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96話『恩人』





「うんまっ!!」



思わず声に出てしまうハル。



なんだこれは!?!?



「でしょ!私もさっき食べておいしかったの!!」



ハルの声にアリスが反応する。



今食べた「大根もちのあんかけ」が常軌を逸した一品だった。



もっちりぷるぷるとしたタネに、そぼろの入った和風のあんがかかっている。



口に入れると、むにっとぷるぷるの食感と共に、ほのかに大根の風味を感じる。



あっさりとした和風だしのあんに、旨味を足すそぼろが食感の楽しさも加えている。



この美味しさは、感動は筆舌に尽くし難い。



「この食感…なんっだこれ…こんな食べ物があるのか…」



あまりの美味しさ、衝撃に、ハルは言葉が出てこない。




「ほんっとに!!すごいよね、おいしいよね!」



アリスもあまりの美味しさにテンションが高くなっているようだ。



「いやほんっとありがとうアリス。今まで食べたもので一番おいしいかもしれない。追加で二皿頼もう」



アリスが食べてみて美味しかったのだろう。


それをわざわざハルにも取り分けてくれたのでこの素晴らしい料理に出会えたのだ。



「そこまで言われると照れるぜ~」



料理を持ったおじさんがニヤニヤしながらクネクネと体を揺らしている。



「「まさか、…店長さん!?」」



ハルとアリスが声を揃え、同時に言う。



「いかにも?」



笑顔が隠しきず、嬉しそうに言う店長。



「天才だ!!天才だよ店長!!」


「とってもおいしいです!」



拍手喝采を送るハルとアリス。



「ありがとう!ありがとう!!」



店長は気持ち良さそうに片手を上げ、くるくるとその場で回っている。



思い付いたようにハルが口を開く。



「あ、店長この果物ってどう食べたらおいしいですか?」



ハルはミナが大量にもらった果物を店長に見せる。



「いい感じに熟してるな。どう食べてもうまいぞ」



店長が答える。



「ハル!折角なら全部あげて、おいしく料理にしてもらいましょ!」



フィーダと話していたミナが、こちらに気付いたようだ。



「あぁ、完熟してるからな、早く食べないと痛んでしまうからそれがいいかもしれないな」



フィーダは据わった目で、だが、ニコニコと言う。



「じゃあ店長さんに全て差し上げますので、なにか作って頂けますか?よかったらお店にいる他の方々にも」



アリスが言う。



「いいのか?よし、任せろ!とびっきりを作ってやるぜ!」




店長はにっこりと笑うと、果物を受け取って奥へ入っていった。



「楽しみだね~ミナ、ありがとう」



アリスが嬉しそうにニコニコとして言う。



「皆で食べた方がおいしいからね。いいのよ♪」



「うむ。しかし料理も酒もうまいな。大当たりだ」



ミナとフィーダがそれぞれ言う。



「ほんとに、いやーマジでこの大根もち最高」



ハルは言いながら、先ほど店長が持ってきたパンに手を伸ばす。



大根もちを食べていたが、口をリセットしたかった。



ちぎり、口にパンを放り込む。



「………」



おいしいが、なぜだろう、この味は……知っている気がする。



思い出せない…最近じゃない。たしか…




味覚の刺激が遠い記憶を甦らせていく。



「あーーー!!!思いだした!!」



突然大きな声で叫び、立ち上がるハル。



「うるっさいわよハル!!」「……急にどうしたのハル君」



ミナとアリスがそれぞれ言う。



「トーマスさんだ!!トーマスさんのパンだ!トーマスさんが住んでる街だ!!」



ファムノースの名前を聞いてからずっとひっかかっていたもの。



ピースがようやく嵌まったような感覚。



「誰だそれは」



フィーダがハルに問いかける。



「こっちの世界に来て最初に助けてくれた人です。トーマスさんがいなかったら俺は死んでたかもしれない」



「あら、恩人じゃない!この街にいるの??」



ミナが言う。



「この街に住んでるって言ってた……明日探してみてもいいかな?」



ハルはメンバーに尋ねる。



明日は買い出しの予定だったからだ。




「いいんじゃないかな!大切な人でしょ?」



アリスは嬉しそうにうんうん、と頷いている。



「買い出しは量が少ないから問題ないぞ」



フィーダも問題はなさそうだ。



「せっかく来たんだからお礼してきなさいな」



「みんな、ありがと!じゃあ明日は人探しだな。よーし、頑張ろう」



と、ハルが意気込んだ所で、店長が戻ってきた。



「できたぞ~!」



店長の手のトレーにはさまざまな料理が乗せられている。



「これはシンプルにサラダに入れてみた。こっちは擦りおろして鳥の内臓と炒めた。あとは…」



「「「「おいしそう!!!」」」」



店長の言葉途中で、テーブルに置かれた料理を見て四人が一斉に声をあげる。



「自信作だ!他のお客さんも喜んでるよ。ありがとな!」



「店長ありがとー!!!」



そう言って店長は厨房へ戻っていく。後ろ姿にハルは感謝の言葉をかけた。



「おいしい!さすがっ!!」



いつのまにかミナが食べ始めていた。



「おいしい…」「これは酒が進むな…!」



アリスとフィーダも舌鼓を打っている。



こうして店長のおいしい料理とファムノースの食材を存分に堪能した四人であった。





登場した「大根もちのあんかけ」はモデルがあります。


名前も出しましたが京都の「まんざら亭」さんの料理です。



快く許可を頂けて嬉しかったです、感謝!



もちろんうるさい店員などはいません(笑)とっても素敵な雰囲気のお見で、店長はイケメンですよ!



おふくろの味などを除けば、人生で最後に食べたい物は「まんざら亭の大根もち」と私は答えます。それくらいの衝撃と、美味しさです。


言葉では伝わらないのが残念です…。



私は行くたびに一人で二皿頼みます。同行者の分も頼むので三皿頼みます(笑)



京都に行く機会があればぜひお試しください!


あ、人気のお店なので予約をおすすめしますよ!


それでは、また!

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