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28話『温故』

2018年11月頭の時点で、この話以前をほぼ全て書き直しております。


設定等が変わっている部分もありますので、できれば最初から読んで頂けると嬉しいです。


よろしくお願いしますm(_ _)m


ハル・アルフレッドと別れたアリス・フィーダは町の中央にある一際大きな工房へ来ていた。




「ここへ来るのも何年ぶりかしら」


アリスがしみじみと言う。



5、6年前なので11歳か12歳くらいの時だろうか。



あの時は父に連れられてここまで来たのだ。



「こんにちは~」



アリスは扉を開けると、居るであろう人物へ声をかける。



「はいは~い、いらっしゃいま…アリスお嬢様!?」



奥から出てきた女性はアリスとフィーダを見て驚いたようだ。



「お久しぶりですデボラさん」「ご無沙汰しております」



アリスとフィーダは頭を下げる。



「ちょっとあなた!アリスお嬢様がお越しだよ!出ておいで!」



「お嬢が!?おぉー!!久しぶりじゃの!大きくなりましたなぁ」



デボラの声で飛ぶようにやってきた男はドルフ。ドルフとデボラのドワーフ夫妻はこのボーダー(ドワーフの国)でも1、2を争う大工房の主である。



また、アリスの父:カイムとは旧知の中であり、代々専属契約を結んでいるビジネスパートナーでもある。



その為、アリスも子供の頃は父と共によく訪れていたのだ。



「店先じゃなんだ、奥へどうぞ」



店番を任せると、デボラとドルフは奥へ入っていき、アリスとフィーダもそれに続く。




◇◇




「さて、いやぁお美しくなりましたなぁ…前に会ったときはこんなだったのに」



「あんたね、お嬢様ももう立派な女性なんだから、失礼だよ!体も良くなったんだね。よかったよかった」


親戚の家に遊びに来たような気恥ずかしさと嬉しさが入り交じるアリスであった。



「そうそう、その為に来たの。私も17になったし、うちのしきたりを果たしにね。こなさないと一人前として認めてもらえないから」



「あぁ、例の!もうそんな歳ですか!早いですなぁ…100年も生きると時間の感覚が曖昧になっていけねぇや、ちょっと待ってくだせぇ」



ドルフは納得したようで、奥の部屋へ行き、何かを探しているようだ。



「あったあった、これだ。コイツです。コレを南にある火山洞窟から取ってくるのが決まりです」



ドルフが持ってきた物は鉄鉱石のようだが、不思議な輝きを放っている。



「この辺でしか取れない魔鉱石でして、取ってきたソレを材料に一品作りますので。両手に一杯分もあれば大丈夫です」



「わかった、ありがとう!準備を整えて明日にでも出発できるかしらね?」


アリスはフィーダに尋ねる。



「問題ないでしょう。このまま買い物に参りましょう」


フィーダが答えると、デボラが気になったようで口を開く。



「何人で来たんだい?火山洞窟(あそこ)はそこそこ強い魔物が出る上に狭い所が多くて魔身は使えないよ」



「私たちを含めて四人よ」


「大丈夫かい!?お兄さんが来たときは従者一人の他にBBとAランクの5人パーティを雇ってたよ!?」


デボラとドルフは心配そうな顔をしている。



「問題ないですね。一人は余程の事がなければ手伝わないでしょうが、そこらのAランク10人よりも頼りになるお二人ですから」



フィーダがきっぱりと言い切る。アリスも、何も問題はないと笑顔で語っている。



「そ、そうか…それならいいが…無理はすんなよ」



「はい!二人ともありがとう」



その後も、数年ぶりに会った為か近況報告や昔話に花が咲いたアリス達であった。




◇◇



次の日



ボーダー(ドワーフの国)から馬車で2日ほど行ったところに火山があり、この辺りの山々からは様々な良質の鉄鉱や希少な宝石などが採れる。



採掘の為にベースキャンプもあり、ここからボーダーへ送られ加工、売買され、様々な国へと流通していくのだ。



