37話『王者への挑戦』
竜が2体の魔身機に向かって吼える。
「師匠!戦い方は!」
ハルがそう言うと、炎迅は剣を構える。
「やることはいつもと一緒だ」
竜が口を開く。強力な魔力の奔流と煌めきが集まる
「っと!じゃあ楽勝っすね!」
ブレスを回避しながら炎迅は距離を詰める。
「その余裕が続くといいけどな!合わせるぞ!」
魔導王が飛翔し、両腕に蒼白い光が迸る。
「勇壮なる王の二重奏!!」
天から雷光が走り、轟音と共に降り注ぐ。一発一発、被弾する度に体が沈む竜。効いているようだ。
隙間を縫って炎迅が近づき、剣が炎を吹いて巨大化する。
雷撃が終わり、竜が顔を上げようとした瞬間、目の前には既に炎迅が居る。
「はぁっ!」
炎迅の巨大な炎の剣が振り下ろされる。
が、強固な鱗に阻止され、切る事は叶わず大きな爆発を起こす。
「やったか…?…ってそんな訳ないわな」
アルフレッドが呟く。
煙を払うように竜は頭を振る。
竜と目が合ったような、目が光ったような気がした。
次の瞬間、竜は高く飛び、空から見下ろす形になると、空中で一度羽ばたき、そこから滑空するように突撃してきた。
羽ばたいた時に発生した竜巻が炎迅に迫るが、魔導王が同じ様に竜巻を産みだし、相殺する。
「それは何度も見たからなぁっ!」
竜は水刃をいくつも飛ばしつつ炎迅に近付き、爪で引き裂こうと襲いかかる。
炎迅は水刃を切り払って凌ぎ、爪の一撃をなんとか炎の大剣で受ける。が、さすがにサイズも力も違いすぎる。炎迅の足元がひび割れ、埋まるように沈んでしまう。
「させるかよ」
魔導王は両手を地面に着くと、魔力は地面に広がり、魔身機よりも巨大な馬が2頭現れる。2頭はくるりと向きを変えると、竜の横っ腹に強力な後ろ蹴りを叩き込む。
その間になんとか離脱する炎迅。
「ありがとうございます!師匠、飛ばしてください!」
「アレか。わかった、いくぞ」
魔導王は鋼の槍をいくつも射出するが、ことごとく魔法や翼で打ち払われる。
炎迅はその間に少し距離を取ると、魔導王の用意した石段を登り、天辺がそこからさらに延びるように打ち出される。
しかも風魔法で加速付きだ。
かなりの高さまで打ち上げられた炎迅はそこから自由落下を始める。
下を見ると、魔導王は空気の塊を叩きつけるように連続で放っている。
が、翼で払い、魔法で払い。ほとんど見えない空気の衝撃を竜は全て打ち落としている。
「行きます!!」
炎迅は炎を纏い一直線に落ちてくる。竜の頭を目掛けて。
竜はブレスを吐こうとしたのか、口を開けようとしている。
「しゃらくせぇ!」
魔導王が地面に拳を突き立てると、地面から巨大な腕が生え、下から上へ、竜の顎を打ち抜くように殴り付ける。
と、同時に上空から、竜の頭のてっぺんへ炎迅が降り注ぐように蹴りを叩き込む。
上下同時攻撃で衝撃の逃げ場がなくモロに威力が伝わる。
さすがに効いたのか、何かを吐き出すような仕種をし、竜の頭がフラフラと揺れ、その巨体が大きな音を立て地面に崩れ落ちる。
「どうだ!?」「舌でも噛んだか?」
ハルとアルフレッドが追撃をしようとした瞬間
地を揺るがすような地響きが起こる。
大地はひび割れ、辺りの空気が一気に変わっていく。
焼けつくようなピリピリとした魔力の強ばりが魔身の中まで伝わってくる。
竜が起き上がり、翼をはためかせ、天に向かって吼える。凄まじい轟音に、周りの木々が倒れていく。
すると、竜の表皮の色が変わっていく。
赤茶けていた色が、どす黒い紫に変わると同時に、体表からオーラのようなものが沸き上がる。
「ハイパー化!?激情態!?なんかオーラが見えるんですけど師匠!」
「目に見える程濃厚な魔力か…ようやく本気になったかな。ハル、死ぬなよ」
アルフレッドが言うや否や、竜が翼をはためかせると、いくつもの風の刃が放たれる。
一つ一つが魔身機を超える大きさだ。
ハルは炎の大剣で一つ目の風の刃を反らすように受けるが、とてつもない重さ、威力に、慌てて回避に変更する。
2機はなんとか回避するが、すかさず竜は上空より極太のブレスを吐く。
「離れろっ!急げ!!!」
アルフレッドが言い、慌てて二機は着弾点より離れる。
破壊の光と激しい音が辺りを包み、放射状に広がっていく。
「…いってぇな…クソ…ハル、生きてるか?」
直撃は避けたが、爆発の余波だけで吹き飛ばされ、魔身も傷だらけになっている。
「…なんとか…うわ!」
同じくボロボロの魔身で立ち上がってハルは、目に入った光景に絶句する。
破壊の光による巨大なクレーターと、さらにその外側何百メートルが、余波だけで木がなぎ倒されていたのだ。
見失ったのだろうか、竜は先ほどの、ハルが反らす事さえ困難だった巨大な風の刃をそこかしこに撃ち続けている。
「師匠…桁違いっすね…」
あまりの威力と魔力量に、ハルは師匠と獣神が言っていた意味がようやく分かったのだ。
「泣き言言ってんな!あんなもん野放しにする訳にいかないだろ?行くぞ!」
「…師匠もすげぇな。よし!行きます!」
足手まといになるのだけはダメだ。
師匠と共に戦う為にここに来たのだから。
ハルは気を引き締め直し、再び戦いに身を投じる。
犠牲者を出さない為に。
師匠と仲間を信じて。
◇◇
ハルがアルフレッドと合流した頃 セキチクにて
「騎士団長!編成が終了し、装備等の準備も万端です!」
騎士鎧を来た兵士が騎士団長へ報告を行う。
ハルがセキチクを出てから約半日、冒険者ギルドとの兼ね合いも終わり、冒険者と騎士団の混合軍が組まれた。
「よし、すぐに出発する!『雷神』の撤退を援護し、周辺国からの救援部隊が来るまでの時間稼ぎを行う。行くぞ!」
騎士団長が活を入れると、混合軍は一斉に声を上げる。
騎士団と冒険者、所属こそ違うがこの国を守る、その気持ちは一つだ。
彼らは大切な者を守るため、出撃する。
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