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【完結】検察審査会の人々  作者: 鈴音あき


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検察審査会の人々16

明けましておめでとうございます。

今年もどうぞよろしくお願いします。


「子供には交通ルール守れって言うのに大人が守られへんって、なんやのそれ」


「望月さんは真面目で、ええ子やな。そのままええお母さんになってやー」


山城さんがのほほんと親戚のおじさんのような発言をする。


「山城さん、それはハラスメントになる可能性のある発言やから、これからは気をつけなあかんで?」


一条さんが厳しい一言を挟んだ。


「え……そうなんか? ごめんな」


「ええですよ。私カッコイイお母さんになるんで!」


望月さんは気にかけた様子もない。


「恵ちゃん良妻賢母ガンバってな。

話を戻しますよ。これだけ危険な場所やったらいつ事故が起きても不思議やないってことで。

行政に何らかの処置をしてもらわなあかんということは確かやなァ……。

この件は事務局から働きかけてもらいたいですけど、そういうのはできますか?」


向井さんが波野さんにこの問題を委託できるかを聞いた。


「できますよー。議決書を関係者に送付した後になりますが、新聞社やテレビ局に情報提供しましょう。報道されれば歩行者も交通ルールを守ろうとする人が増えるでしょうし、こんな事故も減るならば良い事です」


ずっとメモを取りながら請け負ってくれた。


「河野さん、こんな感じで思う事をどんどん話していきましょう。何か気になる事ありますか?」


向井さんが河野さんに意見を求めた。


「えーと、さっきの供述調書の説明にはありませんでしたけど、このバイクに乗ってた少年は何で走り去ったんやろ?て。これひき逃げ? 私バイク免許持ってないからよう分かりませんねんけど、この子は起訴されて当たり前なんちゃうの?」


河野さんが少年が何故倒れた歩行者を放置したのか不思議に思っている。


「厳密には衝突や接触がない…ぶつかってない、轢いてないのでひき逃げにはあたらないんです。

が、ぶつかりそうになったことで倒れて怪我をしている人に対して、救助していないのが問題になっているのはあります。

しかし、それはバイクに乗っていたのが未成年であるため、救助義務違反として家庭裁判所にて既に保護観察処分が決まってます。

今回の審査会の議題は、ぶつかりそうになったのがどちらの責任なのかということですので、被害者が怪我をしたことや、バイクの少年が走り去ってしまったことは無関係として考えてください」


波野さんが河野さんの疑問に答えてくれる。


「一つの事件やのに、二つの問題があって、片方はもう解決してる…言うことか」


「そうですね。バイクの少年が走り去ったのは『急に歩行者が出てきたけど避けたから大丈夫やと思ったから』らしいです。けど、被害者は尻もちついて腰を痛めてしまったらしいわ。補導を歩いてた目撃者が助けて救急車を呼んでくれて。

しかもバイクの少年とはクラスメイトで連絡先も知ってたから、電話で呼び戻すことが出来たみたいです」


「この記録にはその調書があるけど波野さんからの説明がなかったから不思議やなぁて思ったんですけど、そうかぁ、救助義務違反ていうので、先に審理が終わってるんやねぇ。法廷って分けたりくっついたりして面白いなぁ」


河野さんはニコニコ顔で納得したようだ。


「そろそろ一度休憩にしましょうか?」


波野さんが休憩を提案してきた。


説明や意見を聞いて情報整理のために時間を取って落ち着こうということだろう。


「そうですね。では、二十分くらいで良いですか?」


向井さんが時間指定をする。


「そうですね」


有馬さんが同意した。


見渡せば皆さん頷いている。


「では、十時四十分から再開しましょう」


「はーい」


望月さんが返事をしたと同時に席を立ってドリンクコーナーに行く。


会議室の一角に電気ケトルとインスタントコーヒー等が設置されていて、望月さんは「今日はどれにしよっかなぁ~」と選んでいる。


色々な種類が置かれていてスーパーの陳列棚のようで楽しい。


俺も選んでみようかな。


望月さんの隣に並んで物色を始めた。


「高山さんはどれにします?」


俺に気づいた望月さんは話しかけてきた。


「俺はー……これにしてみようかな」


ロイヤルミルクティーはまだ試したことがなかったので、スティックを取り出した。


「あ、それ家で飲んだことある。濃くて甘くて疲れてるときに飲んだらホッとするヤツ」


「このシリーズの紅茶は初めてやな」


望月さんと話しながら封を切って紙コップに入れてポットのお湯を注ぐ。


「望月さんは何にするん?」


「んー? 種類がいっぱいやから迷うわ……」


「いつも何飲んでる?」


「いつも朝はカフェラテ。ここでは種類があるからお試しで違う物。そーやなー…、今回はこっちにしよ!」


そう言って望月さんはマスカットティーを選んだ。


「高山さんは喋る相手に会わせて標準語と関西弁の使い分けが出来て面白いですね」


「そう? 面白いて言われたん初めてやわ……」


「自然とそうなるんですか?」


「そうなんかな。ほら、望月さんも友達と話す時と、目上の人と話す時って違うやん。それと同じ感覚やと思うねんけど。無意識でやってる時と意識してる時、色々とまぁあるで」


「あぁ、納得」


俺と望月さんは席に戻らずそのまま飲みながら、言葉遣いの話題を続けて話して休憩時間を過ごした。



新メンバーの河野さん。

介護が終了したので空いてしまった時間で速読の通信講座を受講し始めた、という設定。



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