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第015話 鍛冶やってみました!

“ちょっとまって…どうも色々な所で私とそちらの認識が違うみたいだからちょっと整理してみよう。”


そう言うと私はカールド一家を板間に座らせた。

ちなみに琥珀は私の頭の上がすでに定位置と化している。


“まずはこの野盗が持っていたナイフ、鉄製だけどもカールドさんは【高品質品】だと言ったよね?

なら【普通の品】の攻撃力や耐久力っていくつくらいなの?”

「そうだな…普通に道具屋あたりや武器屋で売っているものは攻撃力が2~3ほどで耐久力は8~10程だったかな?」


カールドはランの問いかけに妻のアンヌに確かめながらそう答えた。


“ふ~ん…私の育った国ではそれは失敗品のクズ扱いだね…”

「「な!」」


ランの言葉に夫妻は驚く。


“まずそのカールドさんが持っているナイフ、それ検証用に作ったから、かなりの手抜き作品なんだ。

通常なら私の育った国では芯として【鋼】を埋め込んで回りに【軟鉄】などをかぶせて一体化してから刃物を作るの。

そういった正規の手順で作ると品質にもよるけど大体攻撃力25~28前後で耐久力も300前後はあるの。

そういったのが私にとっては基準だからこういったナイフは【ナマクラ】といってクズ扱いです。”


だが夫妻はそもそも【鋼】を芯にするとはどういう意味かが理解できなかった。


“私の作ったナイフとこのナイフの性能差の違いから考えられる可能性は3つ。

1つ、素材の加工法の差

2つ、製造方法の差

3つ、製作者の腕の差

この3つが考えられます。

正直言えば全部当てはまっていると思いますよ。”


そう、それがランの出した結論だった。

大体『鑑定』スキルで成分検査を行うと異常なほど他の物質が混ざっている。

ようは純度がかなり低いのだ。

最初は意図的に混ぜられた『合金』なのかと思ったがそれにしては混ざり方に斑がありすぎる。

考えられるのは鍛冶で作っているのなら『鍛錬』が不十分で不純物の摘出が不完全と言うことだ。

もしこれがこの世界のドワーフ謹製の製品だったらランは泣くぞ…

俺のドワーフのイメージ返せってな具合に…


“私にしてみたらこんなナマクラの武器ばかりで魔物退治するなんてここの【冒険者】という人種は勇気あるねと感心するよ…”


ため息交じりのランの言葉に目をそらす夫妻。

あとで聞いたところによるとやはり高レベルの冒険者たちは【鉄】とかではなく【ミスリル】等のファンタジー素材の武器で戦うらしい。

もっとも古代に作られた武器と現在作られる武器とでは強度や切れ味が違うというから多分これも鍛錬不足や技術不足なのだろうと予想できる。


さすがに地球に無いファンタジー素材はまず手に入れて地球に送り分析してもらわないとこちらも鍛錬方は昔と同じ方法でするしかない。

とりあえずそういった素材は現物を手に入れてからだ。


「そ、それなら【鋼】を芯に使うって言う方法でバスタードソードをランちゃん作れる?」

“標準程度なら、と言っても私の国での基準ですけど。

さすがに【玉鋼】から作るとしたら【たたら炉】から作らないといけないから時間かかるしね…”

「その【玉鋼】って言うのが無いと無理なの?」

“いや、私の国の作り方だと【玉鋼】が一番の理想というだけで一定以上の純度のある【鋼】があれば作れますよ。

その【鋼】もさっき集めてたくず鉄溶かすときについでに作りましたから大丈夫です。”


普通なら【転炉】や【電気炉】などが【鋼】作りには必要だがそんな大規模生産設備なんて作っていられないし作れない。

ちょうどゲームから持ち込んだ【魔道炉】にはそのあたりの能力も備わっている便利な携帯炉であるからついでに少し作っておいたのが役に立ちそうだ。

本来ならその辺はこの世界の設備を購入するかインゴットを仕入れるつもりだったのだがそのあたりも少し軌道修正が必要かもしれない。


「ランちゃ~ん…お願い!パパの分1本バスタードを打ってくれないかな?」

“別にかまいませんけど、いきなりまたなんで?”

「この前の魔獣襲撃の事件でね以前使ってたのが折れちゃったのよ。

修理するにしても新しいのを買うにしても結構な金額がするからね…

普通のロングソード(片手剣)があるから大丈夫だと言ってもね…

やっぱりパパはバスタード持って初めてパパだからね…

できれば作って欲しいな~と。」

“のろけが理由ですか!?

いやロングとバスタードじゃそもそも使い勝手か違うだろうから安全の為に慣れた方を作るのは賛成ですけどね!”

「おねが~い♪」

“はいはい了解です、一本作らさせていたたきます、ただ少し時間がかかりますよ。

大体明日まで時間欲しいですね。”

「いいわよ♪」


アンヌさんの横で満面の喜びを滲み出しているカールドに向かって言う。


“カールドさん、修理考えていたのなら以前のバスタードそのまま置いてるんでしょ?

