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91話『北へ』




ニアフォレストを出発した四人は神聖法国アークライトを目指し、北上していた。



「と言うことで出発した訳ですが、まずはファンテジア王国の北の街、ファムノースへ向かいます」



フィーダ先生から旅の注意だ。



「「「はーい」」」



三人が返事をすると、先頭からも聞こえてくる。



「ひひん」



馬車を引くシルバー()からだ。



ハルとミナがエルフの国へ行ってる間は預かってもらっていたが、帰ってきてそのまま防衛戦になったため、なかなか会うことができなかった。



どうやら避難民の馬車を引いたりと、シルバーもがんばってくれていたらしい。



ハルやアリスが引き取りに行くと、大きく(いなな)いて全身で喜びを表していた。



特にアリスに会えたのが嬉しかったらしく、シルバーはずっとご機嫌であった。



ハルがシルバーの首をなでる。



「よかったな」



「ひひん」



まぉ再会後に、うまい物を食べさせろと要求されて大変だったのだが。



「で、そのファムノースとやらはなんかあるの??おいしいものとか」



ミナが尋ねる。



「ファムノースのパンが最っ高よ!~私も大好きなの」



アリスが目を輝かせながら言う。



「そう…パン…好きだけどね…」



「作物だけでなく放牧なんかも盛んだから肉料理もおいしいぞ」



フィーダが付け加えると、ミナのテンションは無事回復していた。



「それはよかった!やっぱり肉がなくっちゃね♪」



やはりこの辺は獣人、肉食である。



新しい街の名物や特産を味わうのは、旅の楽しみだ。



発見であり、未知との遭遇に近い。



そんな食への談義が続き、落ち着いた雰囲気で馬車は進んだ行った。









その日の夕方




「折角だから訓練も兼ねて手合わせしない?」



夕食後、アリスが言った。



「そうだね、離れてる時間もあったし、ミナの事もあるしね」



ハルはミナとずっと一緒にいたので問題ないが、アリスとフィーダはかなり久々だ。



お互いに、どれだけやれるのか知っておく必要があるだろう。




「いいわよ。どうせならフィーダとやりたいわね。やったことないでしょう?」



ミナが肩を回しながら、牙を出して笑う。



「かまわんぞ。そういえばミナは魔身機には大分慣れたようだな」



「ハルと連携するためにずっと乗ってたからね、魔身機でもなかなかのもんよ!」



「それは頼もしいな。よし、では始めよう。ハル、合図を頼む」



二人が相対し、構える。



空気が一変して、張り詰めていく。



「始め!!」



ハルが大きく宣言した。




「先手必勝っ!!」



叫ぶや否や、ミナは地を這うかのような低い姿勢で一気に駆け出す。



身体能力に優れた獣人がさらに魔力で強化した速さだ。



並みの冒険者や魔物では反応すらできないであろう速さ。





()(せん)という言葉がある」



対してフィーダは、全く焦らず堂々とした構えだ。



どんなに速かろうが、速いことが分かっていればそれなりに対処はできる。



それが経験というものだ。



フィーダは土魔法で弾丸を放つ。



無数の弾丸がミナに対して放たれるが、完全に見切っているのだろう、ミナはほんの少しの動き、くぐったり反らしたり、弾いたりで回避しつつ、弾丸の中を前進してくる。



「いい目をしている!」



ミナの前進スピードも計算にいれた上で、剣の届く範囲に入るギリギリのタイミングで剣を振るうフィーダ。






(ギリギリ当たる…)



フィーダの剣は少し遠い距離からだと思ったが、おそらく当たることを察知したミナは地面を横に蹴り、右へステップする。



それすらも超高速で、目の前至近距離で見れば消えたように見えるレベルだろう。



ステップし、そのまま踏み込むミナ。



渾身の回し蹴りを放つが、絶妙なタイミングで後ろに下がるフィーダ。



下がりつつ、上段からの切り下ろしがミナの頭上に迫る。



振り下ろされる剣を、空中で横から打ち払うミナ。



打ち払った次の瞬間、フィーダの、突き込むような足刀蹴りが迫っていた。



(避けれない…!)



完全な回避が難しいと判断したミナは、全力で強化した左腕でなんとかガードする。



蹴りの勢いで吹き飛ぶミナ。



(くっ…ちょっ…!)



飛ばされている最中にも地面から弾丸が放たれる。



小さく丸くなり、回転しながら目を凝らして全て打ち払うミナ。



「油断も隙もあったもんじゃないわ!あぁ腕が痛い!」



着地したミナはじんじんと痺れる左腕を振り回しながら言う。



ミナが押せば引き、引けば押してくる。



しかもミナの攻撃に対して、一瞬で最適解を出しつつ、さらにその次の一手まで打ってくる。



なんともまぁやりづらい。とにかくペースを握らせてくれない。



と、フィーダが口を開いた。



「全て回避するとはな…たまげた反射神経だ。しかもお土産つきとは」



フィーダは油断なく構え、ミナに言う。



よく見ればフィーダの足首の鎧が凹んでいる。



ミナが蹴りを食らう瞬間に一発入れていたらしい。



それで蹴りの威力が多少殺されていたようだ。



なんともまぁ目にも止まらぬ早業である。



二人ともニヤリと笑い、据わった目で構える。




「…そんなもんでいいんじゃないですかね」



ハルが二人を止めた。



ノッてしまうとこの二人は止まらない気がしたからだ。



「…ふむ、まぁいいか。ありがとう、ミナ」



「そうね、またお腹空いちゃうし」



そう言って二人は握手をするのだった。



「フィーダがあれだけ色々やったのにほとんど回避しちゃうなんて…ミナも強くなったね!」



アリスが言う。



戦い方は当然フィーダの方が上手い。



相手に選択肢を与えず、詰めていく。



だが、それを(ことごと)く回避したミナの反射神経と身体能力も凄まじい。



理性vs.野生の頂上決戦のような戦いだった。



反省点や改善点、連携等を話ながら夜は更けていった。





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