87話『戦いの終わり』
クライヴは嘴で突き刺そうと突撃してくる鳥の魔獣を回避する。
「ふっ!!」
すれ違い様に、腕に付いた爪で魔獣の羽の付け根を切り裂く。
片方の翼を失ってバランスを崩し、墜落していく魔獣に、風魔法の刃を放ってトドメをさす。
すぐに次の相手の方を向くと、魔獣がくちばしを大きく開いて今まさに攻撃しようとしている所だった。
大きく開かれたくちばしから、炎が吹き荒れる。
距離が近く、回避できないと判断したクライヴは、魔身機の翼を大きくはためかせる。
さらに魔法で自らを中心に竜巻を作り出す。
魔獣の炎が直撃するが、竜巻で阻むことでかき消す事に成功したようだ。
と、息つく暇もなく羽が弾丸のようなスピードで迫ってくる。
回避しながら近づき、蹴りを食らわす勢いのまま、足の爪で魔獣の頭を掴む。
そのまま頭を握りつぶし、他の魔獣に向かって投げつける。
魔獣の死体を投げられ、怯む魔獣。
魔身機が腕を横に振ると、風の刃が横一文字に全てを切り裂く。
魔獣達はどんどん墜落していくが、如何せん数が多く減っている気がしない。
「ちっ…さすがに数が多い…」
砦からはロカビリー達が援護の遠距離攻撃を行ってくれているが、やはりどうにも手が足りない。
と、魔獣の何羽かが砦へ急降下している事に気付く。
【ロカビリー!撃ち落とせるか!】
【はい!】
ロカビリー達が一斉に真上に向かって攻撃を放つ。
矢や魔法がいくつも放たれるが、魔獣は巧みに回避しつつ、さらには被弾した一羽目を盾にして降りてくる。
「くそっ!賢しい!」
クライヴは風の刃を飛ばすが、まるで360度見えているかのように、魔獣は後ろからの攻撃を回避した。
【いかん!ぶつかる!一旦離れろ!】
クライヴは叫ぶ。
その瞬間、急降下する魔獣と、十字を切るようにピッタリのタイミングで何かが交差する。
力なくロカビリー達の元へ降りてきた、いや。墜ちてきた鳥の魔獣は小さく鳴く。
鳴くと同時に魔獣の頭と胴体が離れていく。
横切った何かが空中で止まる。
「アリス・ディアセイント、参上致しました。空の戦いでしたら、微力ながらお手伝い致します」
アリスはクライヴに言う。
「感謝する。噂には聞いていたが美しい魔身機だな。人間で飛べるのは珍しい」
クライヴが答える。
「お褒めの言葉、ありがとうございます。遠距離の得意な者を何名か連れてきましたので、砦は大丈夫でしょう」
「よし、では墜とす事に集中するか。背中は任せたぞ」
「はい!」
そう言ってクライヴとアリスは武器を構え、突撃する。
クライヴの魔身機は、荒々しく空を駆ける。
力強く、雄々しい鷲は次々に魔獣を鉤爪の餌食にしていく。
アリスの魔身機、銀翼姫は美しく優雅に空を舞う。
銀翼姫の片手剣が輝くと、白銀に輝く双剣に形を変える。
滑らかに空を舞い、すり抜けるように魔獣の横を通ると、鳴き声もあげずに魔獣の首が落ちていく。
この戦いの後二人は、帝国の侵略から王国を守る『西の翼』と、魔獣の侵略から王国を守る『東の翼』として、『ファンテジアの双翼』と呼ばれる事になる。
◇
「ギルドマスター以外に飛べる魔身機が居るなんてなぁ…」
「アリスお嬢様以外に飛べる魔身機があったとは…」
「「ん?」」
◇
「上ばっか見てるんじゃねぇ!集中しろ!」
ジョンが他の冒険者達に言う。
「そうよ~気を付けないとガブっ!といくわよ」
現れたミナが魔獣にかじりつきながら言う。
「おう、左の面々がこっち来たってことは、減ってきたか」
ダリルがミナやエイギス守備兵団を見て言う。
「お二人とも無事でしたか」
イアがダリルとジョンに言う。
「んっぁぁっ!イアちゃん!!!まさか戦ってるなんて!!無事でよかった!!」
テンションの振りきれたダリルが叫ぶ。
「うるっさいのよ!!」
ミナが言うと、獅子乙女は噛みちぎった魔獣の足をダリルに投げる。
足はダリルの後頭部に当たった。
「いってぇな!!」
「いいからハルの方行くわよ!!」
叫ぶダリルにミナが言う。
「やかましくてすいませんねぇ、あ、炎迅ならたぶん、大丈夫ですよ…ほら」
