第24話
あの駆け落ちを貴族たちや国民がどう評価しようが、ヨハン王子を誑かしたサヴァツキ家に対して国王から何かしらの処罰が下る。呼び出しの理由はそれなのだとエリーザは思っていたし、父や兄もそう考えているようだった。
それにしても、随分と時間が経ったこのタイミングで呼び出されるのはなぜだろうか。
エリーザは馬車の中で想像を巡らせていた。
国王夫妻が本気で怒っているならば、もっと早い段階で呼び出すだろう。
ということは、マリナ家が報復を画策して国王夫妻を説得したのかもしれない。
きっとそうだろう。そうでなければ、今更に呼び出されるはずもない。
そんなマリナ家の横暴を、ヨハン王子は止められなかったのだろうか。それとも、ヨハン王子はもうエリーザのことなどどうでもよくなっていて、エリーザを庇おうともしなかったのだろうか。
馬車の揺れに合わせて、色んな想像がエリーザの頭の中を駆け巡る。
もし、領地や爵位の没収という話なら、縋りついて、懇願して、絶対に撤回させなければいけない。いざとなれば、命だって投げ出してやる。自分が責任を取って死ねば、少しは情けをかけてくれるかもしれない。
父や長兄の青ざめた表情を見ながら、エリーザは密かに覚悟を固めていた。
王宮に到着すると、エリーザたちが通されたのは玉座のある謁見の間ではなく、摂政の執務部屋だった。
「遠方からよく来てくれた」
短い顎髭を神経質に撫でながら、国王は開口一番にエリーザたちを労う。
国王夫妻は豪奢なソファに座っていて、摂政に返り咲いたヨハン王子は執務のための椅子に座っている。壁際には三人の大臣と二人の将軍、そしてマリナ家の父娘が並んで立っている。
アネットに一瞥され、エリーザは慌てて目を逸らした。
「先日の件ではエリーザ殿に迷惑をかけたね」
意外にも、国王は目を細めて、柔らかく笑って、ヨハン王子とエリーザの逃避行に対して「迷惑をかけたね」という言葉で自分の感情を表現した。
それでも、エリーザが言うべき台詞はただ一つだ。
「王子の御心を誑かし弄んだのはわたくしめに御座います。その罪を一身に引き受ける所存でございます」
父が話し始める前に、エリーザは用意していた言葉をなるべく重々しく聞こえるよう声に出した。
跪いて下を向いているので、部屋の中では誰がどんな表情をしているのか分からない。
エリーザは将軍が剣を抜いてエリーザの首を斬り落とす光景を想像していた。
そうなってくれたらどれだけ良いことか。
それだけで事態が収束すればどれだけよいことか。




