表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/38

第16話

ヨハン王子は窓を見ながら目を細め、エリーザにそう説明した。

王子が座っている位置からは遠くなっていく馬車の後姿が見えているのかもしれないけれど、エリーザが立っている位置からでは窓の外の景色をはっきりと見ることはできない。


「エリーザ、ここに座って」


王子は再びエリーザへと視線を向け、自分の隣に座るようエリーザを誘う。

それはさすがに、とエリーザは躊躇う仕草を見せた。

二人のあいだには越えてはいけない階級の差があるはずだ。


けれども、ヨハン王子はまっすぐにエリーザを見つめ続けていた。


その視線に捉われていると、エリーザの中でも覚悟が固まってくる。

いまから、特別なことが起ころうとしているのだ。


エリーザはゆっくりと歩を進め、ヨハン王子の隣に座った。

ヨハン王子は流し目でエリーザの様子を確認して、エリーザに問いかける。


「訊きたいこと、あるだろ?」


エリーザはこくりと頷いた。


「ここはどこなのでしょうか」

「シュタイン卿の領地の端っこだよ。この別荘はシュタイン卿の家臣の持ち物らしい」


ヨハン王子は再び窓の外に目を向ける。エリーザも窓に視線を向けてみた。


窓の外には田園地帯が広がっていて、遠くには屋根に十字架を掲げた教会があり、その周りに家屋が集まっている。そんな農村の外れに、この建物はぽつんと立っている。


もう太陽は沈み始めていて、一帯が薄い橙色に染められていた。


高級貴族が宿泊するには簡素過ぎるけれど、その部下が領地を巡回する際に泊まる場所という意味では確かに手頃な広さの別荘だなとエリーザは思った。


「わたしはなぜ、ここに連れてこられたのでしょうか」


エリーザがそう訊くと、ヨハン王子は唇を引き結んで真剣な表情になる。

数秒の沈黙の後、ヨハン王子はゆっくりと口を動かした。


「エリーザと結婚するためだよ。エリーザと結婚するために、エリーザをここに攫ってきた」


エリーザは体温がぐんぐんと上昇するのを感じていた。頬から耳にかけて妙に熱い。


「アネット様は」

「アネットじゃなくて、エリーザがいいからここにエリーザを連れてきたんだ」


ヨハン王子はじっとエリーザの瞳を見つめている。

エリーザは泣きそうになって、泣いちゃう、と思ったときには目尻から涙が溢れていた。


涙が視界を曖昧にしていて、それでも、ヨハン王子の顔が近づいてくるのが分かった。

そして、ヨハン王子とエリーザは口づけを交わした。


唇の感触が離れて、エリーザが涙を拭うと、柔和な笑みを浮かべながら、何事もなかったかのように椅子に腰かけているヨハン王子が目の前に現れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