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46話『飛蝗』




村へ戻ってきた三人





「すいません!村長さんいますか?」



アリスが尋ねると、熊に襲われていた老人が出てくる。



村に来てわかったが、襲われていた老人は村長だったらしい。



「どうかされましたか?…やはり難しいですか」



村長は困った顔で尋ねる。



戻るのが早かったので諦めたと思ったのだろうか。



「いえいえ、聞いていたより数が多くてですね。あの場所(バッタの巣)、焼いてしまっても構いませんか?もちろん森には燃え移らないようにしますので」



「やはり増えておりましたか…あそこは特に何もないので問題ないですよ。」



髭をさすりながら村長が答える。



「わかりました!もう一度行ってきます。申し訳ないんですが、今晩はお世話になると思いますのでよろしくお願いします」



アリスが頭を下げる。



「勿論です!村長の家(うち)でよければ是非。孫娘も喜びます」



「ありがとうございます!では行って参ります。危ないので誰も近寄らないようにお願いしますね。行こう!」



そう言ってアリスは踵を返し、また森へ入っていく。 



「お嬢様、焼くのですか?逃げられませんかね」



フィーダが尋ねる。



「逃げれないようにしてからね。ごめん、先に言っとくけどフィーダが一番大変よ。ハル君はたぶん大丈夫」



おっとこのパターンの時は結構頑張らないといけない奴だぞフィーダさん。



「やれると見越しての事でしょう?応えない訳にはいきませんね。詳しく聞きましょう」



フィーダさんが急にやる気になった。



逆境に燃えるタイプだよねこの人。



アリスは作戦の概要を説明する。



…ん、ちょっと待って、少し聞いたけど俺も大概だぞこの作戦…。




◇◇





問題の原っぱ(バッタの巣)に戻ってきた。作戦開始だ。




「魔身機召喚!舞え…銀翼姫(ハーグリーブ)!!」



アリスが魔身を召喚し、白銀の美しい翼の騎士が現れる。



「それじゃフィーダ、タイミングみてお願いね!ハル君は乗って」



「わかった!」


フィーダが頷き、ハルが返事をする。



銀翼姫(ハーグリーブ)が片膝をつき、水を掬うようにハルに手を差し出す。



「ハル君、しっかり掴まっててね」



そう言うと銀翼姫(ハーグリーブ)は翼を広げ、空へ舞い上がる。



(生身だとすげぇ風だな!怖ぇぇ!高い!!!)



ぐんぐん上昇し、原っぱの中央、真上へ来る。



「じゃあ下ろすから、あとは手筈通りに!へばらないでね」



アリスがウインクした…ような気がする。と、銀翼姫(ハーグリーブ)の手が開かれ、地上から遠く離れた空でハルは放たれ、もちろん落下を始める。



炎迅も飛べるが、わざわざ銀翼姫(ハーグリーブ)で飛んだのには訳がある。



炎迅で飛ぶとうるさいのだ。



銀翼姫(ハーグリーブ)の風魔法た翼による優雅な飛翔と違い、炎迅は雷鳴ゴロゴロ、炎と爆発ドーンで、『出力で無理やり浮いてる』のでいちいち音がでかいのだ。



臆病なバッタはすぐに逃げてしまうだろう。



なのでバッタを刺激せずに飛べる銀翼姫(ハーグリーブ)でないとだめなのだ。



(パラシュートなしのスカイダイビングは大概ハードだと思いますよアリスさん…)



どこをどう「大丈夫」なのかと思うが、期待されているのだ。やらない訳にもいかないだろう。



「魔身機召喚! 炎迅(エンジン)点火(イグニッション)!!」



地面へ落下しながら、空中で魔身を召喚する。



炎が上に流れてるけど大丈夫か…!?



なんとか召喚に成功したハルは、原っぱ(バッタの巣)の中央へ大きな音を立てて着陸する。



「今だ!」



フィーダが叫び、剣を地面に刺して土魔法を使う。



すると原っぱの外周をまるごと覆うように高い土の壁が現れる。




「いいぞ!やるんだ!」


フィーダがハルに叫ぶ。


土の壁が着地と同時に現れたのを確認し、炎迅(ハル)は自分を中心に炎を吹き出し続ける。




「うおぉぉおおぉぉ!!」



さらに出力を上げ、炎を広げつつ噴射し続ける。



バッタが慌てて逃げ回るが、すぐに炎に飲まれるか、離れてもフィーダの壁に邪魔されて逃げることが出来ない。



かつ、壁の上では、アリスが風を操作し、炎が外の森に燃え広がらないようにしている。



これにより外に炎が漏れず、さらに風が檻のような役割もしてバッタが飛んで逃げる事も出来ない。



どれくらいだろうか、数秒か数十秒か。



ようやくきたアリスからの合図で、炎を解除するハル。



「ふぃー…結構疲れるな…」



実際、炎を出し続けて維持するのはなかなかツライものがある。



が、一番キツかったのはフィーダだろう。



原っぱの外周を、それなりの高さ・厚さ・強度の壁を出し続けたのだから。



「フィーダさん…大丈夫ですか」



ハルがフィーダに声をかけると、肩で息をしていたフィーダが顔を上げる。



「なんの、これしき…。ともあれ、うまくいってよかった」



三人の能力を活かした見事な作戦だ。



原っぱは焼けたが、無事、バッタの魔物を一網打尽にすることができた。



1匹ずつやっていたらどれだけ時間がかかっていたことか。




「さすがだね、アリス」


「ぶい!」



ハルが声をかけると、アリスはにっこり笑ってピースサインで応えた。



「さてと、それじゃあ報告に戻りましょうか!」



陽が暮れそうなので早めに戻って報告しよう。



村のみんなを安心させてあげたいからね!



三人は村へ戻っていくのであった。









バッタって漢字で書くとかっこいいですよね。飛蝗。

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