……だから、めんどくさかったんじゃないかな~と」


「名前貸すだけでも面倒くさいんか?」


「余計なものは背負いたくない。人形作家に専念したいとか?」


「だと思うんです。何度かバイト先の書店にも来てくれてて、おっとりしてるけどちゃっかりとしてて強かで。双子の片割れのお兄さんに全部押し付けたんやと思います」


「ふうん。やっぱり高山さんの職場に遊びに行かなあかんな」


「望月さん、梶さんはいてるけど、奥さんは来てないと思うよ?」、


「ええねん。行くだけやし」


「はは……分かってくれてるならいいけど」


そこから更に調書を読み進めていくと、梶さんのお祖父さんが亡くなってから、徐々に被害者が悪戯に興じる様になった。


始めは取引先との付き合いで出来た友人とドライブしたり飲み歩いたりしていたが、要らぬ遊びを教えられ、彼らと旅行にも行っている。


いつも仕事ばかりの婿養子で肩身の狭い思いをしていたのだろうと考えた被疑者は、不貞や犯罪を犯さなければ咎めないとして、放置していた。


そして、被害者が自重しなくなっていき、遂に約束を破ることになってしまった。


相手は経営している自分の会社の社員だったことに被疑者は愕然とした。


相手の方を退職に追い込み別れさせて、収まるかと思えば隠れて会うようになった。


被疑者は息子と相談して会社の名義変更の手続きが完了してから離婚に踏み切ることを決意した。


きちんと理由を述べて手続きをしたのだが、被害者が納得せずもみ合いになり勢い余って被害者が転倒し、運悪くテーブルの角に頭部を打ち付けて流血沙汰に発展。


それでもまだ被害者は興奮していて被疑者に掴みかかろうとしたので、119番通報を梶さんの奥さんがして、息子と娘婿の梶さんが暴れようとする被害者を必死に阻止し、頭部の止血を行っていた。


被疑者の方はまさか被害者がここまで激昂するとは思わなかったので、警察や救急車が駆けつけてご近所が大騒ぎになっても、茫然として家の中で座り込んで何も話せなかった。


被疑者は相当なショックを受けていて、どっちが被害者なのか分からないくらいだ。


救急車で運ばれた被害者は翌朝にはちゃっかりと愛人を病室に連れ込んでいて、バイタルチェックをしにきた看護師に「あ、奥さまですか?」と聞かれて「そうです~」と平然と答えたらしい。


すべての説明はこんな感じで、波野さんも調書を読んでため息をついた。


審査会メンバーも全員がそれに倣う。


なんだそれ。


検察官は不起訴の決定をしたが、それから随分と時間が経ってるけど、現在はどうなっているのかの記録はない。


「夫婦喧嘩は犬も食わぬとはいうけど、これはムリやな」


「…………自業自得」


「結婚するときに約束してるんを破ったんアンタやん?」


「早う別れたらええやん」


「無責任」


「無趣味の仕事人間が悪戯を覚えたらアカンてことが分かった」


「会社のお金は使い込んでないんやろ?」


「そうですねぇ」


「まだマシなんちゃう?」


「でも、せっかく大きくした会社がいつの間にか嫁の会社になってたらビックリするんちゃう?」


「そうやんなぁ」


「オレバツイチやけど、元嫁が「お話があります」って言ってきた時の顔が未だに忘れられん。そのすぐ後に離婚届出してきたときってめっちゃ恐怖やったし。なにがアカンかったんかホンマに謎やった。離婚届を挟んであれがイヤやった、これが許されへん、それが気に食わんて。いろいろ言うてきたけど、もう元嫁の中ではどうしようもないくらいに辛かったみたいでな。お互い好きで結婚したはずやねんけど、オレは気づいてやれんかった。人間てな、今までの我慢の積み重ねがある日突然ブツッときれてしまうことがあるんや。まぁ、オレの経験談やねんけど。約束はあっても人の心は時に簡単に変わってしまう事があるってことを大人としての理性で理解して抑えなな」


へー。……渡辺さん離婚歴あったんだ。


「渡辺さん、カミングアウトしてよかったんですか?」


「かまへん。他人に暴露されるより先に自分から言うといたほうが楽。そんなに珍しくもない時代になってるし、繊細な人間やないんで平気平気」


「えーと。なんだか皆さんが結婚についていろいろ思うことがあるんやろうけど、今日の審査会の議題は、『被疑者に罰が必要か?』なんです。罪状は詐欺です。傷害ではありませんよー」


波野さんがメンバーの脱線具合を修正してきた。


「被害者が怪我していますが、会社の名義変更が勝手にされていたことについて議論するようにお願いできますか?」


「そうでしたわ。わかりました。皆さん、言いたいことはあるやろうけどここは頑張って被害者の立場を考えてみましょか」


向井さんが軌道修正を持ち掛けた。

不定期ですみません。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 検察審査会という裁判員以上に謎(?)の組織の雰囲気を伝えてくれる貴重な作品だと思います。 [一言] 書き手のペースで読みますので、 不定期は全く気になりません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