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44話『傷跡』




あれから一週間が経った。



やはり限界はとうに超えていたようで、戻ってきたハルは倒れるように眠ってしまうと、そのまま三日間起きなかった。



起きたときには周りの人達に随分と心配されてしまった。



その間に諸々の事後処理は進んでいたようで、一週間も経つとセキチクは一応の安寧を取り戻していた。



ハルが目覚めた次の日に国葬が行われ、この国の戦死者と共に、『国を守った英雄』としてアルフレッドも弔われた。



国葬の後は、フィーダさんが随分と憔悴していたが、次の日には()()()()()立ち直っていた。気丈な人だ。



師匠とは仲が良かったのもある、心の整理にはまだ時間がかかるだろう。




それと防衛の功労者としてアリス、フィーダとハルの3人が叙勲される事となった。



断ろうとも思ったのだが、「国を守った英雄に何もしてやらない不義理なな国」と他国から思われる!との事なので、ありがたく受けとる事にした。



アリスやフィーダはその辺の苦労も分かるようで、さすがだな、と思った。


ギルドマスターから、魔身とハル自身を詳しく調べたいからここに居ないか、と言われたがアリスの護衛があるのでこちらは丁重にお断りさせていただいた。


どうやらギルドマスターは学者タイプらしく、ハルが魔身ごと魔力化した事が彼女のマッドサイエンティストな琴線に触れてしまったようだった。





特に変わった事はない。



街中にいるとしょっちゅう声をかけられて握手されたり奢ってもらえたりする。皆笑顔だ。



この笑顔を守るために師匠は命を掛けたのだろう。



その事が誇らしくあったが、やはり【こうすればよかっただろうか】【もしかしたら…】と後悔する自分もいる。



だが、終わった事だ。



後悔していても、時は戻らない。



少なくない戦死者が出たし、この国の人達も、アリスもフィーダも自分も。


忘れてはならない。心に刻み込んで、だが乗り越えて生きていくしかないのだ。


勝手かもしれないが、きっと師匠もそれを望んでいるだろうから。






◇◇



各国からの救援の冒険者(バスター)達も国へ帰る事になった。


ロカビリーさんは「ハル君とはまた会うと思うよ!それじゃあ!」と言って一足先にファンテジア王国へ帰って行った。



さて自分達もそろそろ出発しようか、となった頃にアリスが寝込んでしまった。




考えてみれば(ドラゴン)の毒で倒れ、起き抜けに戦い続け、戦争が終われば寝続けるハルの世話にフィーダのケア、さらに親切で国の事まで手伝っていたのだから疲れが溜まっていたのだろう。申し訳ない。



数日後、アリスの体調も回復したため、セキチクを出発することになった。



わざわざ総出で見送りに来てくれたようだ。



「本当に世話になった。また来たときは遠慮なく訪ねてくれ」



とはセキチク国王。話の分かるいい人だ。



「今後は色々大変だろうが、しっかりな。ありがとう英雄達よ」



「『炎迅』は時間ができたらうちに来ること!体の隅々まで調べたいから」



騎士団長とギルドマスターとも、笑顔で握手する。




「ありがとうございます!それでは!」



皆に手を振り、笑顔で別れる。




こうしてセキチクでの長い滞在は終わりを告げた。




大きな別れと、一つの思いを胸に秘めて。




さぁ、自分達の旅の再開だ。







◇◇





「分かってると思うがまずはサウスワークだ。そこからは北西へ上がり、エイギスへ向かう」




フィーダ先生の説明も随分と久しぶりに感じる。



「「はーい」」返事をすると、アリスと声が揃った。



と、言っていると、犬の魔物の群れが現れた。



一匹一匹はそうでもないが、群れで狩りを行うため厄介だ。



三人とも馬車から飛び降りる。



魔犬が囲むように広がった為、3人で背を守りあうように戦いが始まる。





フィーダは盾で受け、剣で斬り、魔法で追撃する。



実に安定した、堅実な戦いで全く不安要素がない。



アリスは魔法で牽制しつつ槍、双剣など状況に応じて武器を使い分けて翻弄している。



風魔法の速さもあって、相手の攻撃をかすらせる事すらない。



ハルは炎の剣で飛びかかった来た魔犬を真っ二つにする。



さらに、離れた場所にいる相手に左手を向けると、籠手が青白く光り、雷撃が打ち出される。



直撃した魔犬は鳴き声と共に動かなくなる。



ハルは左腕の籠手を見て物思いにふける。



三人は危なげもなく、魔犬の撃退に成功した。



旅が始まって随分と経った。



始めに比べれば三人ともかなり強くなっているのは間違いない。





その日の夜




焚き火を囲み、夕食だ。



今日はアリス特製のスープだ。体が暖まるし栄養もある。




「おいしいよ、アリス」



ほっとする味だ。大きめの野菜が嬉しい。



「ありがと。おかわりあるよ」



「いいの?やった」



ハルはウキウキでもう一杯スープを注ぐ。



「そう言えばハル、やはり雷の魔法も使えるのだな」



フィーダがパンをかじりながらハルに聞く。



普通は一つの属性しか使えないものだが、まぁハルならありえるか、くらいにフィーダも考えていた。慣れたものである。



アルフレッドの機心は結局、左腕の籠手と同化したようで、ただの鋼の籠手だったのだが今は一回り大きくなり、色も素材も意匠も変わっている。



色は蒼紫で、竜の鱗のように強硬だ。魔力を流すと帯電しているかのように雷が走る。



実際に、アルフレッドが使っていた魔法のように、雷を落とす事もできた。が、



「はい、問題なく。ただ、魔身じゃないと威力は高くできないのと、すり抜けるやつもできないみたいです」



ギルドマスターは魔身ごと「魔力化」していると言っていた。実体ではなく、炎や雷のようなエネルギー体。所謂、プラズマ状態に近いらしい。



そしてそれは(ドラゴン)の能力でもあると。



戦った(ドラゴン)は使わなかったが、暴走状態だったので使えなかったのだろうか。使われていたら勝ち目はなかっただろう。



「ギルドマスターが(プラズマ)化と名付けていたやつか」



フィーダはセキチクのギルドマスターの考察と説明を思い出す。



「逆に言えば魔身機ならアレできるんだね…アルフレッド様みたいだねハル君」



「威力が高すぎて使いどころが限られるけどね」



「生身の状態では使えないんだ、これまで通り、不意討ちには注意しよう」



フィーダが的確に言う。



そう、師匠にも散々言われていたが、生身の状態で一発もらえば終わりなのだ。



強大な力を手に入れたが、驕ることなく、注意しなければならない。



その夜は今後の戦い方や方針について3人で話し合った。



これからの事を、踏み出さねばならない。





明日は21時に更新いたします!是非評価などいただけると嬉しいです!

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