第024話 砂糖生産
“これってやっぱり【テンサイ】だよな…”
村の労働力のひとつとして【家畜】の導入をしたいラン。
畑を耕すのにも牛や馬がいると便利なのだから当然のようにそう考える。
地球では牛などが紀元前5000年~4000年頃に家畜化され同時に農業での労働力として使われるようになった。
しかしこちらの世界は大きな土地が必要な動物はどうも家畜化しない傾向がある。
恐らくだが魔物や魔眷属から守るため居住エリアを壁などで囲い込むため馬など一部の軍用に使える動物を除き飼育するのに大きな土地が必要になる動物は敬遠されていた傾向があるようだ。
そもそも一部を除いて【肉類】はほっておいても軍や冒険者達が魔物を退治して持ち込んでくるから欲しい肉がいつでもあるという要求を除けば基本市場に豊富にあるのだ。
そのせいかいまだ畑を耕すのは人の力らである。
当然そんなことでは大きな畑の作付けと等は難しく小さな畑がたくさん並ぶことになる。
それでも【牛乳】や【山羊乳】等の需要があるため少ないではあるが家畜化はされている。
ただし少ない家畜で取れる【乳】の量は当然少なく結構な値段になる。
(しかも【牛乳】などは鮮度が命で短い期間しか保存が出来ないのでなおさら高額化する傾向がある)
この世界に来た当初チーズなどの乳を使った製品が存在しているのが判明した時点で牛乳程度なら普通に売っていると思っていたのだが大誤算だった。
主に保存の観点から王都などの都会でもない限りあまりないことが判明。
その為、村に銭湯歩作ったときに【風呂のあとの牛乳で一杯(フルーツ牛乳可)】計画が頓挫したのはランの記憶に新しい。
まぁ、そう言ったことはとりあえず今回の話には微妙にずれるので置いておくとして…
少数とはいえチーズなどを作る以上家畜はいるのだからどういったものか商業ギルドに話を聞きにきたのだがそこで家畜の餌の話になったとき気になるものを見せられたのだ。
【ビーツ】
ぱっと見た目丸大根かカブのできそこないのような根野菜を見せられた。
始めてみたはずなのにどこかで見た気がする。
そして思い出す。
地球でも同じように飼料用に使われていた野菜を。
【テンサイ】…日本では【甜菜】と書かれ【砂糖大根】とも呼ばれるもの。
原産地を地中海沿岸部に持ち日本では北海道を中心に生産され日本の砂糖生産量の75%をまかなっている野菜だ。
ちなみに日本での砂糖使用量で見ると25%程になるらしい。
以前調べたときに日本の砂糖生産ではサトウキビより割合が多かったのに驚いた記憶がある。
係りの人に頼んで欠片を少しかじらせてもらった。
ほんのり甘さがあることからどうも間違いないよだ。
日本でかじった事が無いのでなんとも言えないが恐らく日本で砂糖製造に使っている【テンサイ】とはまた少し違うのだろう。
現に地球でも食用・家畜用で甘さが違うとかかれていた記憶がある。
サトウキビ程ではなくてもここまで甘さがあるのなら作れるかもしれない。
そう、砂糖をだ。
地球では西洋は11世紀頃から砂糖の製造をし始めたらしいが庶民に気軽に使われるようになったのはスペインがカナリア諸島で、ポルトガルがマデイラ諸島とアゾレス諸島でそれぞれぞれサトウキビを栽培し始めてすらだという。
それまではやはり高くて普段から食べられるのは王侯貴族や大商人等の金持ちぐらいという価格だったらしい。。
そういや大航海時代のテーマのゲームでは結構砂糖が高価に取引されてたなぁ…。
とりあえず…
“これ欲しいのですけどいくらですか?”
