16話 「職人の街」
俺自身が弾丸になる!
ファンテジア王国最南端の街、「サウスワーク」
ここの住人はドワーフや職人がほとんどで、多少の商人がいるが、もの作りがメインの街だ。
また、南西に隣接している、「セキチク自治区」への関所があり、ファンテジア王国の流通は多くがここを通して行われる。
アリスの傷ついた機心を修復し、セキチクへ入る。
セキチクからは街道こそあるものの大森林を進む事になるので、サウスワークとセキチクで装備や準備を整える算段だ。
「すげぇっ!あちこちから鍛冶の音が聞こえる!そこら中に武器屋と防具屋がある!テンションあがる!!」
じつに想像通りの「鍛冶の街」感にハルは思わず声が大きくなる。
「田舎者丸出しだからやめろマジで。んじゃ俺は馴染みの店に行くから、用事が終わったら各々宿に帰れよ~」
呆れた様子で言うと、アルフレッドはヒラヒラと手を振って何処かへ行ってしまった。
たぶん酒屋だな。
「ハルはどうするんだ?考えはあるのか?」
フィーダさんから話を振られた。
「いやー、何にも考えてないっすね。どうしましょうか」
本当に何も考えていなかった。そもそも何処に何があるかもわからないからフラフラするくらいしかできないけど。
「ならば済まないがアリスと一緒にいてくれないか?私も馴染みの鍛冶屋に行きたくてな。頼むぞ騎士殿。
すいませんお嬢様、少し暇を頂きます。」
そう言ってアリスに頭を下げるとフィーダも行ってしまった。
確かに立場的に一人で行動するのは危ないか…しかしうまくやられた気がする
「行っちゃったね。じゃあ俺たちも行こっか」
「うん。お願いね、騎士様!」
アリスは悪戯に笑いながらからかってくる。
「あぁもう、勘弁してくれ」
恥ずかしくて早足に歩き出す、とアリスに声をかけられた。
「騎士様、私の行きたいお店は反対だよ~」
「くっ…」
穴があったら入りたいとはこの事か。
◇◇
大通りを歩いていると様々なお店や屋台があった。
「あ!あれおいしそう!」
アリスの視線の先にはカットフルーツのカップが売られていた。
「うまそうだな…食べよっか」
「賛成!大賛成!!」
お、嬉しそう。言ってよかった。
購入し、いざ実食!
俺が買ったのは緑の果肉のフルーツだった。
「うん…酸味がさっぱりしておいしいな!そっちは?」
スイカとグレープフルーツを足したような感じだった。
「すっごく甘くて美味しいよ!!ほっぺが落ちる~」
アリスは赤いフルーツだったが、とても甘いフルーツだったようだ。
ピョコピョコ動く耳と尻尾の幻覚が見えるくらい嬉しそうだ。
美味しかったんだろう。
「ふふっ!ハルくん舌が緑色だよ!」
「うそっ!?そんな効果あんの!?あ、アリスも赤だよ」
二人して顔を見合わせて笑ってしまった。
◇◇
「あった、ここだよ」
アリスが立ち止まる。
「よし、はいろっか」
店内に入ると武器や防具、魔法道具や細工品などがところ狭しと並べられていた。
「こんにちは~機心の修復をお願いしたくて来たのですが」
カウンターにはだれもいない。アリスが中に声をかけると人がでてきた。
「すまん、待たせたな。どれ、機心を見せてもらおうか。」
老齢のドワーフの男性だった。
「これです。召喚する前に魔獣に攻撃されて付いた傷で…」
言いながらアリスは機心を取り出す。
ドワーフの男性は機心を調べて言った。
「これくらいの傷ならそんなに難しくない。一晩あれば直せるぞ。」
「よかった!お願いします」
アリスは手続きを進めていく。
「あ、よかったらコレみてもらえませんか?」
ハルは自分の機心を見せ、購入した機心が、召喚した際にブレスレットと合体した事を話した。
「ふむ…魔道具と1つになるなんて話は聞いたことねぇな。」
機心自体は、魔法銀に召喚魔法の術式を封じ込めて作る。
作る人間の腕によって大きさや形は変えられるそうだ。
小さな傷なら魔力があれば自然に直るが、大きな傷は魔法を込めながら加工しなおさないといけないから、職人でないと直せないそうだ。
逆に言えば魔力があれば勝手に直るような代物なので、魔力がたくさんあれば合体するような事が起こってもおかしくはない、と教えてくれた。
「なるほど…ありがとうございました」
「では明日伺います!」
そう言って二人は店を後にした。
わかったようなわからないような…。ブレスレットは神様にもらったもんだからな…よくわからない素材なのかも。
「じゃあ明日も一緒に来てくれる??」
アリスがハルに尋ねる。
「もちろん!いい時間だし今日は宿に戻ろうか」
「あ~あー終わっちゃうなー」
頬を膨らませるアリス。
残念ながら訳ありな人物にぶつかって紆余曲折の後に偉い人と知り合いになったり、明らかに怪しい人物おっかけて黒い組織に子供にされたりはしないぞ。
え、しないよね?




