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第036話 正体不明の敵

――ファミアス森

王都から直線距離で約20km。

道なりに歩くともう少し遠くて約23km程らしい。

時速4kmで歩いたとして約5~6時間といったところだろう。

現地での活動時間を5~6時間とした場合真夜中帰還になるが日帰りは可能。

ただし夜ノソノソ動く馬鹿はそうはいないので大抵1泊コース。


“(もっとも『歩いたら』の場合だけどね)”


当然ランは普通に歩いて移動する気はない。

貸し馬?

お金使う気もなし。

普通に門から衛兵に挨拶して普通に東に道沿いに歩く。

ある程度はなれて周りに人がいなくなったのを確認した後…偵察バイクを四次元ポシェットから引っ張り出す。

律儀にメットも…

たとえこの世界では法規定が無くてもこけた時の事を考えて被るのは当たり前。

などと言い分けかましつつ60kmほどの速力で移動。

当然20分もすれば目的地が見えてくるわけで…。


“さて、こんな簡単な仕事は今日中にさっさと終わらして宿でぬくぬくしますか♪”


日帰りする気満々であるようです…。



◇◆◇◆◇◆



ファミアス森はもっとも長い場所で測定すると東西に6km南北に4km程の森である。

何も考えずに中に飛び込んでも良いのだが(ラン的には王都がある近辺にそれほど強い敵はいないだろうと思っている)一応以来は偵察任務。

とりあえずは30分ほどかけて森の周りをバイクで流し『探知』スキルで森の中を確認。

当然道などは『探知』スキルでは判らないが森の中にいる生物の位置は大体判明した。

探知距離が4.5kmあったから助かったよ。

ゲーム時代にスキル鍛えた俺GJ!

…鍛えた理由が紳士(へんたい)達から逃げるためと言うのが悲しいが…


くるっと森の周りをバイクで一周し簡単な状況把握はできた。

しかし気になることがいくつか…


“なんであんなに『魔物』の反応があるんだ?”


そう…依頼を受けたときこの森について簡単にカウンターにあった資料で調べてみた。

それによると元々この森は『魔素』が低くめったに『魔獣』なんてものは発生しないとの事。

ところが今『探知』スキルのレーダーに引っかかった物で名前かせわかるものだけで166体。

名称不明の物は42体もいる。

名前がわかる中には『ゴブリン』や『オーク』なんていう『魔眷属』までいる。

…そう、それが可笑しいのだ。

数もさることながら『魔眷属』がこんなにゴロゴロいることが可笑しいのだ。


『魔獣』は『魔素』に犯された動物であるので『魔素』の発生する場所ならどこで発生しても可笑しくは無い。

だが『魔眷属』は『迷宮』やまたは他のコロニーから移動でもしてこない限り存在はしない。

すくなくとも迷宮以外で自然に魔眷属が『沸く』なんて現象は確認されていない。

しかもこのあたりは騎士団や守備団の巡回エリアであり(なにしろ王都から近いので頻繁に訓練をかねた巡回が行われている)魔眷属がどこか他の場所からここまで巡回する団に見つからず無事に到達できる可能性はかなり低い。

よってこんな王都の近くでもあり普通の人の狩りの場である森の中にこんなに大量の魔物がいることが可笑しい。

しかも丁度森の中心部らしいところにまとまって青いマークが16体もでている。

少なくても『魔物』ではない何かがそこにいることになる。


“全部ぶっ飛ばしてぼろ儲け…なんて思ってたんだけどな…

そういう訳には行かないだろうな…”


レーダーに映る青いマークを見て呟く…


しばらく悩んでいたが顔を上げると迷いを吹っ切った。


“とりあえずまずは依頼どおり偵察から始めますか…

とりあえず名称不明の奴だけでも確認しないとね…

特に青マークを囲んでる奴ら…”


レーダーには青いマークの集団を囲むように90体ほどの名称不明の赤マークが映っていた。



◇◆◇◆◇◆



衣服を迷彩柄の戦闘服に着替え防弾・防刃チョッキも装備。

ニーエルボーパットなども装備し右太ももにはベレッタ92FS拳銃、左胸にナイフケースをつけ89式銃剣を突っ込みチョッキのポケットには小銃等の特殊弾(試作の魔法封印弾)を突っ込んでおく。

その他モロモロ各種武器弾薬を所定の場所に装備して最後にM4A1自動小銃を持つと準備完了。

簡単に言えば自動小銃(ライフル銃)と拳銃除けば陸自の野外戦闘装備そのままである。

今回はさすがに魔獣の数が多すぎるのでポシェットから取り出すより慣れた場所のほうを選び装備したわけだが…

はっきりいえば剣と魔法の世界に似合わなすぎて違和感バリバリである。

もっともこれが慣れたものが使うと野外フィールドでは本当に認識しにくくなるのだ。


さらに今回は念の入れようで【ハイド(隠蔽)】スキルや【サイレン(消音)】 スキルまで使用しての本格的な隠密行動である。



ところでランがこれらのスキル全開で使うとゲーム内では最強のドラゴンの真横で採掘が行えるという異常なまでのスキルレベルである。

ドラゴンの巣のある崖ではレアメタルが取れるので有名だったがドラゴンの異常なまでの感知能力と強さに泣く泣く諦めていたのにランは平気でその側でレアメタル採掘していた。

