↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/157

42話『言葉なき凱旋』





あれ以来、帝国軍の襲撃は止み、束の間の平穏が訪れている。



だが最後の兵士串刺し(なぶり殺し)にはかなりこたえたようで、全員の疲労が一気に出てしまっている。士気も低い。



「最低最悪だが効果は抜群ですね。あれでこちらの心が折れてしまった。次は防げないでしょう」



「拷問官やってただけあって心を折ることだけは上手いわね…」



フィーダとアリスが話し合っていると、



「主力部隊が帰ってきたぞ!無事だ!」



飛び込んできた朗報に、場が一気に明るくなる。主力部隊、強者達が帰ってきたのだ!



(…?『無事だ!』?竜は…?)



言葉の違和感にフィーダとアリスは顔を見合わせると、二人とも一気に走り出す。



騎士団長を見かけ、詰め寄る二人。



「よく戻られた!どうなったんだ!?」

「アルフレッド様とハル様は!?」



問いかけると、騎士団長は馬を降り、敬礼をする。



(ドラゴン)は『雷神』と『炎迅』が二人で撃破されました。但し、『雷神』は帰らぬ人となってしまった。『炎迅』は命に別状はないが重症だ、しばらくは目を覚まさんだろう」



「っ!!」



二人は目を見開き、運ばれた救急所へ走る。






目を瞑り、動かないアルフレッド。



二度と、彼の目が開かれる事はない。



現実を目の当たりにし、一気に実感が沸いてくる。



「アルフレッド様…」



アリスは涙を貯めてうつむく。



「アルフレッド…ごめんなさい…助けに行けなくて…こんなになるまで頑張ったのね…せめて、せめて隣に居たかった」



フィーダはアルフレッドの横で膝を付き、頬を撫でる。



赤子に触れるように、どこまでも優しく、名残惜しそうに。



一筋、フィーダの頬を涙が伝う。アリスは震えるフィーダを抱き締める。



「疲れたね、おやすみ。アル…」



小さく、泡沫のように。消え入るように呟いた。



言葉に込められていた想いは…











しばらくすると、治療の終わったハルが奥から運ばれてきた。



「ハル…」「ハル君!」



二人に気付いた回復術師が口を開く。



「ぶっ通しで戦い続けていたのだろう。怪我よりも、体力、精神、魔力的な衰弱がひどい。そのせいで回復魔法も効きが良くない。命に別状はないがとにかく休ませるしかない。数日は目を覚まさないと思う」



そう言って回復術師は出ていった。次の怪我人を治療しに行ったのだろう。



「ハル君…ボロボロだね…ありがとう」



アリスはハルの手を握る。



「ハル…お前だけでも無事でよかった…」



フィーダはうっすらと目を細めて言う。二人は必死で戦ったのだろう。



たった二人で、神にも近い(ドラゴン)を倒したのだから。



相手を考えれば、ハルが生きている事だけでも奇跡に近い。




「こんな時にすいません、ギルドマスターがお探しでして…」



先ほど部屋に入ってきたギルド職員の女性が声をかける。声をかけるのわ待っていてくれたようだ。

 


「すまない、行こう」「すぐに参ります」



二人はしっかりと返事をして、部屋を出る。



仲間が戦い抜いた。次は、私達の番だ。






◇◇




セキチク北砦




「急に呼んでごめんなさい。貴女達は仲間と共に脱出して、国へ帰りなさい」



ギルドマスターがアリスとフィーダに告げる。



「私たちも戦います!ここで逃げるなんて!」


「主力部隊が無傷で戻ったのは大きい。(ドラゴン)を敵軍にぶつける事は出来なくなったが、時間が経てば各国からの救援も来る。防衛に回れば可能性はある!」



アリスとフィーダがそれぞれ反論する。



(ドラゴン)が片付いたのは本当に大きいし、『雷神』には感謝してもしきれん。だが可能性があるにしても分が悪すぎる。一か八かの賭けに、これ以上君達を巻き込む訳にはいかない」



騎士団長は諭すように言った。



実際の所、主力軍が無傷で戻ったのはかなり大きい。



(ドラゴン)の件で他国に救援要請を出していたのが幸いして、時間が経てば他国から冒険者や騎士団が送り込まれて来るだろう。



帝国は全ての国家に対して侵略行動を取っているため、対:帝国同盟があり、どの国も協力は惜しまないだろう。



もしかしたら、守りきる事ができるかもしれない。万にひとつの可能性。




もちろんこの戦場にいる限り、何があってもおかしくない。



一瞬の油断から全てが崩壊することもある。



(ドラゴン)の件でも、こらまでの防衛戦でも二人は十分すぎる以上に働いてくれた。



だからこそ、安全な所に避難して欲しい。



それがセキチク王の考えであり、重臣達やギルドマスター、騎士団長も満場一致で賛成したのだ。




「お心遣い、感謝する。だが乗りかかった船だ、降りるつもりはない。それに、『雷神』が守った場所を帝国なんぞにくれてやる訳にはいかない。彼の誇りと名誉の為に。それが彼への手向けだと思う」



フィーダは、ギルドマスターと騎士団長をまっすぐに見て言葉を紡ぐ。



彼女の目に、迷いはない。



ハルは消耗もあって、数日は動かす事も難しいだろうし、何よりアルフレッドの心を踏みにじられるような事は許せない。



その意思の強さに、説得は難しいと判断したギルドマスターと騎士団長は、お互いの顔を見た肩をすくめ、やれやれと頭を振ると、佇まいを但して頭を下げる。



「ご助力に感謝します。ならば貴女方お二人の身はセキチク騎士団が命に替えてもお守りさせて頂きます」



騎士団長が頭を下げる。




一か八か。分の悪い戦いがまた、始まる。








明日は朝の10時に更新します!必見です( ・`д・´)!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。