第035話 クエスト
「ローエングラムの小僧を含む105名が治療院行きか…
カールドの養女も派手にしてくれたな。(笑)」
城の政務室で王が笑いながら報告書の羊皮紙を読んでいた。
そこには第二騎士団の常時兵力の1/4がしばらく使えない事が書かれていた。
騎士団と言うのは普段からフルに人間が揃っているわけではない。
普段は騎士と従騎士・小姓そして他の後方人員で約400~450人程で構成されている。
大体騎士一人に対して従者(従騎士・小姓)が2~3人、そして部隊の後方要員が100名といったところである。
当然これだけで戦争は出来ないので戦争となればこの下に2000人以上の兵が各地からかき集められる。
常時これだけの人数を維持していると予算的にすざましい事になるため平時は部隊の基隊となる騎士達だけで構成されており戦時以外に兵は集められることは無い。
そして『騎士』とは『騎士号』をあたえられた貴族である。
その『騎士号』を持つ騎士100人がたった一人の少女により壊滅した。
肉体的には薬もあるし魔法もあるのでたいしたことは無い。
ただ徹底的に少女の手により精神を叩き折られていた。
復活するのに早い者で半年はかかるのではないかと医者の診断も添えられている。
「王よ笑い事ではありませんぞ!
貴族に手を上げたのです!
なんらかの処罰をせねば示しがつきませんぞ!!」
「馬鹿なことを言うな。
そもそも100人もおってたった一人に魔法も使わず武器も無しの相手に叩き潰されるほうが悪い。
普段から鍛えておらぬからこういうことになるのだ。」
「しかし普段は冒険者共なんぞにわが国の騎士たちは負けはしませぬ!」
「どう言いつくろっても無駄だ。
実際このカールトの養女に全員こてんぱんにのされておる。
しかもギルドマスターからの報告によると彼女は魔法もかなりの腕前らしいと報告がきておる。
その彼女が魔法を一切使わないで叩きのめしたのだから彼女が『特別』でないのなら小僧共が鍛錬を怠けておったとしか言えん。
さらに彼女が『特別』ならは彼女を失うことは王国にとっては一大事になるぞ。
どっちにしても彼女に罪は無いからほっておくしかあるまい。」
「うむむむむ…」
爺やを言いくるめた王はニヤニヤしながら報告書の続きを読む。
そこには争いの原因になったことも書かれていた。
「まぁ、罰として『ベントウバコ』なる食料箱の説明をするように言うことにしよう。」
そう王が言うと爺やも納得したようだった。
報告書にかかれた時間がたっても湯気がでていた『ベントウバコ』なるもの。
もし手に入れば軍にとって画期的なことになるかもしれなかった。
◇◆◇◆◇◆
昨日の事件の後こっぴとくギルドマスターに叱られたラン。
どうもランの勘違いだったらしく『弁当箱の中身』が狙われていたのではなく『弁当箱そのもの』が興味があったことが判明。
もっともあの態度でこられたらたとえ中身が目的でなくても結果は同じであったろうが…
『イケメンモゲロ!死に晒せ!』はランの中では変わることの無い真理である。
あと紳士も…
というかランにとってはイケメン=変態のカテゴリーである。
さてランは昨日の試験で無事ランクEの昇格が認められた。
あれだけ大騒ぎ起こしておきながらの昇格にさすがにランでも裏があるのではないかと疑ったがなんと冒険者仲間からは大勢から良い笑顔で親指を立てられた。
どうやら騎士団に対する行為は冒険者達(特に男性の)にとっては良いことだったらしい。
変わりに一部の女性冒険者達からは非難の目があったが騎士団の者達が以外に小さい物しか装備していなかった事実も(何がとは決して聞かないように!)あり非難の目は意外と小さかった。
被り率90%越えの騎士達
いろいろな意味で意味深な事件ではありました…。
さて今回の事件についてはおって王室から沙汰があるのでしばらくは王都に待機の命令が出た。
ランクEになったらすぐさまエルシア村に戻る予定だったランにしてみたらいささか予定が狂った状態だったが本来なら昇進までのポイントがもう少しかかる予定だったのでこれはトータルで見たらさして予定と変わりないかと思いそのまま受け入れている。
すでに村に必要な物は今までに買いだめしてレグオスさんに依頼しワーマス商会の行商のついでに村に送り届けてもらっている。
かなりの生活用魔道具と種や苗といったものから食料にいたるまで送ってもらっている。
まぁ、一部は日本に送っているのだが。
あと他にも攻撃用など冒険者用の魔道具も複数購入したがこちらは自分の四次元ポシェットに収納してある。
ある意味ランから見ると使いづらそうなものばかりだったが『研究用』と見る限りならば有効なものばかりだ。
さらに現在鍛冶屋の隅に放置されていてある物も無料で手に入れている。
