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65話『王子』




「……えっ…セリスさん、失礼ですけど…それ本当ですか?」



ハルがセリスに聞き返す。



師匠が王子……?



「本当よ。あなたの知ってるアルフレッドさんが私の知ってるアルフレッドさんと同一人物であるなら、ね」



セリスは神妙な顔で言う。



当然だろう、ただの旅人であれば問題ないが、目下、放浪中の王子の名前が出れば話は違う。



「って事は国王と話さないといけないのか…」



「ハル、これは…ちょっとまずいかも…」



ミナとハルは考え込んでしまう。



「そんなに重要な事なの?聞かないほうが良さそうね」



こちらの雰囲気を察したのか、セリスが引いてくれた。



こうなってしまうと、その王子が亡くなりました、という情報は爆弾になってしまう可能性がある。



亡くなった理由によっては戦争になってもおかしくない話だからだ。



話すべきか、話さざるべきか。



ハルが考えていると、声がかかる。



「ハル、セリスさんなら大丈夫。心配してくれてる。少しでも情報をもらったほうがいい」



ミナがハルを見て言う。



獣人のミナは、相手の微妙な変化や敵対心などを鋭敏に感じる事ができる。



そのミナがセリスさんは大丈夫と言うならば、大丈夫だろう。



「無理強いはしないけど、情報でなら多少力にはなってあげられるかもよ?」



セリスが小首をかしげて優しく笑う。



「……わかりました。」



ハルはセリスに話すことに決めた。



何も知らない状況で打算なしに助けてくれようとした人だ。それに、セリスさんの料理は優しい味がした。きっと大丈夫だろう。



「師匠…アルフレッド様は身分を隠してファンテジア王国で冒険者(バスター)をやっていました。僕は弟子です。王子だと言うのは僕でも初耳なので、おそらくほとんどの人は知らないと思います」




ファンテジア国王などとも交友があったらしいが、王子だと知っていれば、いの一番にパーペチュアル(エルフの国)に正式に報告なり通達なりが来るはずだろう。



それがなく、師匠の死を誰も知らないと言うことは国やギルド関係の人は誰も知らないとみたほうがいいだろう。



可能性があるとすればプライベートな付き合いをしてそうなダルじいさんやシムさんならもしかしたら知ってるかもしれない。



「あら~アルフレッド様そんなことしてたんだ…」



セリスさんが相づちをうつ。



「はい。そして師匠は類い稀な強さで冒険者(バスター)でもトップ3にいる有名人です」



「でしょうねぇ~アルフレッド様は人間とエルフの良い所だけを受け継いだサラブレッドだからねぇ」



「やっぱりエルフの国に居た頃から強かったんですか」



「格が違う。誰も相手にならなかったわ。本気を出してるのを見たことがないわ」



苦笑いしながらセリスさんが答える。何か昔の事件を思い出したような顔だ。




「その師匠が(ドラゴン)を倒しましたが、同時に亡くなられました」



「えっ!?うそ……」



セリスは驚愕し、目を見開く。



「この事を僕は国王に報告せねばなりません」



「いっやちょっと想像以上に大きな話しだね…そもそも(ドラゴン)とか挑んじゃダメでしょ…」

  


(ドラゴン)は魔道具の影響で暴走しており、無差別に破壊しつくす勢いでした」



「いや実際に(ドラゴン)を倒した所はアルフレッド様らしいといえばらしいけど…」



そう言ってセリスほ考え込む仕草をみせる。



少し経つと、再度口を開く。



「……もしかしたら、あまり大事にはならない、かもしれない」



「なぜ?王子が他国を守るために戦死したのに」



ミナが疑問をぶつける。たしかにそうだ。




「アルフレッド様は、『この国には戻らない』と公言して出ていってて、実際100年近く一度も帰ってきてない。さらに、王位については弟君がおられるから」



「なるほど、『もう居ないもの』として考えてる可能性が高く、さらに、居なくても王位は弟が居るから問題ないってことね」



ミナが言う。



「ええ。国が、『アルフレッド様は王子ではなくただの国を捨てたハーフエルフ』ってスタンスで考えてるなら問題にはならない。アルフレッド様も、『戻らない』なんて公言するくらいだから、もしかしたらなんらかの溝があったのかもしれないし。憶測だけどね」



「だといいんだけどねぇ…」



セリスの言葉に、ミナが言う。



ありえない話ではない。



少なくとも、居ないと困るくらいなら探しに来るだろうし、その段階で師匠の身分も王国や隣国にバレていたはずだろうからだ。



多少は、気が楽になった。



「ありがとうございます、セリスさん。本当に助かりました」



ハルとミナが頭を下げる。



「報告しない、って選択肢はないのね」



セリスは優しい目で言う。



「それはないですね。師匠の最期の言葉なので、絶対に果たします。…それに、不幸とはいえ、家族が知らないのはかわいそうですから」



「アルフレッド様は随分慕われているのね。…よかった。でも、もし何かあったらそのときは…」



「大丈夫です、自分の身を守る力くらいはあります。それに、自分自身やらなければならないことがありますし、彼女(ミナ)は絶対に無事に国元に返さないといけないので」



ハルはにっこりと笑う。



「私は貴方と一緒に居られればそれでいいわ。そこが私の場所よ」



ミナが言う。



「ふふ、あなた達は強いわね。アルフレッド様の弟子なだけはあるわ。さて、話し込んでたらこんな時間だから今日はもう寝ましょう。国王の所へは明日ね」



「ありがとうございました。お世話になります」



「ありがとうございますにゃ」



そう言って二人はセリスに頭をさげる。



セリスさんから色々聞けたおかげで助かった。



波風たたないといいんだけどなぁ…そう思いながら床につくのであった。










明日は20時です!いつもありがとうございます!

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