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【完結】検察審査会の人々  作者: 鈴音あき


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検察審査会の人々12

「不起訴相当が十一票・不起訴不当がゼロ・起訴相当がゼロとなり、本件は不起訴相当と議決されました」


向井さんが会長としての職務を行う。


「波野さん、議決書の草案を作成してください」


「はい、わかりました。……あの皆さん、とても集中して議論されていましたけど、お腹が空いてませんか? お昼の時間をとっくに過ぎてます……気づかなくてごめんなさい」


「え?」


「ほんまや……」


会議室に取り付けられている時計を見れば、一時なのだ。


「ご飯も食べずに会議してたってバレたら怒られる~。審査会はブラックやったって思われたら大変なことになるんで、今すぐにお昼休憩してください~」


波野さんが審査員たちを昼休憩に送り出そうとする。


「これからはこんなことにならないように気を付けますので……」


必死に謝ってきた。


「でも、議決が早くできたで?」


渡辺さんがフォローしている。


「そうですけど。でも……ね。あ、ちゃんと一時間の休憩を取って下さいね!」


「あはは、わかりました。ちゃんと一時間休みますから」


「お願いします!」


「じゃあ、行きましょか」


今日の審査会のメンバーが貴重品岳を持ってそれぞれのペースで会議室を出ていく。


オフィス街だから一時を過ぎたら空いている店があるはず、と思って裁判所の食堂でなく外でご飯を食べることにした。


裁判所をでて中之島に向かって歩き、市役所を通り過ぎて淀屋橋駅の隣のビルの地下にある定食屋に入った。


既にリサーチはしていて、安価でがっつり食べられるトンテキ定食にする予定。


店に入ると空席が半分だった。


入り口近くの席に収まって早速にんにく無しでトンテキを頼んだ。


やってきたトンテキ定食はボリューム満点、ご飯おかわり自由。


定食をスマホで撮影して食べ始める。


食べ終わる頃にはお客さんもいなくなってて、スタッフさんに話しかけたり、店内の写真を許可を得て沢山撮らせてもらったりして、時間を潰していた。


昼休み終了の十分前まで店内で過ごして裁判所に戻った。


会議室に入ると、もう殆どのメンバーが帰って来ていた。


休憩中どこで何をしてきたのか情報交換していたので俺も一緒になって聞いていた。


最後に審査員の小林さんが慌てて入室して、それに合わせたように波野さんがノートパソコンを小脇に抱えてやってきた。


「皆さんおかえりなさい。お昼の休憩はできましたか?」


「はい、しっかり一時間分の休憩しましたよ。波野さんは大丈夫ですか?」


「もちろん、議決書の草案が出来てますのでチェックをお願いしますね」


「え? そのもちろんて、どっちの意味? 休憩した・草案作った、のどっちや?」


松田さんが引っかかって尋ねるが、


「両方です! さあ、お仕事頑張りましょ!」


やる気満々の波野さんが機材を広げてセッティングしていく。


いや、『両方』はおかしい。


きちんと休んだのか、草案作りの仕事を優先して休みを返上したのか。


室内の空気が「どっちやねん?!」とツッコミを入れたい雰囲気になった。


後者なんだろうなと誰でも思うけど、働き方改革云々はどこに行った……?


「会長、どうしよ?」


とりあえず小さな声で会長にお伺いしてみる。


「…………事務局内部のことはねぇ。終わったら課長に相談、でええかな」


「波野さんの努力に免じて?」


「しゃーないんちゃう?」


全員がジト目で作業を進める波野さんを見つめた。


それには気づかずに、ご機嫌な波野さんはテンションが高い。


「それでは会長、始めましょう!」


午前と午後の浪野さんの様子ががらりと変わっていて戸惑ってしまう。


休憩時間に議決書草案以外にも何かあったのだろうか?


これも課長に相談かもしれない?


「では、議決書の草案を朗読してください」


「はい、わかりました!」


事務局用のパソコンで勢い良く操作し、張り切った声で草案が朗読され、審査員の意見を盛り込み修正を重ねていく。


怒涛の勢いでブラインドタッチで煩く叩かれている。


修正も終わって清書され、議決書の原本が成立した。 


審査員メンバーは本日の任務が無事に終了したので寛いだ雰囲気が漂う。


「では次回の予定を発表します。説明会でもお話していましたが、来週に刑務所の見学にいくことが決まりました! 第一から第四までの審査員で大阪刑務所に向かいます。

見学は午後からなので、午前は交通事故の審査をします」


浪野さんの声がまだ終わってませんよーと引き戻して来る。


「この交通事故は未成年のひき逃げなので、来週の午前とその次の週の二回分の時間を取って慎重に審議してください。……あー、いや、未成年であっても成人であっても慎重にしなければならない、差別してはならないということは分かってはいますが、よろしくお願いします。向井会長、解散後に事故現場の下見に行きますか?」


「はい。行きます」


「分かりました。ではまた解散後に事務局に寄って下さい」


「了解です」


そして、波野さんがポケットからメモを取り出した。


「さてさて、気になる刑務所の見学なんですけど。

場所が場所なので、華美な服装は控えてください。受刑者に刺激を与えないように、協力をお願いします。裁判所からバスに乗って堺市にある大阪刑務所に移動します。

到着したら職員用通路から会議室に入って、担当者から説明を受けます。

会議室に荷物・貴重品など全部置いて見学に行きます。ポケットの中の物は全て出してくださいね。スマホもダメです。皆さんが部屋から出たら鍵を閉めます。

受刑者がいる空間にお邪魔するので、刑務官の指示に必ず従ってください。

……と、まぁ、華美でない服装をしてくれたらオッケーです」


波野さんがメモを読みあげてニコニコ顔で話す。


「華美でない服装?」


「はい、見学に相応しい服です。今のメンバーで言うと北口さんのようなブラウスにスラックス、踵の低い靴が良いですね」


「え、私ですか?」


「はい、そうです。デニム、ジャージは不可。女性はスカート・ハイヒール・アクセサリーは禁止ですので気をつけてください」


「分かりました。気を付けます」


「……スカートって刺激あるん?」


「あるんやろなぁ。女の足が見えるだけで刺激される?」


「服役中やし、禁欲生活やし、楽しみもないし、」


「何着たらええんかな……」


女性メンバー同士でが真剣に服装を考え始めた。


「何か質問はありますか?」


「はい、見学はだいたいどれくらいの時間ですか?」


「いつも一時間くらいで見て回ってますね」


「メモは取れますか?」


「会議室の中までは大丈夫ですけど。見学が始まったら手に何も持ちません」


次回から二回に渡って行う議決の事故現場の下見には、向井さんのハスラーと有馬さんのシエンタの二台で向かった。


「来週の刑務所見学、楽しみやわ~」


「そうですかぁ? 僕は少し緊張します……」


有馬さんの車に同乗した笹野さんと渡辺さんが後部座席で話し始めた。


下見参加者は向井さん・望月さん・有馬さん・一条さん・笹野さん・渡辺さん・俺。


今日の議決で下見にった時の動画の雰囲気に興味を持ったみたいで笹野さんたちが同行を申し出てきてくれた。


次回の事故現場は枚方市の高架橋降り口だった。

事務局の波野さんはいろいろとやらかしてしまうけど、なんとかお仕事頑張っている独身女性。

皆集中しているし自分もメモを取ったりして議決書の草案を考えながらなので、なかなかご飯の時間だと言い出せなかったのかもしれない。


来週の審査会はお昼から刑務所見学。

ドキドキで皆でお出かけするけど、これって大人の遠足だと思う。

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