88話『爪痕』
ハルが特大の魔獣を倒したあと、しばらく待機していた兵達だったが、魔物や魔獣の姿は確認されなかった。
街へ戻る冒険者達。
大森林への警戒も必要だが、それは騎士団と守備兵団の方で交代で対応してくれるらしい。
「とにかく戦い続けだった冒険者達は休め」との計らいに、大いに感謝する冒険者達。
まずは休むのかと思いきや、早速宴会が始まってしまう。
「生き残ったぞ!!飲むしかねぇ!!」
「ありがとう!みんな頑張った!!」
◇
「ハル~どうするの??」
一緒に居るミナがハルに尋ねる。
「とりあえずギルドに行こう、みんなそこだろうし、アリスやフィーダさんにもそこに居れば会えるだろうから」
戦いが終わり、ひとまず街へ戻ったハル。
フィーダやアリスと話したかったが、守備兵団や騎士団の事でギルドマスターと話すことがあるそうで、まだ会えていない。
ここに居れば会えるだろうかと、何気なくギルドへ顔を出すと、すでに宴会が始まっていた。
「あっ!炎迅!!」
入り口を開けると、誰かが叫ぶ。
「来たか!!おせぇぞ!!!」
「酒だ!酒の追加だっ!!」
冒険者達が一気に騒がしくなる。
「えっ、ちょっ待っ」
あっと、言う間に中央へ引っ張り込まれるハル。
中央では、ダリルとジョンが酒を片手に準備万端であった。
「あたしの分も!」
ミナが嬉しそうに言うと、誰かが手渡す。
「全員持ったかー?」
ジョンが言うと、準備万端だ、とでも言うかのようにグラスを上げる冒険者達。
「よし、ギルドマスターがいないから俺が音頭をとるぞ。お前らよくやった!怪我人は出たが命に関わるほどじゃねぇ。はっきり言って奇跡だな。」
ダリルが言うと、
「ダリルも頑張ってたぞ!」「よっ!男前!」
誰かが野次をとばす。
「わかってる、わかってるぞ。ありがとう」
ヤジに気をよくしたダリルはドヤ顔で手を振る。
「だがまぁ今回の功労者はやはり、こいつだろう。炎迅、ハルだ!『雷神』の弟子らしい、凄まじい活躍だった!こいつに礼が言いたかった!ありがとう!たぶんみんな同じ気持ちだろう。とりあえず大いに飲もう!乾杯!!!」
「「「「乾杯!!!」」」」
全員が声を合わせ、グラスを上げる。
そこからはもう、飲めや騒げやのドンチャン騒ぎだ。
と、すこしした所でギルドマスターが2階から降りてくる。
後ろにはフィーダやアリス、騎士団の副長やエイギス守備兵団の兵長もいる。
必要な話も終わった、という所だろうか。
「ギルドマスター!!!」
冒険者の誰かが叫ぶ。
「うるさいからまさかと思えば、もう始めてたのか…休まなくて大丈夫かお前ら…」
ギルドマスターは苦笑いで階段を降りてくる。
「休んでる場合じゃないですよ!!お前ら!騎士団の方と守備兵団の方にも礼だ!ありがとう!!!」
「ありがとうございましたぁっ!!!」
酔っ払ったジョンが言うと、冒険者達は一斉に礼をする。
「私は嬉しいぞ。犠牲も出さずに守りきれたのは奇跡に等しい」
クライヴが言う。
「もうそれ俺が言いましたよ~」
酔っぱらったダリルが言う。
「今日は無礼講だっ!酒代は俺が出す!好きなだけ飲め!」
クライヴが高らかに宣言する。
「「「「うぉぁぉおお!!ギルドマスター万歳!!」」」」
「王国一!!」「太っ腹!!」「器がでかい!!」
怒号のような歓声と共に一斉に声があがる。
「すまない、君たちも交代にはなるが、大いに楽しんでくれ。本当に感謝する」
クライヴはフィーダやアリス達、救援に来てくれた面々に頭を下げる。
「顔馴染みも居ますので、そうさせて頂きますね」
そう言ってアリスとフィーダは頭を下げ、騒ぎに混じっていく。