【ビーツ】の大量に入った篭を指差して聞いていた。
1篭に10個の【ビーツ】が入っていた。
ランが定宿にしている【モーモー亭】に持ち帰り女将さんに許可を取り店の台所を借りる。
「ランちゃん、何する気だい?」
“ちょっと実験…もし私の想像通りならいいもの出来るかなと思ってる。”
「ほー、できたら見せて欲しいな。」
“いいよ、というより女将さんに確かめたいし(笑)”
「なにができるか楽しみにしてるよ。」
“(とりあえずやってみるとしますか…)”
【1】、鍋に水をいれ沸騰させる。
【2】、【ビーツ】の皮をむき1cm角程度の大きさに切る
【3】、切った【ビーツ】を寸胴鍋に全部いれ沸かしたお湯を完全に【ビーツ】が浸るまで入れる。
【4】、蓋をし毛布等で寸胴鍋をくるみそのまま1時間ほど放置。
【5】、寸胴鍋の中身を布で濾し、濾した汁を55~80度程に暖めながら少量の石灰(木灰)(液重量の0・1~0・3%位)を3から5回にわけてよく混ぜる。
【6】、よくかき混ぜた後火を止めしばらく放置、沈殿物がたまるまで放置。
【7】、上澄みの汁だけを別の鍋に移し再び今度は強火でアクを取りながら煮詰める。
【8】、汁が水あめ状になったら木ベラで焦げ付かないようにかき回す。
【9】、水あめ状の物がが茶色っぽくなってきたら火からおろしてさらにかき混ぜ続ける。
【10】、少し抵抗が出てきて固まりだしたなと思ったら中の物をさらに移して熱を取る。
まぁ、うまくいけばこの作り方でできるはずだ。
もっともこれで完成するのは固まる前の水アメ状が【ビートシロップ】というもので固まったのは黒糖もどきである。
もどきというのは本来黒糖は石灰をいれずにそのまま結晶化させたものだからだ。
ちなみに本来なら【テンサイ】を切ってお湯につける3の作業は70度前後の温度を保ったまま【煮込む】作業なんだが70度維持したまま1時間もするのなんか近代のガスコンロやIHヒーターでもあるまいしめんどくさいから毛布に来るんだ保温作業で済ますことにした。
ようは70度前後が維持できていたらいいのだから。
こっちの方が楽である。
実はこの方法、おでん作りなどに非常に向いている。
朝のうちに材料を出汁で煮込んだらあとはバスタオルと毛布に包んで会社に行けば帰ってきたらとろ火で煮込んだおでんのように出汁のしみこんだ美味しいおでんが出来るのだ。
一度お試しあれ。
話がそれた…
とりあえず3時間ほどかけて台所の隅を借りて作業した結果茶色っぽい塊が出来た。
【ビーツ】10個で約10kg。
それで出来た物は1.6kgの茶色い塊。
舐めてみると少し青臭さがあるが間違いなく砂糖である。
少し甘さ控えめのような気がするが。
以前調べたときは【ほうれん草の味がする】とか書かれていたからこの青臭さがそうなんだろうがそこまで気にするほどでない。
料理ならこれでいいのだがお菓子とかにはやはり見慣れた【白糖】の方がいいだろう。
「どうだい?目的の物はできたかい?」
“うん、うまくいった。
あとは最後の過程さえ成功すれば目的達成だけどこのままでも十分に使えるものが出来たよ。”
「ほう、それはよかった。
それで何を作ってたんだい?」
“これ、舐めてみたら判るよ。”
そう言ってランは薄茶色の物を女将に見せる。
「どれどれ…」
女将も指に付けて1口舐めてみる。
「甘い…ランちゃんもしかしてこれ?!」
“あたり!
砂糖だよ、まだ未精製状態だけどね。
料理に使うならむしろこっちの方がいいでしょうね。
お菓子なんかだと精製しないと色々えぐみが付くからだめだけど。”
女将に対して太陽のような笑顔を見せて説明するラン。
“あとはこれで飽和溶液を作って再結晶化させれば…”
「ランちゃん!」
“は、はい!?”
