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29話『主』




水面から這い上がってくる影の大きさを見てハルは思わず声が出る。




「でかっ!…蛇…?…竜!?」



湖から上がってきたのは大きな蛇…のように見えるが手足があり、日本や中国の竜に近いフォルムだった。




蛇が大きく口を開き。耳をつんざくような咆哮が放たれる。




鉄蛟竜(ミズチ)だ。竜種としては下位だが…」



「ここはまずい…天井が低くて魔身が出せん」



アルフレッドに続けてフィーダが言う。



「…アレと生身でやるんすか…わぁお…」



天井が低い上に崩落の危険があるので魔身はうかつに出せない。



どうやら魔獣を生身で倒す必要があるようだ。



「今回は俺も手伝ってやる。アリス、指揮を頼む」



アルフレッドが言うとアリスは頷く。



「よし、いくぞっ!」





◇◇


「アルフレッド様、適当な魔法を何発か撃ち込んでください。どう対処するのか、何が有効か見極めます」



「おうよ!まずは小手調べだ!」



アリスの指示にアルフレッドが両手を前に出すと、魔方陣が空中に描かれ、大木のような氷の槍が現れる。



弾かれたように発射された氷の槍は鉄蛟竜(ミズチ)に突き刺さる…



はずが、砕けてしまった。鉄蛟竜は首を傾げるようにくいっと捻る。



鉄蛟竜と言うだけあって、鱗はかなりの強度があるようだ。




「ならこれはどうだ!」



間髪入れずに次の魔法を発動させるアルフレッド。



アルフレッドの両手から1メートル程の火球が3つ、放たれる。



火球を見た鉄蛟竜は口を開くと、ガス漏れのような音を出しながら霧のようなものを吐きだした。



火球が霧を纏った鉄蛟竜に向かうが、霧のベールに触れるとどんどん小さくなり、ついに火球は消えてしまった。



アルフレッドはさらに雷の魔法も放つが、同じように霧散してしまった。



(属性関係なく魔法を減衰させる霧…その上さらにあの鱗…守りが硬い…)



アリスは必要な情報を集めながら考える。そして目配せをする。



「やっかいだな…だが霧は近づく分にはこちらも身を隠しやすい…ハル!合わせろ!」


「了解っ!」



霧に乗じて距離を詰めていたハルとフィーダが一斉に飛びかかる。




ハルは前足、フィーダは頭を狙って、最大限の魔力強化の上でメイスを思い切り叩き付ける。



岩石のような鱗からは、金属が弾けるような甲高い音が響く。



「っかってぇぇ!」



ハルは痺れそうな腕を振りながら離れようとすると、鉄蛟竜が身体を縮めて丸まるような体勢をとる。



「フィーダさん!」



「わかっている!」


察したハルが叫ぶとフィーダもすかさず答える。



次の瞬間、鉄蛟竜は丸めた身体を鞭のようにしならせ、薙ぎ払うように尾を広げながらその場で回転する。



ハルは見切って飛び、空中で炎によりさらに微調整して薙払いをなんとか回避する。



フィーダは土魔法で一気に後方へ飛び、危なげなく射程外へ回避したようだ。



すかさずアリスの風の刃とアルフレッドの土魔法の槍が地面から伸びる。



風の刃はやはり霧にかかると減衰してしまったが、アルフレッドが地面から撃った土魔法の鋼の槍はほとんどそのまま鉄蛟竜の体に当たる。



鋼の槍を受けた鉄蛟竜は怯んだが、すかさず口を開くと、またガス漏れのような音がし始めた。



「アリス!師匠!なんかきます!」



一番近くで音を聞いていたハルは後衛の二人に注意を促す。



次の瞬間、鉄蛟竜の口から超高圧のカッターのような水魔法が放たれ、射線上の床が容易く引き裂かれる。さらに、穿たれた岩肌が音を立てて崩れていく。


腐蝕液のウォーターカッターと言ったところか。



これは…当たったら終わりだ。弾速の速さと威力の高さに胆が冷える。




しかし威力はあるが予備動作があるため回避できないことはない。



アルフレッド、アリス共に無傷で切り抜けている。




「師匠!もっと強い魔法はまずいんですか?」



ハルが鉄蛟竜の3本爪による切り裂きを回避しながら言う。



「これ以上強くすると、もし回避されたら洞窟が崩れる」



アルフレッドの力ならば山ごとまとめて吹き飛ばす事もできるが、魔鉱石が採れなくなるので最終手段だろう。



と、メイスで殴り付けていたフィーダが異変に気付く。



鉄蛟竜の周りに、湖の水が宙に浮くように集まってくる。



「ハル!くるぞ!」



「はい!」



フィーダが叫ぶや否や、宙に浮いた水玉から10センチ程の水の刃がマシンガンのようにいくつも放たれる。



一つ一つの威力はさほどでもないが、数が多い。



「くそっ、一回離れます!」



ハルとフィーダは回避し、受け、打ち払いながら距離を取る。



と、すかさずウォーターカッター砲の追撃が辺りを薙ぎ払う。




「近付けば水刃連発に離れれば一撃必殺のブレス…硬い鱗で物理防御に霧のベールで魔法ほぼ無効…めんどくせぇ奴だな」



辟易した顔でアルフレッドが言う。



「面白い…」


フィーダはニヤリと笑う。目的忘れてませんかー?



