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41話『思惑』





「バカな……なんだこれは……これが…戦闘の跡だと言うのか…」



騎士団長の口から声が漏れる。



『炎迅』より指定された場所に着いたセキチクの混合主力軍。



『雷神』と『炎迅』を援護し、撤退・後退する。そしてセキチクでもって全戦力で当たる。



その為に二人と(ドラゴン)を探しに来たのだが、森が、山が、地面が、どこもかしこも破壊されているのだ。



まるで何ヵ月も戦争をしていたかのような荒廃ぶりに、軍の全員が呆気に取られている。



一頭の(ドラゴン)がたった1日半でこんな惨状を引き起こすのか。



我々はこれから、()()に挑むと言うのか。



破壊の跡を辿り、進んでいく。



「全員、戦闘体制だ。全方位に注意しろ。ふいを打たれたら全員死ぬぞ」



騎士団長が改めて言う。全員、分かってはいても、言葉に出されると嫌でも意識してしまう。



「おい!あそこ!」



冒険者(バスター)の一人が指を指すと、先には(ドラゴン)…の翼が見える。竜が…倒れている…?



全員が駆け足で近づくと、状況が見えてくる。



横たわる(ドラゴン)。翼の大部分や胴体の一部が消失しており、全く動きがない。


(ドラゴン)の瞳は暗く光がない。



「……まさか……倒した……のか?たった二人で?」



誰かが小さく呟く。



誰もが思ったことだ。…だが、それ以外に、考えられない。



「倒したんだ!!さすが『雷神』だ!!!」



大きな歓声が上がる。



これまでの道程で見てきたあの途方もない破壊の爪痕。そんな事を引き起こす相手()をも上回った『雷神』。


ランクSSとは、これほどのものなのか。



伝説の一幕に立ち会った興奮と、捨てるつもりであったはずの命が助かった喜び。



「おい!人が倒れてるぞ!」



近くで倒れていた二人の人物。



「『炎迅』だ。来る前にギルドで見たから間違いねぇ」


「ってことは隣のが『雷神』か」


「怪我がひどい、治療を!連れて帰るぞ!馬車だ!」



ギルドでハルが飛び込んで来るのを見ていた冒険者がハルを見つけ、抱き起こす。



他の者がアルフレッドに駆け寄り、抱き起こす。


と、抱き起こした冒険者が何かに気付く。



「……『雷神』は間に合わなかったようだ」



その一言で雰囲気が一気に変わる。



「…うそだろ?『雷神』だぞ?」



「相討ちか…自分の命を犠牲に…。」



誰かが涙をため、言葉に詰まる。



「二人を馬車に。丁重にな。…とにかく国へ戻ろう。『雷神』の事、『炎迅』の治療、(ドラゴン)の体も、落ち着いたらこの辺りも調べなければならない。」



騎士団長が言うと、皆が動き出す。



重苦しい雰囲気のまま馬車は走り出した。馬の(いなな)きがやけに大きく森に響いたのだった。








◇◇







セキチク北砦 





あれから二度、敵軍の襲撃があった。



一回目と同じように、僅かに戦闘をするとすぐに撤退していく。



だが、少しずつ味方の被害は多くなってきている。



根本的に兵一人一人の練度が違いすぎる。



帝国側が本気になれば、獣人歩兵だけでもセキチクを攻め落とす事が可能な程、戦力差があるのだ。



そしてまた、襲撃が来る。




「魔身機召喚…砂の騎士(ジョゼフ)!」



フィーダはできるだけ手練れを狙って倒していく。



が、数の差、一人一人の強さの差は一人では覆す事はできず、軍として見れば少しずつ押されていく。



「くそ…まずいな。被害が増えてきた」



フィーダは唇を噛む。と、



「フィーダ!私も!魔身機召喚!舞え…銀翼姫(ハーグリーブ)!」



被害が拡大して、いつの間にかアリスが近くまで来ていたらしい。魔身を召喚すると、風のように天を舞い、次々と敵を撃破していく。



フィーダの砂の騎士(ジョゼフ)のところまで来たハーグリーブ(アリスの魔身)は、フィーダと背中合わせにして剣を構える。



「お嬢様…すいません」



そう言いながらフィーダは目の前の魔身を土魔法で殴り飛ばす。



「いいから!少しでも被害を軽くしてとにかく時間をね」



アリスは銀翼姫(ハーグリーブ)の盾で攻撃をいなし、剣を突き入れる。



二人は抜群のコンビネーションで次々と魔身を討ち取り、なんとか防衛線の後退を防ぐ。





