50話『城塞都市』
謁見が終わり、王都エリンバラを出発して数日、城塞都市エイギスに到着した。
「すげぇ……強そう……」
ハルが思わず声をだす。
エリンバラに続き、なんともまぁ小学生のような感想である。
街を囲む壁がもはや城壁のような構造なのだ。
巨大で頑強な門を通ると、街並みが見える。
が、ここでも普通の街との違いが見つけられる。
「ん?なんか、狭いね?」
街の大きさの割には道幅が狭く、さらに少し進むと曲がり角。
少し進むと分かれ道。また曲がり角。
もはや迷宮のような複雑な作りなのだ。
「珍しいだろう。もしも敵軍に侵入されても、大軍で行動しづらい狭さと、曲がり角で足を止める事によって前へ進みにくくなっているのだ」
フィーダか解説をしてくれる。
「私達は建物の上から矢や魔法を撃てるから少数でも足止めしやすいしね」
アリスが補足する。
なるほど、攻めづらく、守りやすい工夫がされているようだ。
この街自体が城であり壁であり、要塞なのだ。
馬車はゆっくりと街を進んで行く。
大きな街だ、人も多くどの店も活気がある。
やはり武器や防具の店が多い。
ある意味前線基地のようなものだから当然か。
「さぁ、着くぞ」
街の中心の大きな屋敷。
帝国を退け続ける「最強の盾」である城塞都市エイギスを統治する者。
大国ファンテジアでもトップの大貴族、そしてなによりアリスの父親。
カイム・ディアセイントの屋敷だ。
◇
「ただいま!」
アリスが屋敷の入り口、門兵に声をかける。
「あっあっあっアリスさま!!!」「あぁっアリスさまっ」
突然現れたアリスに、門兵二人はすっとんきょうな声を上げる。
「お前たち鈍っていないだろうな…?」
「っ団長!!おかえりなさいませ!」「滅相もございません!!」
二人は一気に背筋が伸び、声を張り上げて言う。
「よし、久しぶりなんだ、後で稽古をつけてやろう」
フィーダはこれは名案だ!なんて顔をして言うが、二人の額に汗が一筋流れる。
「「ありがとうございます!宜しくお願いします!!」」
「楽しそうですね」
ハルはフィーダに向かって言う。
「私がここに仕える前からの付き合いでな。よくやってくれている二人だ」
フィーダは穏やかに笑う。とても美しい横顔だ。
馬車が敷地へ入ると、執事らしき人物が近づいてくる。
他の者が馬の世話や荷物を下ろしていく。
「おかえりなさいませ、アリス様、フィーダ様」
背筋の伸びた老齢の執事は美しい動作で挨拶をする。
「ただいま、デルハイム。お父様とお母様は居る?」
「お帰りになられるのを今か今かとお待ちですよ。毎夜毎夜嘆いておられましたからね」
執事は柔和な笑顔で答える。
「もー…いつまで経っても子離れできないんだから…行きましょう」
そう言ったアリスを先頭に、屋敷へ入る。
屋敷の各所に置かれた調度品は上品で、美術品に疎いハルでも一目で価値のあるものだとわかる。
一際大きく、装飾の施された扉を開け、中に入る。
「ただいま戻りました、お父様、お母様」
アリスが優雅にお辞儀をする。
フィーダに続き部屋に入ったハルも、フィーダに倣って礼をする。
「アリス!よく戻った!心配したぞ…」
強面の男性がアリスを見て立ち上がる。
「おかえりなさい、アリス。フィーダもありがとう」
綺麗な女性が淑やかに笑う。
「…もう。大丈夫ですよ。こちらが旅に同行頂いた冒険者のハルさん。『炎迅』で聞いているでしょ?」
アリスが両親にハルを紹介してくれた。
「初めまして、ハルです。宜しくお願いします」
そう言ってハルは頭を下げる。
「君が炎迅様か!話は聞いているよ。父のカイムだ、よろしく。『雷神』様の事は残念だったが、君のおかげでセキチクが守られたそうだね。本当にありがとう」
「若輩です、呼び捨てで結構です、カイム様」
歳上で地位のある方に様付けされるのはやりづらくてしょうがない。
「おぉ?そうか?ならそうしようハル君」
カイムがにっこりと笑い、右手を出す。がっちりと握手をした。
「母のマリアです。娘をここまで守ってくださって、本当にありがとう」
美しい女性だ。あぁ…佇まいや、笑顔がアリスにそっくりだ。
「アリスの儀も終わりだ。おめでとう。そしてフィーダ、君も本当によくやってくれた。ありがとう」
カイムはフィーダに頭を下げる。
「そんな、カイム様、頭を上げてください!私はアリスお嬢様の騎士です。当然ですよ。それに最後までやりきれたのはアリスお嬢様の力です」
フィーダは頭を下げるカイムに慌てて懇願する。
「皆の協力があったからこそ、よ。二人とも本当にありがとう」
今度はアリスが礼を言い、頭を下げる。
マリアはそんな父娘を見てニコニコと笑っている。
「お嬢様まで!」「いやいやそんなことないよ」
フィーダとハルが狼狽する。
「儀式の成功を祝って食事だ!ハル君の分ももちろん用意させてある。楽しもうではないか!ハル君には、聞きたい事もあるしな」
あぁ、そうか…カイムさんは師匠と親交があるんだ。
いつか師匠がそんな事を言っていた。
よし、師匠の事なら、カイムさんの気が済むまで話に付き合おう。
それが師匠と最期に一緒にいた俺にできる事だから。
明日は21時です~いつもありがとうございます!