喜んで説明していたランにいきなり顔を近づけて真剣な顔になる女将。
「これだけ作るのに材料費いくらした?」
“えっと…火の薪代は別にしたら銅貨3枚…かな…”
【ビーツ】10個で約10kg…銅貨3枚。
その10kgで未精製の砂糖1.6kg。
精製すれば約550g程の白砂糖が出来るはずである。
ちなみに白砂糖1kgで半金貨3枚である。
いかん…女将の目の色の変わる原因がわかってしまった…。
「この茶色い状態のままでいいわ。
うちの店で白い砂糖はいらないから。
当然作り方教えてくれるわよね?」
“イ、Yes,Ma'am. ”
女将の目に炎が宿っていて怖かったので了承してしまった…
そんな訳でランちゃん式スパルタ砂糖(粗糖)作り講座開始です。
もっとも女将さん1発で覚えてしまってランとしてはさびしい限りでした…
一度作り方を教え女将さんが個人で復習している間にランはそっと自分の部屋に避難。
そこで粗糖から白糖精製作業を続ける。
なんか下から「できたのよ~♪」とか「経費削減だわ!」なんて声が聞こえるが知らないったら知らないのですよ…。
とりあえず水100g粗糖300g以上を放り込み完全に溶かして飽和水溶液を作る。
ビンなどの容器に移しほこりが入らないようにしながらも蒸発しやすいようにして涼しいところに置いておく。
すると3~5日ほどで水面と底に結晶体ができる。
あとはその結晶体を取り出し遠心分離機等で水分を飛ばせば完成。
まぁ、本当に真っ白い砂糖を作るのならこの作業を数回繰り返すのだがそこまではしなくても十分白いし結晶体になったことでえぐみ成分はほとんどなくなっているからいいだろう。
それで待つのに5日もかかるめんどくさい事なんてランがするはずも無く…
【上級錬金術】スキル持ち固有の生産魔法【時間加速】を使用して一気に時間を飛ばす。
まぁ、せいぜい鍋くらいの大きさまでの物にしかこの魔法は使えないがそれで十分。
しかも冷やすには以前作った【フリーズ】の指輪(結局あの事件の後アンヌさん用にもう1個作っている)で氷を作り冷やすことで効果を高めている。
さて最後の遠心分離機だが…
錬金の道具で確かにあるのだがそんな物をここで見せるわけにはいかないので力技で解決。
さらし等の目の細かい清潔な布で砂糖の結晶体を包み込み布の端を巾着袋のように紐で縛り…
少し長めの紐を用意して巾着に結びつけ…紐を手に持ち巾着を高速で振り回す!
昔の2層式洗濯機の脱水方法そのままの方法である。(笑)
ちなみにこの脱水方法を見た宿の女将さん腹を抱えて大笑い。
ともかくこうして従来のものより安く砂糖を作る方法がこの世界でも確立された。
のちにこの方式でエルシア村近辺では砂糖の生産と【ビーツ】の育成が盛んになる。
なお糖分を取った【ビーツ】は肥料製作に回されたり飼料として再利用されたりする為に畜産も従来より増えたのはランにとっても嬉しい誤算だったりする。
なお【モーモー亭】はランより教わった粗糖を元に甘い飲み物や食べ物がランの協力で開発されますます繁盛することとなる。
後に【モーモー亭】の看板の牛の顔の絵のの横にランの顔が追加されたのはの女将の感謝の気持ち3と悪戯心7の結果であったという。
今回の砂糖作り実は実験済みです。
というより味噌にしろ醤油にしろ実は経験済みだったりする。
まぁ、醤油はまだ結果でてないですが。
この手の小説を書くに当たって一度経験してみようと思い立ち実行しているのですがかなり楽しいです。
ネットなどで調べれば結構詳細が載っています。
ちなみに砂糖の巨大結晶は作り方しだいでものすごい巨大なものが出来るようです。
ネットを参考巨大結晶に挑戦してみたときは1cmほどのが出来ましたがこちらの不注意で崩壊させてしまい写真とかには撮ることができませんでした。
あの時は約2週間くらいかかって作りましたが…
気になる方は《砂糖の大結晶作り》で検索してみてください。
馬鹿でっかい砂糖の巨大結晶の写真とともに作り方が紹介されています。
※ 実際の作り方の参考について
当方の参考したところとは違いますが「てん菜糖」作りを挑戦した番組がありその作り方が乗っているホームページがあります。
URLを書くのは不味いでしょうから書きませんが『ザ!鉄腕!DASH!!』で検索してその番組のホームページを探してみてください。
すぐに見つかるはずです。
左のコーナーの欄から『DASH村』を選び『作り物』を選べば『てん菜糖』のコーナーがありますので見てください。
ほぼ同じ方法で作られていますのでお試しください。
当方と違うのは番組のほうは結晶を作る際に核となるものを入れる為に砂糖を入れること(当方は飽和現象を利用してます)と当方のほうの灰汁取りを効率よくする為に木灰をつていることぐらいで基本は同じです。




