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第17話

たまらなくなって、今度はエリーザが腰を浮かしてヨハン王子に抱き着いた。

首の後ろに手を回して、先ほどよりも長く口づけを交わす。

お互いの鼻がちょこんと当たってくすぐったい。


「殿下、わたし、嬉しいです」


自分はこんな笑顔になることがあるんだと思えるくらいの笑顔になっているのをエリーザは自覚できた。


それから、話そうとするとつい笑ってしまうような時間が流れて、気づいたら窓の外は薄暗くなっていた。シュタイン卿の使用人たちがランプをいくつか置いていってくれていたので、お互いの存在や表情が分かるくらいには明るい。


ようやく真剣な雰囲気が戻ってきた頃合いを見計らって、エリーザは尋ねた。


「わたしと結婚するために、どうしてこんなことをしているのですか」


結婚、という言葉を発しただけでエリーザは唇が震えてしまう。

ランプの灯りにぼんやりと照らされているヨハン王子の横顔が少し厳めしくなった。


「父上も母上もエリーザとの結婚に反対してる。知ってると思うけど、高級貴族もアネット派が多い。まぁ、王子が高級貴族や他国の王女以外から結婚相手を選ぶなんていう前例をつくりたくないからだろうけどな」


エリーザの視線は自然と下がっていく。国王陛下と王妃殿下が反対しているならば、とても結婚なんてできない。


「それでも、俺はエリーザがいいんだ。だから、ここに籠城することにした。王宮には『エリーザとの結婚が認められるまで身を隠す』と書いた手紙を置いてきた」


そんなことを言われても、エリーザは黙っていることしかできない。

ヨハン王子の気持ちは嬉しいけれど、あまりにも大胆過ぎる。

こんなの、国王への反逆だ。王子といえど許されるはずがない。

それに、もし失敗したら、サヴァツキ家はどうなるのだろう。

王子を誑すような娘を生んだ家柄として、爵位を没収されたりしないだろうか。


夜の静寂の中で、部屋にはヨハン王子とエリーザの二人きり。

どんな非礼を犯したとしても、それを目撃する人間はいない。


エリーザは勇気を出して、不安を口にしてみた。

失敗したら、サヴァツキ家はどうなるのでしょうか、あなたはどうなるのでしょうか。


「失敗はしないよ。父上は絶対にこの結婚を認めてくれる。正直に言って、父上は俺に頼りきりだ。いまや政治のことはほとんど俺が取り仕切ってるし、周りの人間だってそんな状況を認めてる。無理もないよ。父上の代で王国は領地を減らした。国としても豊かになんかなってない。このままじゃ王国は衰退の一途だ。それでいて、父上はもうやる気を失ってる。俺がいなくなって、明日からどうするのかと方々から言われて相当狼狽えてるはずだ。父上がその状況から逃げるには、俺の人生で初めての我儘を受け入れて、エリーザを王室に迎えるしかない」

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