92話『懐かしき哉』
「そっち行ったわよ!ハル!」
大地を駆ける兎を追い立てながら、ミナが言う。
ニアフォレストを出発し、まずは北の街ファムノースへ向かっている。
道のりは半分ほど来ただろうか。
魔獣などはほとんど現れず、魔物や動物が多いので進みが早い。
そんな中、平原でウサギを見かけたミナが捕まえよう、と言った所から始まった。
魔物ですらなく、ただの動物のウサギなのだが、これがなかなか捕まえられない。
原っぱのため膝下は草が生い茂り、そもそも物理的に見つけにくいこと。
そこら中に巣穴があり、出たり入ったりする事。
そもそも動きが早いこと。
やはり巣にするだけあってホームのアドバンテージが大きい。
すぐに捕まえて終わり、のはずがなかなかに苦戦している。
「ほら!行ったわよ!」
ミナが指を指しながら言う。
「えっちょっと待って全くわからん…あっ!あぁ…」
途中までは全くわからなかったが、一瞬草の隙間から見えたと思った次の瞬間には巣穴に入ったのだろう、完全に見失ってしまった。
「はっはっは、いいようにやられてるじゃないか」
フィーダとアリスが戻ってきた。
手にはウサギが二羽、握られていた。
「おぉ!さすがフィーダさんとアリス!」
「動きを予測して動くんだ」
「無茶言わないで下さいよ…そうだ、バッタの時みたいに炎か、雷で一気に…」
「ハルくん、さすがにそれは…」
ハルが言いかけた案に、すかさずアリスが自重を促す。
「ここら一帯を全滅させる気か?あと二羽だ、必要な数だけ獲ろうじゃないか」
「ですよね、すいません。よし、頑張るぞ!」
ハルは頬を叩くと、再びウサギを探し始める。
(いいわねそれ!!やっちゃいましょう!……って言わなくてよかった……)
ハルの意見に同意しかけたミナが苦笑いしていた。
◇
その後、なんとかハルとミナは協力してウサギを二羽、捕ることができた。
お陰さまでご飯にありつく事もできた。
ミナの作った『子兎の香草パン粉焼き』は大変美味で、フィーダとアリスもとても喜んでいた。
「あいかわらずミナの肉料理はおいしいね~」
肉を頬張りながらアリスが言う。
「うん、そこらのお店に負けてないよ」
ハルも同意する。
スパイスの選び方や量が絶妙なのだろうか?
端から見てると適当に調理しているように見えるが食べてみると味がばしっと決まっており、かつ、肉の臭みを隠して旨味を引き出す。
師匠もうまいうまい、と言って食べていたのを思い出した。
ミナと二人の時は思い出さなかったのに、アリスとフィーダが揃うと、どうしても昔を思い出してしまった。
ハルはただ一人、ほんの少しだけ、懐かしさにノスタルジックが混じる。
「ふふふ、みんなありがと♪」
ミナも嬉しそうにしている。
「ミナ、今日はどうする?やる?」
ハルが3人に尋ねる。
もちろん手合わせの事だ。
「私はかまわないが」「私もいいよ」
フィーダとアリスがそれぞれ答える。
「俺ももちろんいいよ」
「んー…じゃあ、ハルとやりたい」
ミナの対戦相手指命はハルだった。
「いいよ、やろうか」
「あのでっかい剣と、辺り一面燃やすとかは禁止ね!!」
ミナがすかさず条件をつける。
「わかってるって、さすがに訓練でそこまではしないよ」
ハルが笑いながら答える。
「じゃあやりましょう!アリス、掛け声よろしく!」
ミナが言う。
「ではいきます…はじめ!!」
アリスが掛け声と共に腕をふる。
さて戦いの行方は…?
すいません、ちょっと短くなってしまいました。次で取り返します。




