80話『継戦能力』
「くらえ!」
炎迅が右腕を振ると、空中に幾つもの剣の形をした炎が生まれ、掛け声と共に撃ちだされる。
放たれた炎の剣は魔物や魔獣に当たり、爆発音と共に燃え上がる。
「ハル!七時と三時!」
ミナが言う。
左斜め後ろと右真横の敵から攻撃されそうだ。
「跳んで!」
ハルは言葉短に答える。
獅子乙女が跳躍した瞬間、炎迅は雷の剣を地面に刺すように投げる。
雷の剣は地面に触れた瞬間、感電するように四方八方に別れて様々な敵を襲う。
大森林での2ヶ月あまりの戦いは、二人に抜群のコンビネーションをもたらした。
お互いにどう動くかは想像できるし、対処法の足並みも揃っている。
「しゃらくせぇ!」
絶え間なく襲いくる魔物と魔獣に、ハルがが叫ぶ。
左手に握られた雷の剣の刀身が三倍程に伸びる。
そのまま炎迅は横に薙ぎ払うように剣をふる。
雷の剣に斬られると、切断されると共にバリバリと音を立てながら感電し崩れ落ちる。前方にいた魔物や魔獣の数が一気に減った。
が、空いたスペースを埋めるようにまた後ろから魔物達が現れる。
「待たせたな!!」「二人とも下がれ!」
後ろから声がかけられる。
振り返ると、味方の攻撃魔法が飛んでくる。
それに合わせて下がるハルとミナ。
「助かった~……」
ミナはほっと胸を撫で下ろした。
「ありがとよ二人とも!少し休みな!」「まかしとけ!」
補給と休憩、応急処置を終えた冒険者達が帰ってきたのだ。
「ありがとうございます!」
「疲れたぁ~…」
やはりミナの疲れが大きい。
炎迅を乗せて常に走り回っていたので当然だろう。
街の壁までたどり着き、中へ入るハルとミナ。
「ありがとうよ!助かったぜ!」「お嬢さんの魔身機すごいな!」
冒険者達の手荒い歓迎を受ける。
「おかえりなさい~ギルドマスターがお呼びです~」
受付嬢が言う。
「イアさん!…ミナは先に休んでて。俺が行ってくるよ」
ハルはミナに言う。ミナには少しでも休んでいてほしい。
「ありがと~そうさせてもらうわ」
そういってミナは奥へ入って行った。
「こちらへ~」
受付嬢に連れられてハルは歩き出す。
◇
「炎迅様が来られました~」
受付嬢はそう言うと、礼をして下へ戻って行ってしまった。
「来たか!本当に助かった、ありがとう!大丈夫か!?」
クライヴは興奮ぎみに言う。
「いえいえ、間に合ってよかった…。ミナは少し疲れたようで休んでます」
ハルが答える。クライヴの隣にいるロカビリーを見つけ、会釈する。
ロカビリーと目が合い、笑顔で返してくれた。
「状況は??」
ハルは続けて聞く。
「さっきも軽く言ったが、原因は全くわからん。1ヶ月魔物や魔獣が出なかった分、いやそれ以上の、下手すれば近場の魔物や魔獣が全て集まっているような数だな。すでに1000体は超えている」
クライヴはやれやれと頭を振りながら答える。
「エルフの国から戻ってくる時もほとんど魔物を見ませんでしたからね」
ハルは帰り道の道程を思い出す。
「そういえば、エルフの国には行ったのか?帰ってくるには早すぎると思うが」
クライヴは疑問をぶつける。
ほかの冒険者も疑問に思っていた事だ。
エルフの国までおよそ3ヶ月、往復したなら倍以上かかるはずだ。
だが、ハルが出発してからまだ3ヶ月程度しか経っていない。
「あぁ、2ヶ月ちょっとで着きましたよ。帰りはエルフの古の魔法とやらでニアフォレストの近くまで魔法で飛んできましたので数日ですね」
「なんと!ハル君とミナさんの強さなら2ヶ月ちょっとで着いたのも納得できるけど、帰りが数日なんて…」
思わずロカビリーが声をあげる。
「便利な魔法もあるものだな…だが助かった。それがなければ間に合わず、下手すればニアフォレストは墜ちていたかもしれん」
クライヴは唸るように言う。
正直、このタイミングでのハルの帰還はまさに死中の活ともいえる。
クライヴ自身もかなりの強さがあるが、クライヴがいなければ魔獣用兵器のチャージができず、大型が来たときに打つ手がなくなってしまう。
チャージさえ終わってしまえば、離れても起動できるので問題ないのだが。
「そういえばハル君、また強くなってない?」
ロカビリーが言う。セキチクでの活躍も見ていたが、一層磨きがかかったように見える。
「師匠の力に慣れたのもありますかね。エルフの王に加護をもらってからは特にスムーズに使えるようになったと思います。ですが、ミナとのコンビネーションが一番だと思いますよ」
エルフの王に、エルフの加護をもらってからは雷の魔法か扱いやすくなったように感じていた。細かい調整ができるようになった、と言うのが正しいだろうか。
今まではとにかく出力を叩きつける感じだったが、魔身機を出さずに生身でも微細なコントロールが可能になったのだ。
そして一番はミナの存在だろう。
大森林でずっと一緒にたたかっていたのもあってコンビネーションは抜群だ。
「連携の取れた仲間とは、1と1が2ではなく3にも4にもなるからな」
クライヴが言う。
誰かと戦うとは、そう言う事だ。
命を預ける相手だから。
「すまないが、大物が出たらまた出てもらわねばならんと思う。今の内に少しでも休んでくれ。王都に応援を要請しているがまだしばらくは着かないだろう。」
クライヴは申し訳なさそうに言う。
「そんな顔しないでくださいよ!応援が着くまでなんとか皆で乗りきりましょう!では失礼します」
そういってハルは頭を下げ、出ていく。
(アルフレッド…お前の弟子は立派にやってくれてるぞ…)
クライヴはしみじみと思うのだった。
明日は…12時!!




