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第032話 試験説明

俺の手のひらの上で輝くなんの変哲も無いように見える銀製の指輪。

たった今彼女が作り上げた『魔道具』だ。

二重構造で作られた指輪を最後に一体にした為に魔法陣そのものが見ることが出来ない。

つまりコピー不可能だということだ。

なぜそんなことをしたのかと聞くと“回路が見えるのはきれいじゃない”とニヤッと笑いながら言った。

つまりコピー防止の為にわざと見えないように作ったわけだ。

『大魔道文明時代』の魔道具も大抵がそんな形で作られており魔法陣そのものが写すことが出来ないために模倣することが出来ないという。

そもそもどうやってそのような作り方するのか謎だったが今彼女の作り方を見れば納得がいく。

わかれば簡単な作り方だったのだ。

もっとも作り方がわかっても分解は不可能だろう…

これ…上下完全に一体になってるしな…


“そこのお兄さんちょっとこっちに来て。”


くたくたに潰れているギルド員の一人を呼ぶラン君。


“ギルマスが持ってる指輪、あぁ、どの指でもいいからつけてもう一度ポーション作ってみて。”


そう言われたギルド員が俺が持っている指輪を受け取り人差し指につける。


“それをつけたままさっきと同じようにポーション作ってみて。”


正直かなり疲れているのだろう、イヤイヤながらポーション作りに戻っていく。

だが変化はすぐに現れた。


「魔力があまり出て行かない?」

“そのまま続けて…”


結果一度も成功したことが無かった彼がポーションを作るのに成功した。

評価は4.

当人も信じられないようで何度もポーションと指輪を見比べている。


“どのくらいの魔力で作っているか理解したらその感覚を再現できるように練習すればいい。

できなければ理解できるまで指を使って感覚を覚えること。

一度感覚を覚えたら今度は魔力を少しずつあげて今度は評価を上げるように訓練すればいいよ。”


その言葉を聞いた彼は疲れているのにもかかわらず再びポーションつくりに取り掛かる。

体に感覚を覚えこませるためだろう。

そして他のギルド員は…


「あー、ラン君もういくつか今の作ってくれないか…他の物が怖い…」


物欲しそうと言うより『あれ俺達にもよこせや!』という目線が怖い。


“いくらで?”


ぐ…確かにあれがあれば訓練も進む。

場合によれば錬金ギルドに貸し出すことも出来るだろう…

しかもあんな物は遺跡からも未発見だ…


「うむ…」


俺が悩んでいるところにカーリ君の一言。


「耳撫で1回1個で!」

“………商談成立です!!

とりあえず5個作ります!

いや作らさせてください!!”

「5個じゃ足りない先のも合わせて10個欲しいからあと9つ。」

“かしこまりました!!”


そう言って猛然と作業を始めるラン君。

君は大金よりカーリ君の耳のほうがいいのかね?


「彼女『モフラー』ですから…それも隠れの割りにかなり重度な…」

「………難儀だな彼女の嗜好も…」



数個指輪を完成したときふとラン君がこちらに顔を上げて聞いてきた。


“そういや『実験』と『検証』に夢中になって忘れていましたけどここに呼ばれた用事ってなんでしたっけ?”

「あっ…忘れてた…」




「あっ…忘れてた…」


忘れるなよ…いや、私も忘れてたんだけどさ…


「あー、ん『昇進試験の日程と内容』だが試験の筆記試験は3日後の朝から始まる。

10時までに来るようにしてくれ、できれば30分くらい余裕を持ってきてくれるとありがたい。」

“了解です”

「試験内容は冒険者の一般常識だから大丈夫だと思うが心配なら2階の資料室に過去の問題が保管されているからそれを参照してくれ。」

“ん…”

「そして実技なんだが…」

“?”

「本来なら実技担当の試験官が相手するのだが皆用事が出来たとかいってな…まぁ、ようするに君とするのは御免だと逃げたわけだ。」

“???”

「あー、なにも君は悪くない、かってにこっちが怯えているだけだからほっとけ。

それでな試験無しとはできないので悪いが4日後にある騎士団との交流試合に出てもらうことにした。」

「本来ならギルドの警備団との交流試合なんだがそれに混ざってもらう。」

“ルールは?武器防具の持ち込みありなの?”

「あぁ、実は試合といっても戦闘じゃないんだ。」

“?”

「『棒倒し』って知ってるか?」

“砂浜とかで山作って棒をさしてどっちが砂を多く取れるか競う遊び?”

「君の祖国はそんな遊びがあるのかい?

こっちの『棒倒し』と言うのは2チームに分かれて相手の陣の丸太を倒す競技だ。」


ギルマスに詳しく話を聞くと所謂過激な所の運動会でするやつだ。

有名どころは防衛大学の開校祭におこなわれるあれだ。

海上自衛隊で第1術科学校に通ってた頃一度だけやったことがある。

まぁ、ルール説明のときに教官がそれならやってみるかといってやっただけなんだが…

素直に言うとあれ簡単に出来るものではない。

防大では生徒は全員大隊にそれぞれ編入されているのだがその大隊から精鋭の150人を選抜して行われる競技だ。

1ヶ月ほど前から訓練するそうである。

いや、あの競技、地球の競技とは思えないぐらいすごいものである。

私は他の競技で人が飛ぶシーンなんて見たことが無い。

自分で飛ぶんじゃないぞ、吹き飛ばされるのだ。

終わったときにはシャツはボロボロ下手したらスボンまでやぶれている。

何度か防大の開校祭に行ったことはあるがあれだけはやってみたいと思わなかったものな…。


ちなみにこれ部隊間で行われることもある。

なにしろ幹部候補生なんで学生でなく部隊の人間は全員『現役』バリバリの人間である。

陸自でしようものならキングコングまっさおな人間が選抜されて大量に出てくるしなにより部隊の『名誉』と『誇り』をかけてしてくるから遊びではなくなる。

正直見ているほうが怖いくらいの試合になる。

防大のものそうだが『流血』なんて軽いほうに見られて『重傷』前提で救急車待機させてやる競技なんてこれくらいなものである。


それをギルドと騎士団は100人対100人でやるという。

集団戦が基本の騎士団と個人戦が主体の冒険者でやること自体間違っている気がしないでもないが…


“ギルド側が勝った事あるんですか?”

「ない!」


やっぱり…


やっと試験に入れそうです…

ポーションひとつでどれだけひっぱるんだ…(-_-*;

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