24話『譲れない』
「んで、どうやって戦うんだ?生身か?」
「もちろんそっちは魔身機使っていいわよ。それが本気なんでしょ?」
アルフレッドが言うとミナは間髪入れずに答えた。
「私は生身でも構わないわよ?」
アリスも答える。ここでフィーダが折衷案を出した。
「アルフレッド殿が言っていたように、ミナも魔身機を使っては?大きさの有利不利もなくなりますし。ギャラリーも居ますから見やすい方がいいでしょう」
「「たしかに。じゃあそうしましょう」」
二人の声が揃った。
「決まったか。気絶させるか、負けを認めさせるか、どちらかで勝ちだ。では始め!」
獣王の合図。
「負けても文句は言わないでよね」
「貴女こそ言い訳しないで下さいね」
ミナが言うとアリスが答えた。
ミナが動く。
「魔身機召喚!おいで…獅子乙女!」
ミナの魔身は猫形の四足形。猛々しく吼える様はまさに獣の強さの象徴だろう。
…ゾ◯ド…
猫だと思ってたけどライオンだったのか。お父さんがまんまライオンだから当然と言えば当然か。
師匠に機心をもらって、結局魔獣は出なかったけど何度か召喚して練習してたようだ。
同時にアリスも召喚する。
「魔身機召喚!舞え…銀翼姫!」
アリスのネックレスが輝き、魔身機が形作られていく。
現れた魔身機は白銀の鎧を纏った女性騎士のような姿をしており、左手に盾、右手に剣を持っている。
中でも目を引くのは背中にある翼だ。これの存在感が人とも機械とも神の遣いともとれる美しさを醸し出している。
「天使様だ…」
獣人の子供が思わず呟いた。
アリスの魔身が盾からゆっくりと剣を抜き構える。
ミナの魔身機は体勢を低くし、力を溜める。大きな唸り声を上げると、放たれた矢のように一気に跳躍し距離を詰める。
アリスの魔身は翼を広げる。空気銃でも撃ったような音がすると一気に移動し、ミナの魔身機の後ろに回り込んでいた。
「速いわね!でも見えない程じゃないわ!ラナの爪は痛いわよ!」
ミナはそう言ってさらに、飛びかかる。が、自在に空を飛ぶアリスの魔身機は全てを回避していく。
反撃で空から攻撃を行うが、ミナは驚異的な動体視力ですべて回避する。
「負けられない!何か企んでるでしょう貴女!」
アリスが叫ぶ。
「二人ともすごい…師匠、空を飛んだり四足形だったりってよくいる形なんですか?」
ハルは今のところ空を飛ぶ魔身機も四本足の魔身機も見たことがない。
「いや、ほとんどいないな。空を飛べるのはアリス以外には一人しか見たことねぇ。四本足なんざ初めて見た。レアだぞどっちも」
ミナの魔身機はなんとなくわかる。彼女の心であり、強さの象徴であるライオン形になるのは当然だろう。
ってことは心が犬っぽい奴とかは人間でも犬形になったするのかな??
「…お嬢様は昔、病気で部屋から出ることもできない程だった。今でこそ動けるようになったが、その時は鳥のように空を飛べたらいいのにと毎日思っていたと仰っていた。その影響もあるのかもしれない」
フィーダは言った。
「なるほど…」
彼女の翼は自由の象徴、憧れや渇望みたいなものなのかな。
「二人とも中々いい勝負をするな!血がたぎるぞ…」
獣王はとても楽しんでいるらしい。よかったよかった。
しかしアリスの魔身機はすごいな。
風魔法を駆使して飛んでいるのだろう。やわらかい風で自身を浮かせ、鎧や翼の至るところにある排気口のような所から圧縮空気のような風魔法を一気に噴射することで急速な方向転換やスピードを出しているようだ。
突撃と方向転換のスピード、空の広い範囲からの攻撃、また四足歩行での上空からの攻撃への対処のしにくさが重ねり、戦況はアリスに傾いているらしい。
「相性が悪いな。四足歩行はスピードはあるが上からの攻撃が弱点だな。」
アルフレッドが言う。
ミナの魔身は対陸戦のスペシャリスト、といった所だろう。
「くっちょこまかと…!ラナっ!なんとかしなさい!」
ミナは叫ぶ。
すると魔身機は立ち上がり、二足歩行に変形した。
「おぉー…言ってみるもんねぇ。えらいえらい」
ミナがコックピットを撫でると、魔身機の尻尾が激しく振られていた。
やっぱ猫だな…。
「ここからが本番よ!」
ミナは叫ぶとボクシングのような構えをとりアリスに突撃する。
「望むところ!」
アリスは盾と剣を構え待ち受ける。
◇
「変形とかさらにすげぇな…これで五分か?あ、もしミナが勝ったらハル、次はお前だぞ。気を付けろよ」
師匠が珍しく忠告してきた。
「なんでですか?」
ハルは言葉の意味がわからずに尋ねる。
「獣人族の決闘の勝敗は絶対だ。敗者は勝者に従わなければならない。それが決闘の掟だ」
獣王が掟の説明をしたくれた。つまり?
「言ってる意味わかるか?ミナはお前を獣人族に入れようとしてるんだ。アリスが負けてお前とミナが戦った場合、勝っても負けても婿入りだ。おめでとう」
「えぇ!?そんなの聞いてませんよ!!」
「楽しみにしとるぞ婿殿」
獣王が言う。
「いやいやちょっと待ってくださいよ!」
「なるほど、通りでハルを指名して戦おうとした訳だ。ミナが勝てば婿になりなさい、で終了。ミナが負けても、敗者は勝者に従うのがルール、と言って勝手に着いていく訳だ。しかも強さ重視の獣人属だ、ミナを倒すのを大衆に見せれば、姫を任せるなら彼だ!そんな雰囲気になるな。しかしアリスお嬢様はよく気がついたものだ…」
フィーダが納得、と言った顔で言っているがこちらはそれどころではない。
と、視線を戻すと一瞬目を離した隙にクライマックスらしい。
ミナは魔身機を四足に戻し、大地を駆け最大の跳躍で上空のアリスに飛び掛かる。
アリスは上空から剣を構え、一気に急降下し向かえうつ。
「「いけぇーーー!!!」」
…
「「どっちだ…?」」
観客全員が固唾を飲んで目を凝らす。
煙が晴れると、そこにはアリスの魔身機が立っていた。
「そこまで!勝者は客人!よき勝負であった。大きな拍手を!」
獣王が言うと大歓声が起きる。確かにかなりいい勝負だった。
俺の心境以外は。
戻ってくる二人の姿が見える。
「負けたわ、アリス。強かった。分かってたの?」
「貴女も強かったです、ミナさん。勘です。勘。」
「仕方ないわね、正室はアリスに譲るわ。私は二番で構わないから」
「…貴女懲りてませんね?」
二人は笑いながら戻ってきた。
「ミナ、俺は聞いてないぞ!」
「あら、バレちゃってるの?残念ながら今回は見送りよ」
ハルが問うがクスリと笑って流されてしまった。
「…はぁ。アリス、助かったよ、ありがとう。大丈夫?」
「ありがとう。大丈夫だよ!」
笑顔のアリスはとても眩しかった。
◇
「さて、収まらんな。『雷神』殿、ワシと戦ってくれんか」
『獣王』ガルル・ギルがギラリと牙を剥いて笑った。
…頂上対決!?




