86話『一気呵成』
「最前線へ出るぞ!付いてこい!」
「「「はっ!」」」
フィーダは馬を走らせ、言う。
冒険者達は戦い続けで疲労困憊だろう。
被害を出さない為にも、彼らには少し下がってもらい、自分達が最前線を担当するほうがいい。
白金の騎士団が戦場を駆け抜ける。
「ギルドマスター!最前衛は任せろ!冒険者達はよく戦った、フォローに回ってくれ!」
フィーダは自信過剰でも傲慢でもなく、本心から冒険者達の身を案じて言う。
【あぁ…是非そうしたい所だが…アイツラが聞くかねぇ??】
クライヴは鳥の魔獣を一瞬で切り刻みながら答える。
「何を言っている…?まぁいい、それでいくからな!」
フィーダはクライヴにそう答えると、ちょうど最前衛で戦っている冒険者達の元に到着したので声をかける。
「騎士団長代理のフィーダだ。前衛を代わろう、一度下がって態勢を建て直すんだ」
いちばん先頭で指示を出しながら戦っていた2体の魔身機。
フィーダはリーダーらしき2体に語りかける。
「おぉ!助かるぜ!手伝ってくれ!」
声をかけられた冒険者の一人、ダリルは答える。
「いや、手伝うじゃなくて…交代…」
騎士団副長が思わず言う。が、聞く耳はないようだ。
「バッカやろう!下がったら撃墜数稼げねぇじゃねぇか!生活かかってんだよこっちは!!」
「すいませんね、一ヶ月以上魔獣を狩ってないせいで金欠なんですよコイツ。賭けもしてるんで」
苦笑いのジョンが、ダリルを指差しながら言う。
「はっはっは!ならば仕方ない、共闘だ!団員は三人一組で魔獣に当たれ!後は個々人の判断に任せる。我々も賭けに参加するぞ!」
笑ってそう宣言するフィーダ。
「よろしいので?」
副長がフィーダに尋ねる。
「かまわん、どのみちこの数の魔獣が相手では集団でかかるより各個撃破の方が効率がいいだろう。なにより、…この雰囲気は嫌いじゃないしな。行くぞ」
フィーダはニヤリと笑うと、機心を手にする。
副長も笑うと、何も言わずに頷く。
「魔身機召喚!行くぞ、白金の騎士!!」
そう言って剣を地面に挿すフィーダ。
フィーダの剣から目映い光が溢れ、地面から盛り上がった砂が巨人を形作る。
砂がひび割れ、剥がれ落ちると中から白金の鎧を纏った魔身機が現れた。
フィーダの魔身機が剣を地面に挿すと、剣から地面に光が広がっていく。
「白金の暴狼!!」
次の瞬間、周辺にいた魔獣達の足下の地面が輝く。
魔獣が足下の異変に気付いた時にはもう遅すぎた。
突如地面から現れた巨大な白金の狼は、魔獣の下半身に噛みつき、腹の辺りまでが牙の中に消える。
噛みつかれた魔獣達は身をよじり、吠える。
が、白金の狼は首を振るように動かすと、無情にも魔獣の身体を噛みちぎり、地面に消えていく。
後に残ったのは魔獣の上半身だけであった。
「すっげぇな…さすが騎士団だ…」
「団長だけあって、むちゃくちゃ強いな…」
「ほかの騎士団員も大概だぞ、見ろ。三人一組で次々と魔獣を撃破してる」
冒険者達達は現れた者達の強さに感嘆の声をあげる。
団員でさえ、たった三人で一体の魔獣の相手をし、苦もなく倒していく。
全員がAランク相当の強さを持つエリート集団は伊達ではない。
「負けてらんねぇ!!いくぞ!」
思わず見惚れていたダリルは頭を振り、渇をいれる。
「「「「おぉよ!!」」」」
冒険者達にも気合いが入る。
戦場は、一層熱を帯びていく。
◇
「被害が思ったより大きい…。怪我人の撤退支援を優先しつつこのまま前進します」
左翼後方に現れたアリス。
前進していくが、やはり怪我人が多い。
この少ない人数で丸2日近く戦い続ければ当然だろう。
むしろ街が突破されていないのが不思議なくらいだ。
左翼前線へ到着したアリス。
そこで戦う者達の中で、明らかに動きの違う2体の魔身機。この2体はどんどん魔獣を撃破していく。
「その魔身機……ミナ!?」
「アリス~!久しぶり!!」
見覚えのある魔身機に、驚くアリス。乗っているのはもちろん、一緒に旅をした仲間だ。
声をかけられ、しっぽをぶんぶんと振るミナの魔身機。
「久しぶり!でもなんでここに!?あ、そちらの方は??」
ミナとの懐かしい再会。と、同時にミナの隣にいる凄腕の魔身機の事も気になる。知り合いだろうか?
「後で詳しく話すけど私ハルと一緒に居たから!そっちは受付嬢さんよ」
「受付嬢のイアです。お久しぶりですアリス様」
「受付嬢さん!?…お強いんですね…ミナ、詳しく聞かせてね。ハル君は?」
受付嬢…意外な人物に驚くアリス。
イアの強さはどう見ても本職の冒険者…Aランクは確実にありそうな強さだ。
「右翼をほとんど一人でもたせてるわ。ハルなら大丈夫だと思うけど、助けにも行けなくて。正直こっちで手一杯なのよね」
ミナは申し訳なさそうに、心配そうに。悔しそうに言う。
獅子乙女の耳としっぽが垂れている。
「そっか……」
さてどうしたものか、とアリスが考えようとした時、声をかけられる。
「アリス様、不躾ながらお願いが。ギルドマスターを助けていただけませんか?」
受付嬢が言う。
そう言って見上げた砦の上。
たった一人で空を舞い、鳥の魔獣全てを相手どるギルドマスター、クライヴの姿があった。
砦にはロカビリーを始め、遠距離攻撃の得意な魔身機が数体、援護に回っている。
が、如何せん遠距離攻撃の得意な者は少なく、たった一人で囮になりながら戦うクライヴの負担は相当なものだろう。
「兵長、指揮を任せます。この二人と一緒に戦って下さい」
アリスはそう言って馬を降りる。
「ありがとうございます…」
イアが言う。
「遠距離攻撃の得意な者は砦へ上がれ!お嬢様を援護するのだ!」
兵長が指示を出すと、返事をして何人かが砦へ向かっていった。
「アリス、無理しないでね~」
ミナが言う。
「ミナこそね。あちこちボロボロよ?」
優しく笑って、答えるアリス。
次の瞬間、気を引き締めて言う。
「魔身機召喚!舞え…銀翼姫!!」
機心から光が溢れ、天使を思わせるような白銀の翼を携えた魔身機が現れる。
蒼の装飾が映える白銀の鎧と相まって、なんとも神々しい光景だ。
翼がはためき、銀翼姫は空へ舞う。
「絵画のようだな…」「天使だ…」「いや、女神だ…」
流麗な動作で空を舞う銀翼姫に惚けてしまう冒険者達。
一陣の風が、戦場を吹き抜けた。
明日も…10時!!!