おかげで掘り出したレアメタルはものすごい価格で売れたという…。


とりあえずその無駄に高いスキルを駆使してのミッション開始である。

ちなみにゲームではそのスキルの高さを知った知り合いが是非ともNPCの女性キャラの着替えのSSを取ってきてくれと言う依頼をされたことがあったが当然ながらその友人はランの手によって教会の天井から吊り下げられていた十字架に裸にされて縛り付けられたという。


“(ちっ…判ってはいたが敵の数がやたらと多い…)”


偵察目的のため極力戦闘を避けるため『探知』スキルで見つけた敵を回避しながら行動していた。

いくら隠密系スキルで姿を隠しているとはいえなんの拍子で発見されるかわからないし敵が高レベルの『探知』スキルを持っていたら隠れていても見つかる恐れがある。

そのため目的の森の中心部にたどり着くのに2時間もかけてしまった。


なにしろゴブリン・オーク・ワータイガー等がゴロゴロまるで見張りのごとく森の中を数匹単位で動いていた。

明らかに統制の取れている動きである。

こうなると恐らく指令中核であろう森の中心部にいる敵種族と青マークの者達が気になる。


ようやく中央部分が見える位置まで来た。

いくらスキルが高くても発見されたら元もこうもない。

少し距離の置いた場所の茂みの中から双眼鏡を遣って覗き込む。

最初に見えたのは森を切り開いて作ったらしいそれなりの大きさのある空間とかなり大きめの建物が結構な数がある。

そしてその真ん中部分に畑らしいものが…

そこで働いていたのは薄汚れた姿の獣人数人。

全員首輪らしいのが付いている。

視認したことで『探知』スキルのレーダー画面のマークにそれぞれ種族名が出る。


“『コボルト』族に…『ケット・シー』族…”


思わず呟いてしまった…

実はこの世界では『コボルト』と『ケット・シー』は地球で言う絶滅危惧種入りしている。

ゲームの中ではそれなりの個体数がいた(なにしろランはゲームの中の店でコボルト2名をやとっていた)のだがこっちの世界は過去に魔眷属扱いを受け絶滅一歩手前まで追い込まれている。したがってランも獣人種には王都で少ないが見かけたことは合っても『コボルト』族と『ケット・シー』族は見たことが無いため残念に思っていた。

それが今目の前にいる。

ただ気になるのは汚れた身なりと首輪である。

ただのアクセサリーならいいのだが…

その時双眼鏡の視界の端に他の生き物が映った。


“…『グリーム・オーガ』…”


身長240~250cmほどの緑がかった肌を持つ生き物がそこにはいた。

ランの顔がこわばっていた。



『グリーム・オーガ』

他のオーガ種より一回りからふた回りほど小さいが通常のオーガ種より頭が良い。

他のオーガ種より力は弱い(それでも人より圧倒的に強い)が他のオーガ種ではまったく無い種族固有の魔法を使う。

また知能があるためか他の種族をさらってきて奴隷としてこき使うのも特徴である。



ゲームの中でも突発クエストの相手としてよく出てきた相手だ。

大抵は旅のの人や小さな村を襲いNPCを拉致するので奪回要請のクエストであった。

こいつらのクエストの特徴はまずソロでは不可能なことがあげられる。

敵の強さはさほど出ない。

正直今のランなら『グリーム・オーガ』が100匹いようがソロで余裕で殲滅できる。

こいつらのやっかいなのは自分達が不利とわかると人質に手を上げることだ。

いくら強くてもソロだと複数の敵に同時に対処は出来ない。

その為に人質が死んだり怪我をしてクエスト失敗になるのだ。

人質の青マークは16人。

さすがにラン一人では守りきれない。


“クソ…単独では無理か…”


あまりの悔しさに唇を噛み切って血が出ていたがあわてて臭いの元になる傷を薬で直して静に撤退を開始する。


“単独は無理だ…ギルドに応援を求めないと…”


応援の相場がよくわからない…

だがランクB以上が10人もいれば何とかなるかも…


“とにかくギルドに帰ろう…こんなことなら王都にマーキングしとけばよかった・・・

それなら【テレポ(闇魔法ランク8『テレポート(転移)』)】で一気に帰れたのに…

しくじった…”


悔やみながらも再び2時間かけ森の外に出ると再びバイクを出し全速で王都に向かう。


“まっててくれよ!

絶対に助け出してやるからな!!”


ランの初めての野外クエストはこうして想像もしてなかった大きな事件えと発展していった。

物語だからというのもありますがこうもトラブルに愛される人間も珍しいだろうな…

思わず棒現在の陰陽師の漫画を思い出したよ。

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