67話『父』
「中へ」
衛兵から告げられ、中へ入る。セリスさんは入れないようで外で待つことになった。
「遠いところをはるばるようこそ来られた客人よ。私がエルフの長、エルポム・グラムだ」
中へ入ると、年老いてはいるが背筋の伸びたエルフが座っている。
横に若いエルフが控え、さらに隣には衛兵か、武官だろうか。ものものしい雰囲気のエルフも控えている。
さすがに王族との謁見も三回目ともなると、多少は余裕が出てくる。
ハルは以前に比べればあまり緊張せずにこの場に望んでいる。
話す内容によって、今後どうなるか、の部分への心配はあったが。
「王よ、この場を設けて頂き、感謝します。私はハルと申します」
そう言ってハルは頭を下げる。
「ミナ・ギルです」
ミナが恭しく礼をする。
「こういった礼儀には詳しくないもので、失礼があるやもしれませんがお許し下さい」
ハルが言う。
「かまわんよ。それに自分でも言ったが、私はただの長だ。周りがうるさいので国を名乗り、王を名乗らされているが甚だ不満でな。気にしなくていい。」
おどけたようにエルフ王は笑った。
さすがに笑うことはできないが、思ったより話はできそうな雰囲気だ。
「さて、では聞かせてもらおうか?」
師匠の事で話がある、と言ってここまできたのだ。それを話せということだろう。
「はい。まずアルフレッド様ですが、長年に渡りファンテジア王国でギルドに入り冒険者として活躍されておました。実力は正にトップ、『雷神』の通り名を知らぬ者はおりません」
「……そんなことをな。続けてくれ」
「私はアルフレッド様に教えを請い、弟子として側に置いて頂いていました。アルフレッド様が王族である事は私も聞いておりませんでしたので、恐らく王国の関係者も、誰も知らないでしょう」
「……」
王は無言だ。
「そして先日、ドワーフの国からの帰り、セキチク付近で、魔道具によって凶暴化した竜と遭遇、
「竜!?」
ハルの言葉途中、竜の単語が出た所で王の横にいた若いエルフが思わず言った。
「はい。丸2日以上戦い続け、死闘の果てに竜を撃破。しかし、同時にアルフレッド様も亡くなられました」
「なん…だと!?そんな……兄さんが!?」
王の横にいた若いエルフが立ち上がり、声をあげる。
兄さん……ってことはこの若いエルフが師匠の弟、王位継承者ってことか。
「……信じたくはないな」
王は静かに、重く言った。
「今際のきわに、師匠が私の籠手に刻まれた紋です」
正確には師匠の機心と籠手が合体したんだが、話がこじれそうなので多少わかりやすく言わせてもらった。
ハルは籠手を取り出し、差し出す。
衛兵が受け取り、王の元へ持っていく。
衛兵も含め、籠手に刻まれた紋を見て三人共が反応した。
「この紋は……そうか…。アルフレッドは、何か言っていたか?」
王は紋を見て優しい目をして言った。
「……楽しかった、悔いはないと。その後私に、エルフの国へ行ってくれ、と言っておりました。お伝えするために参りましたが、遅くなってしまい申し訳ございません。アルフレッド様はセキチク国にて、国を救った英雄として厚く弔われました」
ハルは頭を下げ、王に言う。
王はハルの言葉を聞いて、何も言わずに目を瞑って上を向く。
「そんな…兄さん…」
師匠の弟さんはがっくりとうなだれている。相当ショックだったのだろう。
……この感じだと、師匠は何か軋轢があってエルフの国を出た訳ではなく、単純に自分の興味で国を出たのだろう。
だからこそ、家族には辛い。ケンカした訳でもなく、何年も会わずにそれが最後……。
「……ありがとう、ハル殿。辛い報告ではあったが、知ることができてよかった。」
王の言葉に、ハルは何も言わずに頭を下げる。
籠手が返ってきた。
「わざわざこんな所まで足を運んでもらったのだ、何もせずに帰すわけにもいくまい。礼に魔道具か魔法石でも用意させよう」
そう言って王は誰かを呼ぼうとする。
と、
「王よ!それは些か褒美がすぎるのではありませぬか!?」
衛兵が声をあげる。
…衛兵と思っていたが、違うらしい。
王と王子以外でここにいるってことは宰相みたいなものかな??それとも兵長か??少なくともこの場で王に意見を述べることはできるくらいの力の持ち主のようだ。
「そえは言っても手ぶらで帰らせるわけにもいかんだろう。お前がいつも言っているじゃないか」
「そもそも今の話もどこまで本当かわかったもんじゃない!王族の紋が入った魔道具なんて国の管理から出していいわけがないでしょう。回収するべきです。この者がアルフレッド様から奪った可能性もないとは言い切れません」
すごい剣幕で捲し立てる兵長。宰相か?めんどくさそうな奴が出てきてぞ。
隣にいるミナの雰囲気が変わった。怒ってるなこれは。
「王よ!疑われるのも仕方ないかもしれません。そのような為に来たのではありませんから、褒美は受けとるわけにはいきません」
ハルが言う。
師匠から奪ったなんて疑いかけられるのは気分悪いが、モメたい訳じゃない。
師匠の国なので穏便に済ませたい。
「ばれそうになったから聖人のふりか?アルフレッド様を騙し討ちなり不意討ちなりして魔道具を奪い、さらに利用して今のように褒美をせしめる為にこの国に来たのではないか?」
「貴様の話、筋は通っているが確証を得るほどの物証もない。だいたい、魔法も使えないひ弱な人間など弟子にする意味もないだろう」
ニヤニヤと下卑た顔で兵長が言う。
「……師匠の目が狂っていたと仰るのですか?」
はっきりと怒りを滲ませてハルは言う。
「ダリウス!口が過ぎるぞ、客人の前だ。それと最後の言葉は我が息子を愚弄する意味にもとれるな」
王が一喝する。
「そのようなことはございません。この者が本当に弟子であれば、謝罪も必要かもしれませんが」
「ダリウス、貴様の言っている事に一理あるのかもしれんが、貴様が言っている事も想像の域を出ていないではないか」
「ですが王よ!」
◇
あれー…なんか俺達そっちのけでバトル始まっちゃいましたけど…めんどくさいからなんにもいらないんで、このまま帰らせてくれないかなー……。
と、ハルがどうやって場を納めてとんずらしようかと考えだした時、部屋の扉が開く。
「お話し中に申し訳ございません!大変です!魔獣が結界を抜けてきました!!」
若いエルフが飛び込むように入ってきて、叫んだ。
トラブルは続く…。
明日も10時です!戦闘はいりますよー!




