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98話『一瞬/永遠』





ハルは何件もお店を回ってみたが、有力な情報は得られなかった。




お昼も過ぎたのでアリスと合流することにし、連絡をとって待ち合わせている所だ。



と、アリスの姿が見えたので手を振る。



こちらに気付いたのか笑顔になり小走りで近づいてくるアリス。




「どう?なにか情報は?」



合流したハルは言いながらアリスに飲み物を渡す。



「ありがと!ダメね。けど、人探しなら露天の方がいいかも、って教えてくれたよ。外にいる分、いろんな人を見てるからって」



アリスは飲み物を飲みながら話す。




「なるほど、確かに。じゃあ露天に絞ったほうがよさそうだね」



本当は全て聞き込みをかけたい所だが、今日一日しか時間がないのですべて回っている余裕はない。



可能性の高そうな所に集中したほうが当たりを引く可能性は高そうだ。



「ハル君はどう?」



「こっちも収穫はなしだね。物や人の出入りが激しいから運び屋や商人も数が多すぎてね」



「まぁまだまだ、これからだよ!頑張ろう!」



アリスがガッツポーズで言う。



「ありがとう!もう良い時間だしお昼にしよう。少し遅くなっちゃったけど」



「すっかり忘れてた。そうしましょう」



はっとした顔をしてお腹に手を当てるアリス。



アリスもお腹が減っていたようだ。




「昨日食べたあのパン、売ってる所を聞いたから行ってみない?」



昨日の夜、『それほど亭』で使われていたパンの売っているお店を聞いていたのだ。



「あのパンおいしかったもんね!決まりだね~行こっ♪」



アリスは満面の笑みで言う。



その笑顔があまりに眩しくて、見惚れてしまい思わず動きが止まるハル。



ぴょんぴょんと跳ねるようにスキップをしているアリスの後ろ姿。



スキップに合わせて髪がふわりふわりと揺れる。




………あぁもう。……







アリスは歩き出すが、自然とスキップになってしまう。



楽しい気持ちがそうさせるのだろう。




(トーマスさんはなかなか見つからないけど、ハル君の恩人だからなんとか探し出さなきゃ!



……けど、久しぶりに一緒に居れるから楽しいな。だしにしちゃってちょっぴり申し訳ないけど。



それにしてもお昼楽しみだなぁ~♪あのパンおいしかったから、きっと他のパンもおいしいハズ!間違いない♪)




そんな事を考えながら、アリスは軽快に進みだしたところで、…





(っ!?)





突然、左手を握られる。




「お店はあちらですよ、お姫様」




いつか、私がやったように。




少しわざとらしく、かっこつけて。




でも、恥ずかしそうに。



顔を赤らめた騎士様が私の手を引いて反対の道へエスコートしてくれた。




自分の顔が真っ赤になっているのがわかる。




顔が熱い…溶けてしまいそう…!




「あぅ……」




私は恥ずかしさと緊張と、それ以上の嬉しさで何も言えず、ただ手を引かれるままに付いていく。




目を見るどころか、顔も見ることができない。




どうやら騎士様も同じなようで、少しうつむいて歩いている。




けど、私がハル君の手をきゅっと握ると、強く握り返してくれた。




力強さと、温もり。



それだけが今の私の全てで、それだけでなんでもできるような気がした。





二人は無言で雑踏を抜けて進んでいく。




ただこの一瞬が、永遠にも等しい時間に思えた。









「アっアリス!着いたよ!!」



あるお店の前に着くと、ハルはぎこちなく言いながら、振り替える。




「あっ、うん…じゃあ、入ろっか…」




振り向いたハルとアリスの目が合う。



顔を見るとまた恥ずかしさが込み上げてきて、二人はうつむいて動きを止めてしまう。



なんとかぎこちなく動きだし、店に入るハルとアリス。





「いらっしゃいませー」



妙齢の女性店員が言う。



と、女性店員は扉から入ってきた初々しいカップルに気付き、思わず笑顔になる。



(二人とも顔赤いし緊張してるし初デートなの!?めちゃ可愛い!…私にもあんな時代あったなぁ…)



と、心の内に秘めて女性店員は接客していた。







店内に入ると、パンの香りが店中に広がっている。



「…いい香り…おいしそう!」



アリスの目が輝く。



「持ち帰りでございますか?店内で召し上がられますか??」



やけに愛想が良くニコニコした女性店員は言う。



「店内で食べます。Aセットを」



ハルはメニューを見てオススメと書いてあるセットにしておく。



ここのパンはおいしかったのでどれにしても問題はないだろう。



「アリスはどうする??」



「私はBセットにする!」



アリスが言うと、店員さんはにっこりと笑顔で答える。



お会計をして席に着く。



「店内で食べれてよかったね」



ハルはアリスに言う。



元々は買って外で食べるつもりだったが、カフェ併設で店内飲食できるようになっていたのだ。



「うん、お店の雰囲気も素敵だね」



アリスは店内を見渡しながら言う。



無駄な装飾がある訳ではないが、よく掃除が行き届いており、椅子や机、壁までセンスよくまとめられている。



「お待たせしました~」



配膳されたプレートを見ると、味の違うパンが二種類とスープが付いている。



「おいしそう!いただきます♪」



ハルとアリスは手を合わせ、一斉に食べ出す。



「おいしい!!ハル君、ふわっふわだよ!」



「うんっめぇなこれ…何個でもいけるわ…」



アリスとハルは同時に声を上げ、互いに顔を見合わせ笑う。



店員のお姉さんが来て、コーヒーを注いでくれた。



「なかなか見つからないね、トーマスさん」



アリスはパンを頬張りながら言う。



「だね~。この街にいるのは間違いないんだけどなぁ~…」



ハルはお姉さんに会釈をして、コーヒーを飲む。



と、



「…あなたたち、トーマスって人を探しているの?うちの常連さんに居るわよ」



店員のお姉さんが言う。




なんですと!?






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