77話『苦戦』
大型魔獣を撃退し、魔物の襲撃も止んだため一度撤退した冒険者達。
不気味ではあるが、束の間の休息に胸をなでおろしていた。
「…しっかしすげぇもんがあるんだなここは…」
冒険者の一人が呟く。
「さっきの対魔獣用魔術兵器・ミンナイナクナルか?」
「なんかぶっそうな名前でてきたなオイ」
「なんでも、ギルドマスターの発案に偏屈なドワーフと『雷神』が絡んだらあんなとんでも兵器が出来上がったとかなんとか」
冒険者が笑いながら言う。
「低位とはいえ大型魔獣3体を一撃とかはんぱねぇな…全部あれでいいんじゃねぇのか」
「いや、威力故か、一発撃つとしばらく撃てないらしい」
「そらそうか…じゃあま、俺達がやるしかねぇわな」
「そーゆーことだ。だから少しでも休んでおけよ」
突然現れたギルドマスターが言う。
「「「「ギルドマスター!」」」」
一斉に声をあげる冒険者達。
「任しといてくださいよ!」
「頼もしいことだ。頼んだぞ」
そう言って笑い、ギルドマスターは行ってしまった。
「…さて、どうなる事かね…」
ジョンは小さく呟く。
冒険者達は来る戦いに向けて英気を養っていた。
◇
【左側面から足の早いのが来てるぞ!気を付けろ!】
ギルドマスターの声に反応し、そちらを向くとかなりの速さで進んでくる狼の魔物が見えた。
「くそっ!奇襲のつもりかよ!?」
冒険者は飛び込んできた狼の魔物になんとかカウンターを合わせ、首をはねる。
あれからほぼ半日、休むまもなく襲撃が続いている。
襲撃のわずかな隙をみて交代し、休憩したり装備を整えたりはしているが、さすがに疲れが見えてきている。
特に最前線で魔獣を相手にしている熟練冒険者達は戦いっぱなしだ。
砦の城壁に風魔法の刃が当たり、大きな音と共に城壁に大きな傷がつく。
「くそっ……いつまで続くんだ…」
自分のほぼ真下の位置に当たった風魔法の刃で出来た傷を見て、もし自分にあたっていたら…と考えてしまう新人冒険者。
「ぐっ!…く…すまん、一度後退する!」
魔身機に敵の魔法が直撃し、召喚魔法が解けてしまった。
冒険者は慌てて砦に撤退していく。
「おーう、ゆっくり休んでこい」
魔獣をハルバードで切り伏せ、ダリルが言った。
「しまった、戻るついでに酒でも持ってきてもらえば良かったな」
ジョンが心底残念そうに言う。
二人の魔身機は全身に大小様々な傷が入り、かなりの激戦をくぐり抜けた事が見てとれる。
(襲撃が止まない…このまま続くとかなりきつい。王都からの救援もまた半日以上はかかるだろうし…)
クライヴは城壁の被害や冒険者それぞれの疲労や被害が大きくなってきていることに気づいている。
気づいてはいるが、打てる手はない。
襲撃の合間に交代で休憩する程度しかできないのだから。
(なんとかあと半日もたせるしかない…)
クライヴは苦々しい顔で考える。
「次が来ます!…この音は……多い!」
まだ森の中で姿は見えないが、ロカビリーは音で判断ができる。
……森が揺れている。
「……なんだ?」「見ろ、森が揺れてるぞ」
思わず声が出る冒険者達。
揺れる森から現れたのは、先程より大きな狼の魔獣だ。しかも群れなのか、これが5匹。
おそらく狼の魔獣一頭の相手にも10人は必要だろう。
「よりにもよって大型か!」
「多いな…とにかくかかれ」
冒険者達は五匹の狼魔獣にそれぞれ向かっていく。
「そっち任したぞ!」
森から出た五匹の魔獣をうまくバラバラに別れるように戦う冒険者達。
ダリルの魔身機がハルバードで斬りかかる。
が、狼の魔獣は華麗なステップで軽々と避けてしまう。
続けざまにジョンも斬りかかるが、素早く後ろに飛び退き、すかさず反撃の爪がダリルとジョンに迫る。
他の冒険者が撃った魔法のおかげで気が逸れたのか、なんとか回避する二人。
「さすがに強いな…」
ジョンが言うと、近くにいた冒険者が答える。
「少しずつダメージを与えるしかない…丁寧にいこう」
「おうよ!」
体勢を立て直した二人は再び斬りかかる。
他の冒険者達も攻撃を合わせる。
誰かが斬り込み、誰かがフォローする。誰かがやられそうになれば守る。
冒険者達は数の有利を生かし、複数人でもって、その状況に応じて役割を変えることで戦う。
群れで大物を狩る。
はるか昔、マンモスを倒していたように。
◇
「くらえっ!」
ジョンの魔身機の剣が、狼を切りつける。
「とどめだ!」
ダリルも続けて切りかかり、他の魔身機は魔法を撃つ。
「…よしっ!」
弱った所に連続攻撃を叩き込み、なんとか狼の魔獣を倒すことができた。
「他に合流するぞ!散れっ!」
ダリルが言う。
狼を倒した冒険者達は他の魔獣の所へ応援へ向かう。
【中央を!突破されそうだ】
クライヴから指示がでる。
それを聞いてすぐに走りだすダリルとジョン。
ちょうど先では、一体の魔身機が狼の攻撃を受ける直前であった。
「っしゃらぁぬぅぅ!」
狼の爪による一撃を、ハルバードを盾にしてなんとか受けるダリル。
が、受け止めきれず、庇った魔身機ごと弾き飛ばされるダリル。
「すまん、助かったよダリル」
助けた魔身機の操縦者がダリルに言う。
「いいってことよ!」
なんとか状況を立て直す冒険者達。
魔獣の強さや、戦い続ける疲労などからかなり苦戦していたが、一匹倒して仲間の人数が増えたのはかなり助かる。
苦しい戦いだが、なんとかこのまま少しずつやっていくしかないだろう。
【くっ…次が来ます、かなり大きい!】
ロカビリーが言うと、森が揺れているのがわかる。
「なんた…森が…」
揺れる森から出てきたのは、とてつもなく大きな亀の魔獣。
今戦っている狼魔獣の倍以上の大きさだ。
(…ここで中位の特大か…最悪だ…まだチャージも終わっていないのに!)
クライヴの顔に焦りがみえる。
熊の魔獣達3体を葬った魔術兵器はまだチャージが終わっていない。威力はとてつもないが、その分魔素のチャージにも時間もかかる。そのためにクライヴもこの場所を動くことはできない。
「でけぇ!!」「あんなの倒せるのかよ!?」
亀の魔獣のあまりの大きさの、冒険者達にも不安や焦りがでている。
亀の特大魔獣は大きな鳴き声をあげながら、地震のような揺れと大きな音を出して進んでくる。
さらに、亀の魔獣に続くように、さらに小さめの他の魔獣まで現れる。
「…おいおいマジかよ…狼のおかわりに、特大のデザートまで出てきやがった」「これは…まずいな…」
と、ここでさらに追い討ちをかけるロカビリーの声。
【この音は…四つ足…?はっ、速い!小さめのがもう一体来ます!】
さらに敵が増える…聞きたくない報告だ。
「おいおいもうお腹一杯だぜ…」
ダリルは思わず呟かずにはいられなかった。
明日は20時です!




