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32話『朝』




目覚めると、ベッドであり、宿屋の一室だった。



もうすっかり空は白んでいる。



「お、起きたか」



ハルが起きたことにアルフレッドが気付いたようだ。



「大丈夫か?夜中に風呂でぶっ倒れたって宿屋の主人が運んできてくれたんだぞ。いくら風呂が好きでも長湯しすぎだ」



「おはようございます。はぁ…昨日…?」



なんだっけ…昨日は…露天で…アリスに!!



起き抜けの頭で昨晩を振り返ると、とんでもない事を思い出した。



「うわぁぁぁああ!!言った!?言っちゃった!?どっちだ!?」



突然大きな声をあげたハルに驚いたのか、アルフレッドの体が跳ねる。



「…お前マジで大丈夫か?頭でも打ったか」



怪訝な顔でアルフレッドが尋ねる。



(覚えてないのはまずい…最後まで言ったのか!?アリスはなんて言った!?たしかめないと…)



「…行ってきます」



突然立ち上がり、着替えるハル。



「朝飯か?なら俺も行くぞ。…マジで大丈夫かお前…」



(なんて聞くべきか…言ったけど覚えてません、とか最低だよな…)



着替え終わったハルとアルフレッドは部屋を出る。



ハルの目には決意と覚悟に満ちていた。




◇◇




食堂へ下りると、アリスとフィーダは先に来ていたようで朝食を始めていた。



「二人も起きてきたか。おはよう」



アルフレッドとハルに気付いたフィーダが声をかける。



「おはよ~」「おはようございます、フィーダさん」



アルフレッドとハルはフィーダに返事をする。



「おはよう、ア…リ…ス」



アリスを一目見ただけで言葉に詰まってしまった。どうしても昨日の事を思い出してしまう。



「お、おはよう…ハ、ハルくん」



アリスも顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。



そのまま二人とも顔を赤くして黙り混んでしまった。



(む、無理だ…昨日の事を聞くどころか、顔を見る事すらできない…)







飯食いに下りてきたらハルとアリスが二人して黙り込んじまった。



しかも耳まで真っ赤…。



これはアレだな、風呂でなんかあったな。



この様子だとほんのちょっぴり進展したか?いやー若いねぇ…



二人の雰囲気で察したアルフレッドはニヤニヤが止まらない。



またおもしろくなりそうだな。がんばれ若人~




◇◇





その後、なんとか再起動した二人はロボットのような動きで朝食を食べていた。



その日は組手をしたり魔術の練習をしたり、帰り道の物資補給の為の買い物へ行ったりしていた。



フィーダ、アリスと買い物中、荷物が思ったよりも増えたので一度馬車に積みに行くことになり、アリスと二人きりになった。




大分時間が経ったためか、なんとか話すことはできるようになっている。


聞くなら今しかない!



「ア、アリス。昨日の事なんだけど」



さてなんと聞いたらいいだろうか。



「俺、あのー、どこまで…」



と、言い淀んでいると、アリスが口を開く。



「ふふっ、ハルくん。私、とっっても嬉しかったよ」



花が咲いたような笑顔でアリスは言い、小走りに2、3歩前へ出る。



!?やっぱり最後まで言ったのか!?



「だから、今度はちゃんと最後まで聞かせてね。返事はそれまでお預け」



振り返り、少し頬を染めた彼女は、はにかんだ笑顔を見せる。



そして、スキップで石畳の通りを進んでいく。高揚した気分を現すように、リズミカルにふわりふわりと髪が揺れていた。



「…あぁ…がんばるよ」



彼女に見惚れたハルは立ち尽くしてそう言うのが精一杯であった。





◇◇





次の日、ドルフから連絡があり、物が完成したそうだ。



早い、と思ったが、ある程度は作ってあったらしい。



そこに採ってきた魔鉱石と、魔法の刻印なんかをアリス用に調整してもろもろバランス取ったら完成だそうな。



結局なんなんだろう?武器なのか?機心なのか?



今回は四人全員でドルフの店へ向かう。




扉を入ると、デボラが出迎える。



「アリスお嬢様!そろそろ来る頃だと思ってたよ。そっちが護衛のお二人だね!あらま二人とも若いねぇ。私はデボラ、よろしくね」



デボラはアルフレッドとハルを見て言った。話は聞いているらしい。



「ハルです、よろしくお願いします」「アルフレッドだ。よろしく」



「立ち話もなんだから入りましょう」



そう言ってデボラは奥へ入っていく。




奥ではドルフが待っていた。



「よく来たな。あんたがもう一人のメンバーか。ドルフだ、よろしく」



ドルフは初めて見るアルフレッドに挨拶をする。



「アルフレッドだ。よろしく」



アルフレッドも頭を下げる。



「さてアリスお嬢様、完成したのがこれだ。これを無事持ち帰ればしきたりの完遂となる。」



そう言ってドルフが取り出したのは、手のひら程の大きさのエンブレムレリーフだった。



「これは…ディアセイント家の家紋…」



レリーフを見てアリスが答える。



「もちろんそれだけじゃねぇ。これは魔道具だ。お嬢様、これをもって魔力を流してみてくれ。起こすだけだからほんの少しで大丈夫だ」



そう言ってドルフはアリスにレリーフを手渡す。



アリスは立ち上がり、レリーフを持つ。一瞬光ったと思うと、アリスの左腕にはディアセイント家のエンブレムの入った盾が握られていた。



さらに盾の上部にある握りを掴むと、するりと剣が抜かれた。



盾と共に白銀で、荘厳な装飾でありながら、華美すぎず使いやすそうな片手剣だ。



…アリスの美貌もあって、天使のような、まるで戦乙女(ワルキューレ)でも見ているような気分になる。



「すごい…何年も持ったみたいにしっくりくる…」



「美しい…!しかしさらに!それだけじゃねぇんですよ!もう一度魔力を!」


ドルフは興奮ぎみに叫ぶように言う。



すると、一瞬の光の後、二振りの小剣に形が変わる。



「双剣になった!!!っすっげぇ!!」



興奮したハルが思わず声を上げる。



「これはすげぇな…」「状況に応じて使い分けるのか…便利だな」



アルフレッドとフィーダも感嘆の声を上げる。



「6年の歳月と財を湯水のように注ぎ込んだ!アリス様に相応しい物になったと自負してる!ちなみにモードチェンジは他にもあるぞ!この先は自分の目で確かめてくれ!」



ドルフはサムズアップと、()()笑顔で言った。



財を湯水のように注ぎ込んでいいのだろうか。と思ったがかわいい孫娘(のようなもの)の為ならジジババはなんでもする。そう言うものだ。



「こんな素晴らしいものを…ありがとうございます、ドルフ、デボラ…」



アリスは恭しく礼をする。



「俺達からの餞別です。旅の成功を祈っております」



「終わったら忙しいだろうけど、またいつでも来てくれていいんだからね。父上にもよろしくとお伝えください」



ドルフとデボラがそれぞれ声をかける。



「ありがとう!必ずまた来るから」



アリスは優しく微笑んで答えた。







こうして無事に目的の物を手に入れた一行は、城塞都市エイギスへ向かうことになった。









次は明日の朝10時に更新します!是非評価をお願いしますm(_ _)m

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