36話『危機』
セキチク王城にて
ハルはギルドマスターの少女(?)と共に王城内を急ぐ。
見かける人達もバタバタと走り回り、騒がしい。
話が通してあるためだろう、ギルドマスターは躊躇なく扉を開け、奥へ奥へと進んでいく。
(…たしかこの先が…)
先日訪れた際に来た場所だ。
一際大きな扉を開けると、ギルドマスターは国王へ声をかける。
国の重鎮らしき人物も何人か同席するようだ。
「遅くなりました、『炎迅』殿をお連れしました」
ギルドマスターと共に跪き、ハルも礼をする。
「まさかこんなに早く再開する事になるとはね。しかも凶報と来たものだ。とにかく詳しく聞かせてくれ」
王の顔にも焦りが見える。
「知識がないもので、非礼があるやもしれませんがお許し下さい。」
王は構わない、と表情と身ぶりで伝え、ハルの言葉を促す。
「セキチクより全速力の馬車で半日と少しの場所で『竜』に遭遇、夜半過ぎの為先手を取られ、パーティメンバーの二人が負傷致しました。私は二人を連れて撤退、師である『雷神』が1人で残り、時間稼ぎをしております」
ハルはあるがままをできるだけ簡潔に伝える。
「竜だと!?」「本当なのか…」
周りの人間が狼狽している。
「…『雷神』でも倒せないのか」
王はハルに問うが、答えは分かっているのだろう。
「1人では難しい、と。装備を万全にした騎士団と冒険者を集めて全員でかかる必要があると言っておりました。抜かれれば、国が軽く三つは滅ぶとも」
ハルが言い終わるや否や、重鎮だろう初老の男が疑問を口に出す。
「なぜ竜が人間を襲う?魔獣である飛竜等であればまだしも、上位種である竜ならば我々よりも知能が高い筈だ。何か理由があるのではないのか?」
もっともな質問である。
飛竜や蛟竜などの、竜種でも下位・中位に当たる物は魔獣の域を出ないが、上位種である竜は魔獣とは格が違う。
人間よりも遥かに高度な知能を持ち、無駄な争いはしない。
否、圧倒的すぎて争いにすらならないからだ。
「長い時間見ていた訳ではないですが、少なくとも私が見た竜に知性は感じられませんでした」
少ししか見ていないが、とにかく暴れるばかりでとても対話などできる状態ではなかったように思う。
よく考えればたしかに、違和感がある話だ。
「話は分かった。騎士団長、ギルドマスター、現状うてる最善手は?」
王はギルドマスターとセキチク騎士団長に尋ねる。
「まずは周辺国への魔獣非常事態宣言と、住民避難でしょう」
ギルドマスターは答える。魔獣非常事態宣言は、強大な魔獣が現れ国家レベルでの危機に陥った場合に出され、避難民の受け入れや戦力の借り受け等を行う為のものだ。
被害国が滅びるような事があれば次は周辺国へ被害が広がる恐れが有るため、国の垣根を超えた協力を行うのだ。
「それと防衛・撃退用の戦力の編成が急務ですな。具体的には有用な固有魔法持ち全員と、Bランク以上を召集しましょう。まずは他国からの戦力が揃うまでもたせなければなりません。救いは『雷神』様がいる事ですな。彼がいなければ絶対に勝ち目のない話だった。彼を中心にして考える他ないでしょう」
続けて騎士団長が答える。
「編成にどれくらいかかる?」
「冒険者との兼ね合いがありますからな…半日…と言いたい所ですがそれ以下でなんとかしましょう」
騎士団長はギルドマスターと顔を見合わせ、眉間にシワを寄せながら言った。
「素晴らしい答えだ。いつもすまないな。では各々方、よろしく頼む。おかしな竜に人間の底力を見せてやろう」
王が発破をかけると、全員が勢いよく返事をし、仕事にとりかかる。
◇
城を出たところで、ギルドマスターから声をかけられる。
「炎迅…ハル君はどうするんだい?」
「すぐに師匠の所に戻ります。力になれるか分かりませんが、ここで軍の編成が終わるまで待ってるわけにもいきませんので」
これは決めていた事だ。
「…わかった。君があっちに着くまで半日、おそらく編成軍が着くのは早くてもさらに半日後になる。とにかく無理はしないで。『雷神』が、貴方達が倒れたら勝ち目はない。撃退なんて夢のまた夢になってしまうわ」
ギルドマスターは諭すように、懇願するように言う。
「…わかりました。ならばこそ、早く行かないと。馬を一頭お借りできますか」
ハルの目には決意が見える。
装備を整え、ギルドより借りた馬に飛び乗ったハルは風をきって走る。
一刻も早く戦場へ戻るために。
◇◇◇
半日と少し経ち、なんとか戻ってくる事ができた。
馬を降りハルが見た光景。まるで天空より何百もの隕石でも降ってきたかのような、凄惨たる戦いの爪痕が森に刻まれており、その爪痕は見渡す限りどこまでも続いている。
(これが戦闘跡!?どこまで続いているんだ…)
ハルはアルフレッドを探して戦いの爪痕の残る方へ進んでいく。
と、近くで大きな炎の柱が上がる。
「あそこか!」
ハルが駆けつけると、丁度森から出てきたアルフレッドと出くわす。
「師匠!無事だったんですね!」
よかった、生きていた。いや、我が師匠だ。これくらい当然だ!
「ハルか!やっと戻ってきたか。二人は大丈夫か?」
アルフレッドはハルに笑顔で聞く。よくみるとアルフレッドはそこかしこがボロボロだ。
「二人とも大丈夫です!あと半日で軍が来ますんでそれまで粘って、全軍で叩きましょう!との事です」
「良かった、すぐに動いてくれたんだな。こないだ恩を売って顔を覚えてもらってて良かったな。よし。んじゃ、やるか。」
「はい!しかし師匠、なぜ生身で?大丈夫なんですか?まさか召喚できないとか!?」
ふと気になった事を聞いてみる。
「休憩してたんだよ!ずっと座りっぱなしだと疲れるからな。あ、このまま倒しちまうのも面白いな」
アルフレッドは笑う。
「えぇ…竜を前にしてそんなんできるの師匠くらいですよ…さすがに倒すのは厳しくないっすか」
「俺とお前ならやれる!行くぞ!」
実にこの人らしい。竜がこちらに気付いたようで吼えている。
行くぞ!!
「魔身機召喚!…おっ始めるぞ…魔導王!!」
「魔身機召喚! 炎迅…点火!!」
アルフレッドの耳飾りとハルのブレスレットが眩く輝き、魔身を形作っていく。
光が溢れ、黒いボディに金の装飾が輝く魔導王と白のボディに炎のような赤の装飾が映える炎迅が並び立つ。
威嚇だろうか、一際大きい咆哮が二人に向けられるが、今の二人は怯む事はない。
「「かかってこい!!」」
竜戦、第2ラウンド。
戦いの火蓋が切って落とされた。
是非ブクマお願いします!
何時頃がよく見てもらえるんでしょうかねぇ
明日は20時に更新しますよ( ゜д゜ )!