「よし、目処は立ちました」



アリスの考えが纏まったようだ。アリスは方針と役割をそれぞれに伝える。



「ハル君が一番危険なの…ごめん」



アリスが申し訳なさそうに言う。



「いや一番危険なのはアリスだよ。俺は大丈夫。任しといて!行きます!」



ハルはアリスに微笑むと、全身に魔力を滾らせ、鉄蛟竜に向かって駆ける。



「こっちも行くぞ!」「援護する!」



アルフレッドとフィーダが同時に土魔法を発動し、鉄蛟竜に向かって放つ。



左右から現れる鋼の槍は次々に鉄蛟竜へ襲いかかる。



その間に鉄蛟竜へ近づいたハルはメイスに炎を纏わせ、顔面に派手に叩き付ける。



ダメージはほとんどないようだが、鉄蛟竜の怒りに触れたのか、マシンガンのような水刃がハルに次々に撃ち込まれる。



ハルは攻撃の手を止め、回避に専念する。見切って回避し、籠手で弾き、メイスで打ち落とす。



鉄蛟竜が身体を捻り、尾で薙ぎ払おうとする直前、アルフレッドとフィーダの鋼の槍が鉄蛟竜に当たり鉄蛟竜は大きくよろめき悲鳴のような咆哮を上げる。



鉄蛟竜はアルフレッドとフィーダに向かってブレスを放とうとするが、ハルが炎のメイスで派手に顔を殴り付ける。



大きな爆発が上がると、目標を変えたのか、また鉄蛟竜はハルに向かって水刃を放ちだした。




ハルは囮だ。炎で派手に攻撃し、注意をひく。そして水刃を回避し続けることで鉄蛟竜を釘付けにする。



その間にアルフレッドとフィーダが土魔法の鋼の槍で攻撃する。



霧のベールで非実体系の魔法はほぼかき消されてしまう為、実体系の魔法で質量攻撃だ。



アルフレッドとフィーダに攻撃が行きそうになったらまたハルがわざと派手に攻撃する。



同じ場所を攻撃され続けると、鉄蛟竜自慢の鋼のような鱗もひび割れ、剥がれ落ちてきている。



攻略方はここに来るまで何度も倒した、岩蜥蜴と同じなのだ。




そして鱗の剥がれ落ちた鉄蛟竜の背中へ。


フィーダの土魔法の発射台のサポートと、風魔法で高く飛んだアリスが飛び降りるように剣を突き刺す。




「よし!「刺さった!!」」



アルフレッドとフィーダが声を上げる。


魔法の使いすぎだろうか、フィーダは片ひざを付いてしまう。



鉄蛟竜はいつぶりかもわからない、鋭い痛みに大きな咆哮を上げ、振り落とそうと身を捩る。



激しい動きに振り落とされそうになりながらも、アリスは剣へありったけの魔力を込めて魔法を発動させる。



風の刃が暴れているのだろう、鉄蛟竜はさらに激しく暴れる。



「大人しくしてろ!」



アルフレッドは土魔法で腕を出し鉄蛟竜の尾を押さえつける。




その時、鉄蛟竜の背中にいるアリスの横に、宙に浮いた水玉が迫ってくる。


アリスは横目に一瞬確認するが、意を決したように、さらに力強く剣を握る。



水玉から刃が現れ打ち出された瞬間、



「アリス!!!!」



飛びかかったハルは左腕を伸ばし、アリスに向かって放たれた水刃をなんとか籠手で弾く。さらにメイスで水玉を打ち払う。



耳をつんざくような爆発音と閃光。一際反響する鉄蛟竜の断末魔。



煙が晴れると、風の刃で頭を切り落とされた鉄蛟竜が横たわっている。




爆発の中、なんとかアリスを掴んだハルは、アリスを守るように抱き止め、そのまま地面に叩きつけられたようだ。



「いってぇ…アリス!大丈夫!?」


声を上げるハル。



「ハル君、ありがとう」「…アリスが無事でよかった」


ゆっくりと、アリスはハルの目を見て言う。



永遠なような一瞬。



「二人とも大丈夫か!?」



見つめあったのも束の間、フィーダに声をかけられ、ハルとアリスは自分達の体勢を思い出し、慌てて立ち上がる。



「私は大丈夫!!いやーうまくいってよかったね!」



「いやほんとに一時はどうなることかと!」


赤い顔をして早口に喋る二人を見て、フィーダとアルフレッドは顔を見合わせて小さく笑った。








◇◇






目当ての魔鉱石を手に入れ、ベースへ戻る途中。



「師匠、結構危なくなかったですか今回」



ハルはアルフレッドに尋ねる。



「まぁアイツは個体としては小さめだったが、鉄蛟竜は中位魔獣だからな。普通に考えれば魔身有りのAランクが複数いてようやく討伐できる、ってとこだ。場所が悪かったとは言え、生身で戦う相手じゃない」



「本当にどうなる事かと…しかしお嬢様の策が見事にはまりましたね」



「皆がきっちりと役割を果たしてくれたからよ。ありがとう」



アリスが言ったところで何か思い出したのかアルフレッドが声をあげる。



「あ、最後の爆発、あれはハルのせいだぞ」



「「「え?」」俺っすか?なんかしましたっけ…あ!」



「水に炎魔法とかで高温をぶつけると爆発する。覚えとけ」



なるほど…いわゆる、水蒸気爆発ってやつか…気を付けよう。



「すいません、無我夢中で…」



頭をかきながらハルは答える。



「あの威力ならうまく使えば戦闘に利用できるか…だが水辺でないと使えないのが…」



フィーダは自分の世界に入ってしまったようだ。



フィーダ、アルフレッド、ハル達を見て、アリスは微笑む。



「みんな、ありがとう!」





ガノ○トスのブレスをイメージして頂けるとわかりやすいかと…文章にするのが難しい!


ぜひブクマや評価お願いします!


明日は22時に投稿しますよ~

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