62話『大森林』
さて、いよいよパーペチュアルに向けて出発だ。
ミナと話し合ったが、シルバーはニアフォレストに置いていくことにした。
書物に、道が険しく人が一人通るのも精一杯、なんて記述があったからだ。
もちろん通るルートにもよるし、現在どうなっているのかは分からないが、シルバーが通れない可能性がある以上、賭けには出られない。
その為、ニアフォレストのギルドで預かって貰うことにした。
「寂しい思いはさせるが、安全の為だ。許してくれよ」
ハルはシルバーに語りかける。
シルバーは「ひひん」と返事をした。
「『帰ってきたら旨いもの食わせろ』ですって」
苦笑いでミナが通訳してくれた。
「では行ってきます!」
ハルはギルドの面々に挨拶をする。
イアさんやロカビリーさんや、他の冒険者が見送ってくれるらしい。
「お気をつけて~」「魔獣に気を付けてね!」「お土産期待してるぜ!」それぞれが言葉をくれた。ありがたい。
「ハル君、パーペチュアルの事はわからん事が多い。是非帰ってきて話を聞かせてくれ」
ギルドマスターはそう言って右手を出す。
「わかりました、必ず!」
ハルは右手をだし、がっしりと握手をして答えた。
「さて、出発しんこー!」
ハルとミナは大きな荷物を背負い、歩き出す。
多少重くはなるが、馬が入れない以上、自分達で持つしかない。
魔力で筋力強化すれば問題なく動ける重さだ。
こうして遥か彼方、パーペチュアルを目指して二人は出発した。
◇◇
出発して数時間。
かなりの距離を歩いたが、まだまだ大森林としては浅い。
ハルが師匠と修行のために森籠りしていたのももっと奥だ。
「ミナ、大丈夫?少し休もうか」
ハルは後ろを歩くミナに声をかける。
「余裕よ~。けど、小まめに休んでおきましょうか」
ミナの表情は明るい。
さすが獣人、よっぽど森に慣れているし、体力がある。
水を飲み、一息いれる二人。
「いつもの通り、暗くなる前に野宿する場所を探しておきましょう。木の上なんかだといいんだけどね」
「あー、たしかに師匠と居たときもそうだった。どの木がいいとか分からないから、任せていいかな?」
「もちろん任せて!あら、アレなんかちょうどいいんじゃない?」
ミナはふと気づいたように目線を移す。
めせんの先には、イノシシの魔物がいた。
こちらにはまだ気付いていないようだ。
「ご飯の話ね。硬いんだよなぁイノシシは…」
と、言いながらもハルは動き出す。
こちらに気づいたイノシシが体当たりをしようと走ってくる。
が、ハルは当たる直前にひらりと横へかわすと、同時に一刀、首をはねる。
ハルは、ふぅ、と息をつく。
「煮込むほうが柔らかいけどどうする?」
「いや、焼きましょう。コツがあるのよ」
ミナはにっこり笑って答える。
その夜、ミナが焼いてくれた猪肉は想像していたよりもずっと柔らかかった。
餅は餅屋とでも言うか、やはり肉の扱いが上手い。さすがだ、とハルは感心したのだった。
◇◇
数日後、初めて魔獣と遭遇した。
大きな猿の魔獣だ。
「魔身機召喚!いくわよ!獅子乙女!!」
「魔身機召喚! 炎迅…点火!!」
ミナが駈る、獅子の魔身機、ラナが唸り声をあげる。
炎を払い、炎迅も現れる。
獅子乙女は一気に距離を詰め、魔獣に飛びかかる。
「ハル!森に引火しないようにね!」
「わかってるよ!」
ハルはそう言うと、炎迅の左腕を前に出す。
「雷神の鉄槌!」
空から何条もの雷撃が降り注ぎ、猿の魔獣を貫く。
ひるんだ所に、獅子乙女が牙を剥いた。
猿の分厚い毛皮を貫き、獅子乙女の牙がくいこむ。
そのまま猿を振り回すように体を振る獅子乙女。
「ミナ!そのまま打ち上げて!」
ハルが叫ぶと、ミナの返事と共に獅子乙女は、もがいている猿の魔獣を空へと投げ飛ばす。
炎迅は剣を構えると、一気に炎が吹き出し、炎の大剣となってどんどん大きくなっていく。
そのまま、空にいる猿の魔獣を横に凪ぎ払うように斬りつける。
「…ふぅ」「いっちょあがりね」
魔身機を解除した二人。
魔獣も問題なく倒すことができた。
油断は禁物だが、とりあえずはなんとかなりそうだ。
◇
夜、寝るときは木の上にいる。
魔物や魔獣に見つかりにくいし、見つけやすいので地上よりは幾分か安全な為だ。
特に高い木に登ると、森から頭を出すような形になる。
ハルはこの光景が気に入っていた。
明かりの一切ない、真っ暗な森はとても静かだ。
虫の声や風の音、水の音など自然の音がよく聞こえる。
360度のパノラマ大森林に、上半分はこちらも360度の大天文ショー、満天の星空が輝いている。
ミナは先に丸くなって寝てしまった。
ミナの耳を撫でながらハルは思う。
(師匠はずっと一人でこれを見ていたんだな…)
どんな気持ちだったのだろうか。独り占めしたような気分だったのだろうか。寂しくなかったのだろうか。
今となっては分からないが、まぁ師匠の事だ。
この景色を見て肴にして一杯やっていたに違いない。
師匠が見たであろう景色を見れたハルは、なぜか嬉しかったのだった。
明日も21時です!!!!!
短編で童話を書きましたのでよければそちらもぜひm(_ _)m




