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第18話

ヨハン王子は淡々と、醒めた瞳をランプの灯りで光らせながら答えた。

王子の回答を聞いてエリーザは少しだけ安堵した。

確かな勝算があるなら、いまはそれが叶うのを願うしかない。

少なくとも、自暴自棄でやってるんじゃなくてよかった。


安心すると急に身体が軽くなって、エリーザは鼻歌を歌い始めた。

それは舞踏会で歌った、王国の威光と豊かな自然を称える歌だった。


いまこの瞬間、自分はとても自由だとエリーザは思う。


父上も母上も兄弟姉妹も親戚もいない。

いつも人間関係を煩わせる他の貴族たちだっていない。

使用人たちだって、いない。


隣には王子がいて、王子なんだけどとても安心して側にいられる存在がいる。

例えばこうやって、不躾に歌い始めても、優しく笑っていてくれる。


ヨハン王子はエリーザの鼻歌伴奏に合わせて歌詞を声にした。

エリーザも鼻歌から本当の歌に切り替えてヨハン王子と一緒に歌った。


歌声が壁や天井に反響して、部屋中に響き渡って、エリーザは不思議な高揚感を覚えていた。それは、王太子妃候補として王宮内での地位を上昇させているときとはまた違う。甘やかで優しく、そして少しだけ切ない高揚感だった。


その晩、エリーザとヨハン王子は歌って踊ってのどんちゃん騒ぎを敢行した。

ワインを手酌で注ぎながら浴びるように飲み、冗談を言い合っては大笑いした。

この人と結婚したい。サヴァツキ家のためじゃなくても結婚したい。

エリーザはそう思った。


翌朝、エリーザが目覚めるとベッドの中にヨハン王子はいなかった。

飛び起きて居間に入ると、王子は床に胡坐を掻いて座っていて、目の前に解体された銃を広げていた。


「何をなさっておられるのですか」

「猟銃の手入れだよ。今日は狩りにでも行こうと思っててね」

「そう……ですか。あの、朝食は」

「まだ食べてないよ。エリーザが起きるのを待ってたから」

「大変失礼いたしました。いますぐ準備いたします」

「ごめん、そういう意味じゃないって」


ヨハン王子はそう言いながら立ち上がろうとするのを身振りで制止して、エリーザは朝食の準備を始めた。この別荘には自分とヨハン王子しかいないのだから、自分が早起きして諸々の準備をするのが当たり前なのに、昨夜の興奮から寝過ごしてしまったようだった。


高級貴族はたくさんの使用人を雇って家事全般を任せられるし、アネットのエリナ家くらいになれば領地の統治すら重臣に代行させているけれども、サヴァツキ家のような貧乏田舎貴族ではそうもいかない。

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