64話『エルフ』
「さて、せっかくだから案内してあげる。たいして見るものもないけどね」
そう言ってセリスさんが奥へと進んでいく。
「ここが街の中心の泉ね、あっちが来客用の空き家、あそこに見えるのがお店。大したもの売ってないけどね。奥のおっきい木が『神樹』って言われる、エルフの守り神みたいなものかな。あの木の所に国王が住んでるわ」
別に早口で説明している訳ではないのだが、あっという間に説明は終わる。
と、言うよりあまり説明する場所が多くない。
「さて、案内も終わったから今日は帰ろうか。日も暮れるし、人探しは明日からでいいでしょ?」
セリスさんが二人に言う。
「案内終わり!?はやいっすね…ではそうさせてもらいます」
セリスに続く二人。
少し歩いた先にある家のようだ。
◇
「荷物は適当に置いてね。はい飲み物。座って座って」
家へ入ると、セリスさんがてきぱきと飲み物を用意してくれた。
カップにお湯を注ぎ、ふわりと部屋の中に香りが広がる。
「お邪魔します…ありがとうございます」
ハルはそう言ってもらった飲み物に口をつける。
薬草の…お茶?紅茶のような味がする。温かくて香りがいい。これはおいしい。
熱かったのか、隣ではミナがカップを必死に冷まそうとしていた。
「晩御飯用意するからゆっくりしててー」
そう言ってセリスさんは長い髪を結わえ、うでまくりをして微笑む。
「ありがとうございます!…思ったよりも人数は少ないのですね」
ハルがセリスに疑問を投げ掛ける。
想像よりもこじんまりとしていた。
国…と言うより、町くらいの大きさだ。
「あぁー、人間の感覚だとそうかもね。エルフは寿命が長いからねー。増えも減りもしないから。もう百年以上顔ぶれも変わってないし」
なんのこともなしにセリスさんが言う。
「やっぱりエルフって長命なのね…」
ミナが言うと、
「しかも基本的に引きこもりだからここから出ないしね。たまーに好奇心旺盛な奴が出ていくけどほとんど帰ってこないし。一応他の国との兼ね合いがあるから『エルフの国』って名乗ってるけど、実際は里よ、里。集落」
あっけらかんとセリスさんが言う。
「軽いわね…もっとこう…排他的な感じかと思ってたわ」
ミナが苦笑いで言う。
「別にそんなことないわよー?誰か来ればもてなすし、必要があれば森を出るわ。他の国の文化も好きよ。だからあなたたちを泊めたんだし」
そう言えばセリスさんは話が聞きたい、と言っていた。
わざわざ自分から外には出ないが、向こうから来たんならなんか楽しみたい、ってとこか。
引きこもりか!!ネット環境とかここにあったら永遠に家から出なさそうだな…
家の中にいい香りが漂いはじめる。
ん?そう言えばセリスさん、百年以上顔ぶれ変わってないしとか言ってたけど…いくつなんだ?
見た目はどう見ても20才くらいの超美人だけど…
と、ハルは思ったが、女性に歳は聞くべきではないという結果になり聞くのをやめようとした瞬間、
「ちなみにセリスさんおいくつ?」
ミナがずばっと聞く。
「1000は超えてるけど覚えてないわねぇ」
人差し指を唇にあて、小首をかしげるようにセリスさんが言う。
まじか!?エルフすげぇ!
「!?亀ばぁちゃんより歳上…すごい…若い…」
ミナも驚いたようだ。
ちなみに後で聞いたが、亀ばぁちゃんは獣人の国一番の長寿で、最近320才の誕生日を迎えたそうだ。おめでとう。
「ミナさんは??」
セリスさんがミナに聞く。そう言えばミナの歳は聞いたことないな。
「私?私は15よ」
「はぁっ!?」
思わずハルは声が出る。
年下!?!?あのダイナマイトわがままボディが年下!?
「何驚いてるのよハル…獣人は成長が早いから13で成人よ。」
ミナが何を今さら、と言った顔で言っている。
「まじか…すげぇな獣人もエルフも…」
驚きを隠せないハル。
ほとんど同じ見た目をしていても種族が違うとここまで違うのか…。
「二人とも若いからこれからね~」
とニコニコしながらセリスさんが料理を持ってきた。
「食べましょう、特製きのこのパイ包みよ」
テーブルに置かれる料理。
ハルは食器を配り、ミナは水を用意していた。
「おいしそうですね!いただきます!」
ハルはスプーンをいれ、頬張る。おいしい!!
「おいしいっすこれ!!!」
テンションが上がり、声が大きくなってしまった。
「あら嬉しいわね~」
セリスさんは満面の笑顔でハルとミナを見ている。
「あ"っ"つ"い"に"ゃ"あ"!」
どこから出たんだその音!?というような声でミナが言う。
あぁ、猫科だから…
「そう言えば、やっぱりエルフって肉は食べないんですか?」
ハルは疑問に思った事を聞いてみる。
師匠は食べていたが、ハーフエルフなので微妙な所だ。
「いや、食べるわよ。何千年も前は食べなかったらしいけど、今は問題なし。むしろ好き」
嬉しそうにセリスさんが言う。
「あ、そっすか…」
今日はたまたまか…ちょっとがっかりしてしまうハル。
やはり固定観念やイメージといったものは良くない。
視野を狭めてしまう。気を付けよう。
「そう言えば、けっきょくあなた達は誰を訪ねてきたの??」
セリスさんが大きめのキノコを頬張りながら言う。熱くないのか?と驚いた顔でミナが見ている。
「アルフレッド・グランと言うハーフエルフはご存知ですか??もし知人とか家族とかいるなら教えてほしいんですが…」
師匠がパーペチュアルに行け、と行ったからには理由があるのだろう。
だが、その前に。師匠の関係者に、師匠の最期を伝えなければ。
それが俺にできる事だ。いや、俺がやらなくちゃいけない事だ。
「……アルフレッド…グラン?」
セリスさんの、様子が変わった。
「……国王、エルポム様の息子。つまり王子様の名前よ」
セリスさんの口から出た答えに、ハルとミナは動きが止まる。
師匠が王子…!?
明日は21時です!