ラン達地球人の目からしたら『四輪駆動車』等にしか見えない古代の乗り物である。
過去に各地の遺跡からかなり大量に出土したが現在に至るまで再現もしくは修復に成功したものは無く古代のゴーレム馬車の一種だろうと思われるが再現不能な物体として扱われている。
でだ鍛冶屋にしてみたら素材は知らない素材なため興味があるが頑丈すぎてばらせない、修理も不可能ということになるとただのゴミでしかないらしい。
そんな訳でランの目から見て比較的ましそうなものを数台分けてもらった。
その場でざっと見た限りエンジン等はまったく知らない機械らしいものであったがそれ以外はランの知識でも判るものばかりである。
よって村に帰り次第、一度全部ばらして再生作業に挑戦してみるつもりである。
うまく行けば一大革命になる。
問題はエンジンらしいのがどこまで直せるかであるが…
そのあたりは正直仕組み(内部の魔法陣or魔法機関)をどれだけ調べて再現できるかにかかっているだろう。
どっちにしろ時間がかかるとして全部四次元ポシェットに収納して後回しにしている。
むしろ再生より錬金術と鍛冶のスキルを応用して新規に開発するほうが早いかも知れない。
さてぶっちゃげた話、待機期間は約2週間ほどだろうと聞かされている。
遠くに行くのでなければその間も依頼を受けてもいいと言われていた。
正直2週間ぼけ~っとするのもなんだからとただいまランクEの依頼掲示板とにらめっこの最中である。
本日から出始めた冒険者ギルド直接依頼の『ハイル草』・『ロルフ草』の採取依頼もそれなりにそそられるのだが正直言えばこんなの他の依頼の行き帰りにでも採取してきて帰ってきて依頼が残っていたらそれを提出すればいいのでさほど慌てる必要は無いと判断する。
と、なるとほかは何がいいやら…
そこでふと目に付いたのは『ファミアス森の調査』という依頼だ。
こちらもギルド直接の依頼らしいがなにしろ成功報酬が安い。
銅貨5枚って…
駆け出しの冒険者ならは難易度が高いといってベテランだと安すぎるらしく放置状態。
まぁ、ランクDになるとこれよりいい金額の依頼もあるみたいだしな…
てかゴブリン2匹半分の報酬ってどうよ?と思う。
――――――――――――――
クエスト名:ファミアス森の調査
成功報酬:銅5枚
【内容】
王都から東20kmほどにある森にゴブリンらしきものが数多く目撃されると近隣の村から報告があった。
モンスター達と戦う必要は無い。
森の現状を調べてギルドに報告せよ。
――――――――――――――
少々気になることがありその依頼書を外してカーリ神の受付カウンターに持っていく。
“カーリさん、少し質問したいことがあるんだけど今いいですか?”
「はい、ランさん何でしょう?」
“この依頼なんですけどね、現地で戦闘した場合どうなるのですか?”
「え?」
普通この手の依頼はランクEになりたてが受けるものであり実力的に襲われたとき以外戦闘なんて避けるものである。
しかしランにとっては…よほどのモノで無い限り一人でも蹴散らす自信がある。
そして全部倒して買い取るものがあるのならそちらのほうが利益になるのだ。
物語みたいに討伐部位をもってきたらお金になるのならぜひやりたい。
そんな訳で尋ねてみたのだ。
「ギルドカードに記録されますから終了時にカードを提出されたときに判明しますよ。
報酬に関しては討伐部位をお持ちしていただければ報奨金が支払われます。
それ以外の物はこギルドカードを見てからこちらの判断になりますね。」
“ほうほう”
「ただこの依頼は無理に戦闘をする必要はありませんよ?」
“ええ、わかってます。
でもやり方によっては色々利益でそうですし。
『ゴブリンらしきもの』と書かれていますし数によってはそれなりに利益になりそうですしね。”
「では、この依頼を受けますか?」
“はい、お願いしますね。”
「それと、これ、代表的な魔眷属や魔物の討伐部位の場所がかかれたものを差し上げますね。」
“ありがとう。”
「それでは手続きをしますのでギルドカードを提出してください。」
ギルドカードに依頼の受付を登録してもらっている間に渡された手帳を軽くパラパラめくってみる。
かなりの種類が書かれている。
同一種の亜種も書かれているがざっと250種類書かれていた。
“(すごい量…)”
「おまたせいたしました。
受付を完了しました。
気をつけてくださいね。
無事のお帰りをお待ちしております。」
“では、いってきま~す♪”
ギルドカードを受け取りながら元気に挨拶してギルドを出て行くラン。
初めての野外依頼の始まりである。
少し外に出て活動させます。
決してステンレスの事を調べるのにてこずっているわけではありません!
…
時間稼ぎなんかじゃありません!
…むやみに近代技術の塊の合金なんて技術出すんじゃなかった…(-_-*;