二人とも、同じ場所を目指していた。
◇
階段を降りてきた時からずっと視界に収めていた人物が、こちらに近づいてくる。
ハルは思わず立ち上がって待つ。
目が離せない、彼女…。
彼女が近づいて来る。
人混みを抜け、視線が触れ合う。
まるで女神を象った絵画か彫刻のような美しさか。
ガラス細工のような、儚さか。
想いが、込み上げてくる。
「……アリス。久しぶり」
様々なものを心の奥に押し込め、……押し込めきれず、なんとか声をしぼり出す。
「ひさしぶり、ハル君」
アリスは一言、そう言って満面の笑みを浮かべる。
あどけなさもあり、少女とも女性ともいえる、美しすぎる眩しい笑顔。
思わず照れくさそうに笑うハル。
話したい事はたくさんあるはずなのに。
なぜか言葉にできなくて。
ただただ二人で、笑いあう。
それがなぜか、心地よかった。
◇
「……とりあえず座ったら?二人とも」
見かねたミナがハルとアリスに言うと、顔を赤くして二人も座る。
「さて、積もる話もあるが…とりあえず私達も乾杯しよう。無事、街を守りきることができた」
フィーダが言う。
「再会にもね♪」
ミナが言いながらウインクする。
「その通り!では…乾杯!」
「「「「乾杯!!」」」」
フィーダの掛け声と共にグラスを傾ける四人。
「ふぅ…まさか二人が来てくれるなんて思わなかったよ」
ハルが言う。
救援を王都に要請したのは聞いていたが、まさか顔見知り二人が兵を率いてやってくるとは思わなかった。
「たまたま王都に居たの。エイギスの兵がすぐ動ける状態だったから立候補したんだけど…」
アリスは言いながら、フィーダの方を見る。
『万全を期して騎士団も連れてけ、君なら大丈夫だ元団長。いや、団長代理!』
「と国王に直接言われてしまってな。いくら古巣とはいえ…」
やれやれ、と頭を振りながらフィーダが言う。
ちなみに現職の騎士団長は近衛兵と共に城の警護にあたっている。
最低限度、必要な人員は残してきたようだ。
「なるほど…でも本当に助かったよ」
「ほんとにね、いつまで続くかって辟易してたもんねぇ」
ハルの言葉に、うなだれたミナが同意する。
「ハルも相変わらず、デタラメな強さじゃないか。なんだ最後のアレは。騎士団の連中も開いた口が塞がらなかったぞ」
フィーダが笑いながら言う。慣れたものだが、久々に見るとやはり思うところはある。
初めて見た人達には衝撃だろう。
「そういえばハル、なんで最初からアレやらなかったの?」
「竜化のこと?あれ解除したあと眠くなるんだよね…襲撃がいつまで続くかわかんないから使えなかったよ」
ミナの質問にハルが答える。
「あ、そういえばなんでミナが同行してるの?」
アリスがミナに問う。
「あぁ、ハルの強さを聞いたうちのパパが一緒に行けって。あわよくば一戦まじえようとしてるっぽい」
ミナは真実の半分だけ話す。
もうひとつの理由は、わざわざ話す事ではない。
し、わざわざ波風をたてるつもりもない。
「いやいやマジで無理だって獣神の攻撃くらったら一撃でオーバーキルだから……」
がっくりとうなだれたハルが言う。
「ははは!それは見てみたいな!」
大笑いしながらフィーダが言う。
「あの人なら本当に来かねないのが怖いわね…」
アリスが苦笑いで答える。
「ちょっとーなんなのよもー。さすがに来ることはないと思うけどねー」
と、ミナが言いながらも、自信はなさげだ。
彼女自身もないとは言い切れないのだろう。
そうして思い出話に花咲かせ、会っていない時間を埋める四人であった。
ちと中途半端ですがここで。もう少し
事後処理が続きます。そのあとは新しいこと始めますかね!