キャンプに馬車を預け、さらにそこから半日ほど行った所にある洞窟。ここで目当ての魔鉱石がとれる。




「石を取りに行くって聞いたんで炭鉱みたいなの想像してましたが、思ったより大きいですね。洞窟みたいだ」



入り口前でハルが言う。



「そうだな。ハル、これから入るが先ほど説明した洞窟内での注意は覚えているか?」



ハルとアリスは洞窟に入るのは初めてなので、来る途中にフィーダから予め洞窟内での注意を受けていたのだ。



「大丈夫です!離れない、横と後ろにも注意、ですね」



通常の炭鉱であれば灯りが整備されているが、この洞窟はあえて整備されていないそうだ。



そのため、灯りを持つ人間が必要なので、はぐれないように注意しなければならない。


また、どうしても前ばかりみがちなので特に殿は後ろにも注意しなければならない。


人間は通れなくても魔物や毒蛇などが通れるような横穴があるかもしれないからだ。



「よし、ではハルにはこれを渡しておこう。いつもの剣は止めに使うんだ。アリスお嬢様はこちらを。最前衛は私がやる」



フィーダはそう言ってハルには片手用のメイスを、アリスには大きめの灯りの魔道具を渡す。フィーダの首には少し小さな首かけ型の灯りの魔道具がかかっている。



「なんかあったら助けてやるが、気は抜くなよ」


アルフレッドはアリスとハルに言う。



「はい、行きましょう!」



アリスの掛け声と共に四人は洞窟へ入っていった。





◇◇




慎重に洞窟を進んでいると、フィーダが声をかける。


「…来た、気を付けろ」



洞窟の奥から、何かを引き摺るような音が聞こえてくる。



「はっ!」


掛け声と共にフィーダはメイスを振り下ろす。



さらに、のびたらしい相手にナイフで止めをさす。



魔物は…大きなトカゲだ。ハルが触ると、鱗が岩のように硬い。



「硬いですね…」



「あぁ、岩蜥蜴だ。叩いて鱗を砕いてナイフで止めをさすといい」



フィーダは岩蜥蜴の爪と牙を見せて、言葉を続ける。



「動きは遅いが爪と牙に毒があるから気を付けろ。さぁ進もう」





そこからさらに奥へ奥へと進んで行く。



倒した岩蜥蜴の数も20を超えただろうか。



ほとんどはフィーダとハルで倒しているが、たまにアリスの所まで回っている。



アリスは正確無比な剣技で岩蜥蜴の眼や口を突いて倒しているようだ。が、少し妙だ。突き刺した次の瞬間には即死しているように見える。


何度か叩いてから止めをさしているフィーダとハルに比べると随分仕留めるのが早い。



「アリス、どうやって突きだけで倒してるの?」



気になったハルは尋ねてみる。



「あのね、ハル君よく魔法で剣を伸ばすじゃない?あれを見て思い付いたの。鱗を剥がさずに切り裂くのは難しいし剣がダメになっちゃうから、柔らかい所を刺して、切っ先から小さい風の刃をいくつか出す感じで…」



アリスは少し恥ずかしそうに答える。



「へ、へぇ…そ、それは効果抜群だね」



体内で風の刃が大暴れか…かわいい顔してなかなか…いや、生き残るための知恵と工夫だ。この世界では無くてはならないものだ。



師匠も「生きるために考えろ、考えない奴から死ぬ」と言っていた。



「む、少し広くなっているな。皆、注意しよう」


フィーダが全員に声をかける。



入ると、大きな空間が広がっており、奥には滝と湖もある。植物も繁っている。


岩蜥蜴はここから来ていたようだ。洞窟自体が巣のようになっているのだろう。




「あ、あそこ!」


アリスが何かを見つけたようで指を指す。



滝の辺りの岩が虹のように輝いている。



目当ての魔鉱石だ。あれを持って帰ればいいんだな。



「…!…そうはいかねぇみたいだな」



ハル達が滝へ近づこうとした時、ソレに気づいたアルフレッドが声をもらす。



手前の湖の水面が揺れ、大きな何かが現れる。







明日は朝10時に投稿します~

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