「私もいるぞ!」



ロカビリーの魔身(エルヴィ)が矢を放つと、大きな音と共に獣人達が次々と倒れていく。



「耳の良い君たちには効果抜群のようだな!」



冒険者(バスター)達も生き残るために必死で戦っていた。






「!あの魔身の家紋は…」



ディアセイント家の物だ。間違いない。



ファンテジア王国を守る憎き憎きディアセイント家だ。あそこには何度も煮え湯を飲まされている。



アリスの魔身、その盾の家紋を見て、ゼノ・グランツベルは怒りと共に喜びにうちひしがれる。



「『砂漠の薔薇(フィーダ)』の魔身がいたからもしや、と思ったが本当にいるとはな。撤退させろ!但し、何人か捕虜を連れてこさせろ」



ゼノ・グランツベルは血走った目で部下に指示を出す。



あぁ…早くあの二人が欲しい!憎いカイム(アリスの父)の分も(アリス)を徹底的に痛め付けてやろう!殺してくれと懇願するまで壊し続けよう!カイム(アリスの父)の前で殺すのもいいな…あぁ楽しみだ。辛抱たまらん!!






敵軍が一斉に引いていく。



が、怪我をした兵が連れ去られるのが見える。



「!?しまった…何をするつもりだ!?」

「まずい…アイツの事だからマトモじゃないのは間違いない…」



フィーダとアリスは撤退しながら嫌な予感がしていた。





少しすると、捕虜になった兵士達が長い棒にくくりつけられ、高く掲げられる。



突然、敵軍の兵士が一定のリズムで盾を剣で叩く。



敵軍の大勢が一度に叩くため、かなりの音の大きさだ。



バン、バン、バン、バン、バン…



音が止むと、槍が兵士達の腹に差し込まれる。



また、盾を叩く音が始まる。



「…おいまさか…」「やめろ!やめてくれ!」「悪魔だ!」



盾を叩く音がなり止むと、また一度、槍が突き刺される。



死なないように、痛みを与えるように、大事な部分には刺さず、あえて生かす。



刺し終わると、また盾が叩かれる。



「…ひどい…ひどすぎる…」



アリスは涙を貯めて目を反らす。



「………」



フィーダは怒りで何も言えず、ただただ拳を握りしめる。



掲げられた兵士達が動かなくなるまで、死のカウントダウンは続けられた。










相手の兵士な目の前で繰り広げられる、おぞましい公開殺戮。



ゼノ・グランツベルはそれを満面の笑みで見ている。



「いやぁ…愉快愉快、本島は近くで見て自分で刺したいものだが、さすがに今は自重しよう。うまく捕まえれば帰ってからのお楽しみもあるしな」


したなめずりをしながらフィーダとアリスを思う。



と、



「閣下、間者からの情報でセキチクの狙いが分かりました。(ドラゴン)は現在『雷神』が戦っているようで、(ドラゴン)をここまで誘き寄せ、我が軍にぶつけるのが狙いのようです」



副官が告げると、ゼノ・グランツベルの表情が一気に変わる。



「なんと、『雷神』がいるのか!ちいとばかし面倒じゃが、さすがに(ドラゴン)は倒せんと見える。…だが…ククク…(ドラゴン)を我が軍にぶつける?はっはっはっは!阿呆じゃな!(ドラゴン)の制御魔道具は私が持っている!連れてきてくれたら戦力が増えるだけなのに!!!」



腹の底から笑いが止まらない。



自分達を苦しめている(ドラゴン)が暴れているのは帝国のせいなのも知らず、あまつさえわざわざ連れてきてくれると言うのだ!



こんなに愉快な事があるだろうか。



なるほど、その為に奴らは必死になって時間稼ぎをしていた訳だ。



あぁ、こんなにうまくいっていいのだろうか。



したり顔で奴らが連れてきた(ドラゴン)を、目の前で制御してやろう。



我々にぶつけるために誘導してきた(ドラゴン)が自分達だけを襲ったらどんな顔をするだろうか!



どんな絶望の表情を見せてくれるだろうか!楽しみだ!とても楽しみだ!



「よし、攻めるのは一旦停止、少し間を空ける。今のうちに飯を食わせて装備の点検だ。なに、すぐにおもしろい物が見れるぞ!」



ゼノ・グランツベルは意気揚々と指示をだす。



もうそろそろ、主力部隊が(ドラゴン)を連れてセキチクヘ戻ってくる頃だ。






明日は21時に投稿します!楽しいです!本当にありがとうございます(^^ゞ

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