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第19話

雇用できる使用人数すら限られているので、エリーザのような立場の人間でも邸宅の家事に手や口を出さなければならなかったし、王族や高級貴族、将軍が領地を訪れて来るとなればお茶会や晩餐会の準備に精を出していた。


もちろん、地位の高い人物が相手となれば当日の給仕だって自分で行わなければならない。サヴァツキ家がサヴァツキ家の領地で雇える使用人の素養などたかが知れていて、無限に存在する作法を隅々まで守りながら来賓をもてなすことができるのはむしろサヴァツキ家の人間か一握りの家臣だけだった。


だから、エリーザは朝食の準備ができる。

朝食といったって、シュタイン卿の使用人たちが昨日に運び込んでくれていたパンとチーズ、そして飲み物を用意するだけなのだけれど、きっとアネットはそれすらもできないだろう。


朝食を食べ終わると、ヨハン王子はエリーザを狩猟に誘った。


「二人で行くのですか?」

「そうだよ。怖い?」

「怖いです」

「じゃあ、ついてこなくていいよ」

「……お供いたします」


狩猟は貴族の男性にとって必須の趣味だけれど、男女二人で行くなど絶対にありえないことだった。


普通は複数人の貴族で連れたって、お供をたくさん連れて行くものだ。男性貴族とそのお供たちが狩猟を行い、連れてこられた女性貴族たちは男性貴族たちが持って帰ってきた獲物を見てはしゃぐだけ。


けれども、ヨハン王子は平然と二人で行こうと誘っていた。

普段なら、理性がある状態ならエリーザはそんな危険を冒す性格ではない。

でもこのときは、浮かれた気分が勝っていた。


王子は戸棚から狩猟服を取り出して着替え、エリーザにも狩猟服を着させた。


「誰も見てないから、大丈夫」

着なれない狩猟服を着て困惑するエリーザにそう語りけると、壁に掛けてあった猟銃を手にして建物の外に出ていく。エリーザは慌ててその後を追った。


別荘から歩いて行ける距離に森があって、ヨハン王子は草をかき分けながら中へと入っていく。シュタイン卿が小さい頃からよく面倒を見てくれていて、森にも何度か遊びに行ったことがあるとヨハン王子はエリーザに語った。


エリーザはというと、履き慣れないブーツでの徒歩にふらふらして、そのたびに王子に手を引かれたり身体を支えてもらったりして助けられていた。


そして、エリーザたちは二人の人間が十分に通れるくらいの広さを持つ獣道へと出た。


王子は少し歩いてから突然立ち止まり、弾を込めて銃を構える。

背筋がすらりと伸ばし、片目を閉じて狙いを定めている。

火薬の炸裂する音がして、遥か前方でのんびりと生きていた野兎が殺された。

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