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61話『お勉強』




次の日の朝




ハルが目を覚ますと、既にミナは起きていたようで、身支度を整えている。



「おはよう」



薄手の服一枚で、髪を結わえながらミナが言う。



「おはよ~今日は平和だね」



伸びをしながらハルは言う。



宿に泊まった日は大抵ベットに忍び込んだり、いつの間にか至近距離に居たりするのだが、今朝は何もなかったようだ。



「そーゆー日もあるわよ」



(外堀は順調だし…ね)



ミナが一瞬ニヤリと笑うが、ハルは気づいていない。



「今日はどうするの??」



ミナはハルに尋ねる。パーペチュアル(エルフの国)に行くにしても、準備が必要だろう。



「とりあえずギルドでパーペチュアル(エルフの国)の事を調べようと思う。必要なものも揃えないと」




「でしょうね。とりあえず朝食にしましょ、いつもより時間が遅いわ」



「おかみさん、待たせちゃってるかな。行こう」



二人は部屋を出て一階へ向かう。



「「おはようございます」」



宿屋のおかみさんを見つけ、挨拶をする二人。



「あらおはよう。昨夜はおたの…遅かったのね。さぁできてるわよ」



おかみさんは咳払いを一つして言い直す。



さらに、なんで遅かったのかは聞かないから!みたいな顔をしてウインクをしてくる。



いや、違うからね?






朝食を済ませた二人はギルドへ向かう。



扉を開けると、ギルドは綺麗だが、奥の酒場はまだ何人も倒れている。



まさに死屍累々、といった様子。



「げ、まだやってたんすか」



この様子では、ハル達が帰った後も朝まで宴は続いていたのだろう。



様子を見たハルは思わず声が漏れる。



「ハル君も~片付けを手伝ってくださいね~」



受付のふんわりお姉さんが笑っている。



いや、笑顔だが、笑っていない。これは断ったら命に関わるやつだ。



「もちろんです!はい喜んで!!」


「はいにゃー!!!」



背筋の伸びたハルと、しっぽがピンと伸びて逆立っているミナは同時に返事をする。



まずは昨日の片付けからだ。






「ほら起きなさい!あんた達も手伝うのよ!」



ミナが倒れている人に声をかける。



返事がない、ただの屍のようだ。



「いい加減にするにゃっ!」



ミナが倒れている人に蹴りを食らわすと、鈍い声が聞こえ、転がっていく。



「ちょっとミナ、いくらなんでも…」



と、転がってきた人を起こそうとしたハルは!顔を見て驚愕する。



「ギルドマスター何やってんですか!!」



ボロ雑巾のように床に転がっていた者達の一人がギルドマスターだったのだ。



土のような顔色をしている。



「私が朝、来たときからその状態だったのでわざと放置しています~」



プンプンゆるふわお姉さんが笑顔で答える。



「……イアちゃん……お願い…お願いだから回復魔法を……」



気がついたようで、ギルドマスターがぷるぷると震えながら動き出した。



あのお姉さんイアさんって言うのか。そういや聞いたことなかったな。いつも「受付のお姉さん」だったから。



「ダメです~しっかりと反省してください~」




イアさんはギルドマスターの頼みを菩薩のような笑顔で切り捨てる。



「……鬼…」



そう言ってぱったりとギルドマスターは動かなくなった。



「でも~いい加減邪魔ですしね~…これくらいにしておきましょうか」



そう言ってイアさんは手をかざすと、魔力が集まる。



状態異常治癒(クリアライト)!」



魔法の光が優しく死者達(よっぱらい)を包む。



光が晴れると、死者達(酔っぱらい)が立ち上がる。



見ようによっては死者蘇生か、いやアンデッド召喚にも見えるな。



見違えたように顔に色ツヤが戻ったギルドマスターは、何も言わずにイアさんに頭を深く下げると、二階、ギルドマスターの部屋へ上がっていった。



「……あなたがここのボスね?」



ミナが思わず言う。



「私はただの受付係ですよ~」



ニコニコと笑顔で答えるイアお姉さん。



これはあれだな、有能すぎて頭上がらないやつだな、ギルドマスター。



「で~本日はどのようなご用件で~?依頼でしょうか~??」



「はっ!そうだった。あのですね、パーペチュアル(エルフの国)の事を調べたいんですが、あるだけの資料をお借りできますか??」



一瞬我を忘れていたハルは再起動する。



ギルドでは魔物や他国、魔法の事など、様々な書物が保管されており、誰でも閲覧できるようになっている。



冒険者(バスター)の仕事上、事前に調べる事は命に直結する。



その為に用意されているのだ。



「ではお持ちしますのでそちらに掛けて少々お待ちください~」



そう言ってイアさんがカウンターから出てくる。



ハルとミナは近くのテーブルで待つ。



カウンターから出てきたイアさんは壁際の大きな本棚へ向かうと、様々な場所からてきぱきと本を抜き出していく。



そして五冊ほどを手に持ってハル達の元へやってきた。



パーペチュアル(エルフの国)に関する書物と、エルフについてのもの、大森林の魔物・攻略に関するもの等です。



パーペチュアル(エルフの国)へ行かれるなら最低でもこれを全て読んでからの方がいいと思いますよ~」



そう言ってイアさんは控えめにウインクをするとカウンターへ戻っていった。



「内容と場所まで全部覚えてるのね…すごい…やっぱボスよ……」



「たしかにね。でもこれは有り難い、よし、頑張ろうか」



「私こーゆーのは苦手なのよねぇ……」



肩を落とすミナを慰めながら、なんとか二人は書物を読み進めるのだった。





次の日



結局昨日は一日中本を読んでいた。



だが勉強の甲斐あって、様々な情報が手にはいった。



そこで今日は買い出しに来ている。



基本的に野営などに必要な物は持っているので、持っていなくて、必要になるものだ。



例えば、この辺りの大森林にしかいない動物の毒消しなど。



やはり調べておいてよかった、その場ではどうにもならない可能性がある。



この調子なら明日には出発できそうである。



ようやくパーペチュアル(エルフの国)へ向けて、だが、ここからの道のりがまた遠い。



師匠がいつか、「エルフなんて引きこもりのジジババしかいない」なんて言っていたが、どうなることやら…。







「大森林の歩き方」著 師匠

明日は21時に更新します!


と、別の話なんですが短編で童話を一話、書いてみたのでもし良ければそちらも一読下さい!

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