90話『行くか?』
店長がサービスしてくれたデザートを食べながら、話を続ける四人。
「で、結局二人はどうするの?」
ミナが問いかける。
「そうだ、いいかげん本題に入ろう」
フィーダがデザートを頬張りながら言う。
「私達が王都から救援に来たのはな、偶然ではないのだ。」
「…と言われますと?」
フィーダの言葉に、ハルが答える。
「元々ハル君に声をかけるためにニアフォレストに来るつもりだったの」
アリスが飲み物を飲むと、からん…と氷が鳴った。
「俺に??俺なんかやっちゃった?」
「いやいや、問題ないぞ。実はな、隣の国に行くんだがハルも一緒に来ないかと思ってな」
「隣の国って…セキチクやシャボーじゃないわよね。まさか帝国?」
少し嫌そうな顔をしながらミナが言う。
「まさか!北よ。神聖法国アークライト」
ミナの問いにアリスが答える。
「すいませんどんな所なんでしょうか」
世界情勢に疎い、もとい、この世界に無知なハルは尋ねる。
なんとなく名前で察しはつくが。
「名前でなんとなく察しはつくだろうが、宗教国家だな。国家が宗教を推していると言うよりは、宗教が国家を作った、と言ったほうが正しい。」
「そこまでは予想通りですが…なにか事件でもあったんですか?奇怪な事件が起きて、こっそり助けを求められた…みたいな」
「残念ながらそれもない。とある人物に会いに行く」
「わかった!会いに行く人が国のトップで、こっそり秘密の依頼を受けて事件に巻き込まれる訳ね!!」
ミナが瞳を輝かせて言う。
「それなりの地位にいる方だけど…トップではないよ。むしろお願いしにいくの」
アリスが答える。
「んー。いいよ」
話の途中ではあるが、ハルが言った。
「最後まで聞かなくていいの?」
アリスがハルに尋ねる。
「アリスとフィーダさんがわざわざ来てくれたなら、行かない訳にはね。いい?ミナ」
アリスに、にこりと笑ってハルが答える。
「ありがとう!!」
アリスも満面の笑みで答える。
「もちろんいいよ!!……けど折角だから最後まで聞かない?ハルは気にならないの!?」
「あぁたしかに気になるかも。誰に会いに行くんです??」
「それはな……。アルフレッド様の姉上だ」
フィーダから出た意外な人物に、驚くハルとミナ。
「「姉上!?」」
同時に声をあげてしまった。
「師匠に姉弟がいたなんて…いや、弟が居るんだから他に居てもおかしくないか」
しかしうちの師匠は、後から後から新情報が出てくるものだ。
「その反応はわかるぞ。姉上は昔から知っていたのだが、まさか姉弟だったとはな。私達も知った時は驚いたものだ。」
フィーダが言う。
フィーダの口振りだと、姉自体は昔から知っていたが、姉弟だとは知らなかった、ということか。
「あ、アルフレッド様の事はもう知っているそうだから…」
アリスが少し言いづらそうにしている。
師匠の訃報を伝えにいく訳ではないらしい。
「ありがとう、大丈夫だよ」
アリスの気遣いが嬉しかった。
「で、何しに行くの~?」
場の雰囲気を変えるようにミナが行った。
「…あぁ、うちの父が交流があって。私からちょっとしたお願い事をね。ハル君の事も知ってて、是非会ってみたいって」
なるほど、師匠経由、もしくは「雷神が弟子をとった」って噂を聞いた感じか。
「なるほどね。しかし、エルフなのに国を出てよその国に居るって時点で、アルフレッド様と同じ匂いがするわね…いや姉弟だから似てて当然か…」
ミナが嫌な予感がする、と言わんばかりに笑う。
「ま、まぁちょっと過激…かも…?」
アリスが苦笑いで答える。
嫌な予感しかしない…が、会ってみたい。
「よし、じゃあ次の旅は『神聖法国アークライト』に決まり!」
「「「おーー!」」」
話が纏まったので締めるハルに、声を合わせる三人。
「まぁ数日はニアフォレストの復旧作業たがな」
「「「おー!」」」
フィーダが言う。
そのとおり、ある程度復旧作業を終わらせ、エイギスの兵団と騎士団を帰す所まではしなければならない。
と言うことで復旧を手伝いにいく四人なのであった。
◇
数日後
復旧作業、壁の修理や魔物の処理も終わった。
住人も全員が無事戻り、ようやく平穏が戻ってきた。
住人達が戻るなり、冒険者や兵士達にありがとう、ありがとうと何度もお礼を言っていたのが印象的であった。
宿屋のおかみさんの所にアリスとフィーダを連れていった時はニヤニヤを通り越して心配されてしまった。
曰く、「刺されないようにね?」
そうはなるまいと肝に命じるハルであつもた。
あれ以来、魔獣の襲撃もなく、大森林に入ると魔物をみかける程度に落ち着いていた。
そのため、エイギス兵団や騎士団も戻ることになり、責任者を交えてギルドマスターと話しをしていた。
「では副長、この時をもって私の団長代理は終了だ。本当にありがとう」
フィーダが騎士団の副長に言う。
「こちらこそ、ありがとうございました。『砂漠の薔薇』と共に戦えた事は一生の自慢になります」
副長は深く頭を下げる。
元騎士団長とはいえ、今の騎士団には今の騎士団の色がある。
不安もあったが、お互いによく信頼して戦うことができた。
騎士団内でも特に、『砂漠の薔薇』、フィーダを知る者は嬉々として参加していたようだ。
がっちりと握手する二人。
「では手はず通り、エイギスまでお願いします」
「かしこまりました」
エイギス守備兵団の兵長がアリスに頭を下げる。
仮にハルに会えなくてもアリスとフィーダは神聖法国アークライトへ向かう予定だった為、兵団は戻るよう決めてあったのだ。
「騎士団と兵団、それそれ本当にありがとう」
ギルドマスターが頭を下げる。
「では僕たちもこのまま発ちますので」
「アークライトに行くそうだな。大丈夫だと思うが気を付けるんだぞ」
ハルの言葉を聞いたギルドマスターがにこりと笑って答えた。
「依頼ですか~?お気をつけて~」
「そんなとこですね。はい!ではちょっと行ってきます」
受付嬢の言葉に答え、ハル達はギルドを出た。
◇
「よし!じゃあ改めてアークライトに向けて出発!」
こうして四人は目的地の国へ向けて出発したのであった。