ジョンがイアに言いながら、頭上を見上げる。
と、魔獣が天高く放り投げられる。
炎の竜巻が起こり、同時に炎迅が跳躍する。
空中で、巨大化した炎の剣で叩きつけるように切り下ろす炎迅。
魔獣は真っ二つになった上で、激しく燃えてしまい何も残らなかった。
「ほらな?」
ジョンが言う。先程も見た、ハルの一連のコンボだ。
◇
「お~い!炎迅!こっちこっち」
先程見えた炎迅の所へ行くダリル達。
「ハル!久しぶりだな!」
「フィーダさん!!お久しぶりです!」
と、ちょうどハルとフィーダが合流した所だったようだ。
「ハル~!あ!フィーダじゃない!」
ハルの所へ来たミナが、フィーダに気付く。
「ミナ王女!?なぜここに!?」
ミナを見たフィーダは驚いて思わず目を開く。
「アリスにも聞かれたわ。後で話すけど私はハルと一緒に居たのよ」
ミナの言葉に、ハルの肩が一瞬動く。
「そうだったのか…とにかく無事でよかった。」
ミナの言葉にフィーダが答える。
「いやほんとに助かりました…」
「いやいや、むしろよくこれだけの人数で、もたせたものだ。もうほとんど終わったかな?」
「……待ってくれ、どうやら終わりじゃなさそうだぜ」
会話を黙って聞いていたジョンが、何かに気づいたようで言う。
「うおー……最後の最後にすげぇな……」
ダリルは魔身機の目線よりも遥かに高い位置を見据えて言う。
目線の先には、今まで見たこともないような、巨大な魔獣。
その大きさは、もはや、街に近い大きさだ。
「ほぇえ~……トカゲかな??」
ミナが魔獣を見て言う。
「いや、低位の、竜だな…超越種である竜には及ばないが、魔獣としてはかなり強力だ。なにせデカイ」
フィーダが答える。
「……炎迅、いけるか?」
ダリルがハルに聞く。
「たぶんいけると思います」
ハルがすぐに答える。問題はなさそうだ。
「折角だ、最後はお前が決めろ!うちのエースなんだからよ」
ジョンかニヒルに笑ってハルに言う。
「ええっ…て言って、めんどくさいだけじゃないんですか!?」
「バカ野郎!俺達だけだと、アレを倒すのにどれだけ時間がかかるか!最後の見せ場を譲ってやるから、さっさと終わらせて宴会だ!」
ダリルも言う。
「それが本音じゃないですか!わかりましたよ…」
「ハルなら問題ないだろう。しかと見届けよう」
フィーダもうむうむと頷いている。
【超巨大魔獣出現!!気を付けろ!】
ロカビリーから全員に連絡が入る。
「ロカビリーさん!俺がいきます!皆さんに、距離をとって手を出さないようにお願いします!」
ハルはロカビリーに伝えてもらう。
【わかった!総員待機、炎迅が片付けるそうだ!】
ロカビリーが言うと、あちこちから声が上がる。
「片付けるってどうやって?」「待機!?大丈夫なのですか!?」
騎士団とエイギス守備兵団の面々から、心配の声が上がっている。
「知らなけりゃそう思うよな」「アレをまた見れるのか」
ニアフォレストの冒険者達は慣れた様子で、話している。
そんな彼らを尻目に、炎迅が構える。
「いきます!……」
皆が見つめるなか、炎迅の体が輝き、激しく燃え上がる。
火の粉が飛び、ついには紫電が全身を走り出す。
と、魔身機の影が薄くなったような不思議な感覚になる。
「竜化……!」
ハルがそう呟くと、炎がゆらめくと同時に雷が走り、炎迅の姿が消える。
次の瞬間に、魔獣の眼前、空中に魔身機が現れる。
炎迅はゆっくりと腕を上げると、剣が炎を吹いて大きくなっていく。
『断尽剣・火之迦具土!』
ハルが叫ぶと共に、巨大な炎の神剣が振り下ろされる。
凄まじい熱量と熱波、爆音と共に、炎の刃は抵抗なく魔獣の体を通り抜け、地面すら深々と切り裂く。
炎の大剣が消え、炎迅が剣をしまう動作をすると同時に、魔獣の体が崩れ落ちる。
こうして最後の、最大の魔獣は討たれ、長かったニアフォレスト防衛戦はついに終わったのだった。
ようやく戦い終了!しばらくは事後です。ちなみにトカゲの魔獣のイメージはラオ○ャンロンです。




