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82話『離脱』





【外骨格の強固な蟻か…ふむ。水と風、もしくは氷魔法のどれかを使えるものはいないか?】



クライヴからすぐに返事が聞こえてくる。



「あ、俺氷の魔法使えますよ」



先ほどハンマーを作った男が言う。



「俺は水が使えるぜ」



片腕の魔身機の冒険者が言う。



「風はダリルが使えるな」



ジョンが言う。



【どっちかでよかったんだが両方揃ってるなら都合がいい。ならば…】




クライヴの指示を聞き、動き出す冒険者達(バスターズ)



「ダリル!少し距離を取りながらそのまま囮をしてくれ」



ジョンが言う。



「わからんがわかった!」



「よし、頼む!」「はいよ!」



冒険者はそう言うと、魔身機の片手に光が集まる。




ぽつり、と蟻の額に(しずく)が落ちる。



途端に水量は多くなり、一気に降りだす雨。



が、雨は魔獣周辺にだけ降っている。



蟻だけに降る雨は体を濡らしていき、すぐに止んだ。



「……なにするんだ??」



その様子を見てダリルはコックピットで呟く。



「よし、次頼む!ダリル!蟻を包むように竜巻作ってくれ!弱くていい」



「お、おう」



ジョンに言われ、わからないままにダリルは風魔法を使う。



風魔法で包むように竜巻を作る。魔獣の巨体を吹き飛ばしたり動きを止めることはとてもできない威力だが…何をするのだろうか。



思っていると、冒険者の1人が氷の魔法で雪を降らせる。



風の魔法と雪、さらに体が濡れている事で一気に蟻の体が冷えていく。



と、蟻の動きが鈍くなってきた。



「なるほど!虫だから温度が下がると弱るのか!」



冒険者が手を打って言う。



「それだけじゃないぞ。頼む!」



ジョンの言葉に、冒険者が頷き、武器を構える。



土魔法で作った鋼の槌だ。



「ていやっ!」



槌を持った魔身機が駆け、力一杯に蟻の頭に向かって武器を叩きつける。




がきぃぃぃぃん!!



派手で高い金属音が響きわたる。



ピシピシ、と音を立てて蟻の頭にヒビが入っていく。




「よっしゃ効いた!もう一発いけ!」



ジョンが言い、鋼の槌の冒険者はふりかぶる。



【金属に近い硬度なら、冷やせば脆くなるかもしれんと思ってな】


クライヴが言う。



さらに、氷のハンマーの冒険者も参戦して殴りかかる。



が、蟻もただ殴られている訳ではない。



攻撃が効いたのが癪に触ったのか、危機感を覚えたのか。



酸を吐き散らしながら無茶苦茶に暴れまわる。



巨大な顎の攻撃をなんとか受ける魔身機。



「やべぇ!怒ったぞ!」



「魔法を撃てっ!」



ジョンが言う。



「えっ…でも聞かないんじゃ」



「いいから!」「はっはい!」



冒険者の言葉に、ジョンは声を大きくして言う。



一斉に魔法を撃つ魔身機達。



が、着弾してもダメージがあるようには見えない。



「しゃがめ!背中借りるぞ」



鋼の槌を持った冒険者に、後ろから声をかけられた。



冒険者はとっさに魔身機を屈ませる。



と、背中に何かが当たるような大きな衝撃が来る。



ダリルの魔身機が飛び、冒険者の魔身機の背中を踏み台にしてさらに高く跳ぶ。




跳んだ魔身機は、ハルバードを逆手に構え、ヒビの入った蟻の頭を目掛けて落ちてくる。



「くらえっ!!」



魔身機の武器が蟻の頭に当たり、突き刺さる。



そのまま首を落とそうとするダリル。



が、蟻が暴れまわり、振り落とされるダリルの魔身機。



「ちっ…すまん、仕留め損なった」



ダリルが言う。



蟻の魔獣は頭にハルバードを刺したまま暴れまわっている。



あまりに激しく酸を撒き散らしているので近づくこともできない。



「いや、仕方ない。正直予想以上だアレは」



ジョンは酸を回避しながら言う。



「ギルドマスター!すまん、失敗した。他になにかないか?ダリルの武器が刺さったままだ」



【硬いな…ちょっと待ってくれ、他の冒険者達にも聞いてみる】



クライヴはそう答えると、全員に聞こえるように言う。



【誰か、赤い蟻の情報か対処法はわからないか?特殊個体だ。硬すぎて武器が抜けない程だ】



「ギルドマスター!直接話せますか?」



ハルが答える。



「ハル君、何か知っているのか?」



「蟻は知りませんが、いけるかもしれませんよ。お願いします!ロカビリーさん!」


「わかった、頼む!」



ハルの言葉にロカビリーが答える。





【『炎迅』です!武器が刺さってるんですよね?】



響いた声に全員が驚いた。



「『炎迅』か!何かわかるのか?」



ハルの言葉にジョンが答える。



「お前が来たほうが早いんじゃねぇか」



ダリルが言う。



【ダリルさんにジョンさん!刺さってる武器は魔身機のですよね?誰のですか??俺は今真逆の位置なんで行けないっすよ】



「俺のだな。硬すぎて抜けなくなっちまった」



ダリルが答える。



【好都合です。なんとかもう一度武器に触ってください。んで、武器の先端で魔法の刃を出したらたぶんいけますよ】



「刺さってる武器を媒介にするのか!…うまくいくのか?」



なるほど、と思ったがジョンは尋ねる。



通常、生き物の体の中で魔法を使うことはほとんどできない。



それは相手にも魔素があり、魔法への抵抗力があるためだ。



だが剣などが刺さっているのであればそれを通して発動させることができる。



鉄蛟竜(みずち)を倒すときにアリスが使った手だ。



【仲間が以前やりましたのでできると思います】



「わかった。任せろ!」



そういってダリルの魔身機ご走り出す。



「援護するぞ!撃て!目眩ましだ」



ジョンが言い、一斉に魔法を放つ冒険者達。



仲間の援護を受け、なんとか再び突き刺さったハルバードの元へたどり着いたダリルの魔身機。



「随分時間くっちまったな。あばよ」



そう言って魔身機はハルバードを握ると、ハルバードに向かって一気に魔力が流れていく。



蟻が大きく鳴いたかと思うと、蟻の頭が爆ぜて吹き飛ぶ。



体は大きな音を立てて倒れ、動かなくなった。



「っしゃあ!うまくいったぜ炎迅!ありがとよ!」



「やれやれ…しかし刺した武器を利用して相手の体内で魔法を使うとは…なかなかえげつねぇな」



【よかったです!ではまた後で!】



そう言ってハルからの連絡は切れるのだった。



「お前らは一旦下がれ、機心直して腕が生えてからもっかい来い」



「おっす!ありがとうございました!」



ジョンの言葉に、冒険者達は礼を言って撤退していくのだった。



まだまだ、各地で戦いは続いている。




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