参考にするので見せてもらえませんか?”

「お、おう!すぐ取ってくる!!」



【バスターソード】

英語表記では【Bastard Sword】と書き【Bastard】は【雑種】または【私生児】という意味がありそれを嫌い英語圏では【Hand and a half Sword(片手半剣)】が正式名称であるとしているところが多い。

ほぼ同じ発音の【Busterd(破壊者)】と混同している者も多いが間違いである。


地球では14~16世紀頃にドイツで生産されたがすぐ後に登場した【銃】や【細身の剣】に主役を奪われ短命に終わる。

たたし登場したころは他の追随を許さない攻撃力に脚光を浴びた。

スイスの傭兵達が好んで使用したと言う。




母屋からカールドが折れた剣と鞘を持ってきた。

ランは受け取るとその剣を丹念に調べた。

全長は1.1m、刀身は90cm、身幅は5cm、重量は2.9kgといったところである。


折れたところを『鑑定』スキルで成分分析をしてみると先ほどの『高品質のナイフ』よりは良いものを使っているようだがやはり【鉄】それもランの基準からするとあまり良い【鉄】ではなかった。

ただ柄の部分はあまりこの剣には似合わない精巧なドラゴンが彫られていた。


“この剣特注品?”


柄の細工部分からしてそう判断してカールドに聞いてみる。


「いや、特注と言うほどではないが俺が最後にいたパーティのリーダーが俺用に注文してくれた剣なんだ。

それを折っちまって合わせる顔がなくてな…」

“ふ~ん、これ鍛造の板の削りだしで作ったものだね…

どうせならこれも直してしまう?

丈夫になるように直すよ?”

「直せるものなら直してくれ!そしたら会いに行きやすくなる!」

“了解です、ならこっちも直してしまいますね。”


そういうとカールドの剣の柄の部分をばらし始めた。

どうやら直すと言うより刀身自身を作り直すようだ。


結局、その晩は一日スミスハンマーの叩く音が途絶えることが無かった。

さぞかし村人も寝不足になったかと言うと…

そうでもなく、最初からそれなりに防音仕様で小屋は建てられていたために音はさほど気になるほどではなかったという。


翌昼、食事も取らないで一心不乱に製作していた2本のバスターソードの刀身は完成した。

折れたほうは一度溶かしなおし何度も【折 り返し鍛錬】を行い1枚の鉄の板に仕上げそこから金切り鋏で形を作りあとは磨いで仕上げる。

もっともその後に焼きいれを行ってはいるのだが。


もう一本は完全に日本刀の作り方をそのまま使って作り上げた。

芯鉄に【鋼】をいれ作り出されたバスターソードは西洋剣の形をした日本刀ともいうべきものに仕上がった。

柄には1本目と多少のデザインを変えたドラゴンが描かれている。


1本目


 【バスターソード】


 種別:バスターソード(片手半剣)

 評価:★★★★★★☆☆☆☆

 素材:鉄

 攻撃力:32+5

 耐久度:500/500

 製作者:ラン


 【追加効果】

 攻撃力+5


 一度折れた剣を再生打ち直した剣。

 製作者の技量が圧倒的だったため強化されて再生された。



2本目


 【イーストバスタードソード】


 種別:バスターソード(片手半剣)

 評価:★★★★★★★★★☆

 素材:鋼+鉄

 攻撃力:43+5

 耐久度:800/800

 製作者:ラン


 【追加効果】

 攻撃力+5

 STR+5 DEX+2 ACI+3

 【突き】時 攻撃力+10

 【斬る】時 攻撃力+8


 東洋の技術で作られたバスタードソード・

 特に【突き】・【斬る】という攻撃にボーナスが付く。



特に追加効果を魔法の【技能付加術】や【魔法付加術】や【創作付加】でつけたわけでも無いのにこの追加効果…

俺またやっちゃったかも知れない…

思わず2本目のバスタードソードを持ちがっくりするラン。

久しぶりに作るから気合入れて作ったのも間違いかもしれないな…

評価9…ゲームでも簡単にお目にかかれない【達人級】武器の完成である。


剣を木で簡易に作った鞘に収めているとアンナさんがランを呼びにきた。


「ランちゃん、ご飯食べないと体に悪いわよ。」

“は~い、一応出来上がったので食べに行きます。”

「あら、完成したのね?」

“えぇ、2本とも出来上がりました。”


そう言って鞘に収めて2本の剣をアンナに渡す。


「あらあらあら~♪ あなた~、あなた~バスタード完成したんだって~♪」


パタパタ母屋のほうに走っていくアンナの後ろからペタペタ足音を立てて付いていくラン。


“(つかれた、ご飯の後は共同浴場に行って汗流そう…)”


『おーーー!!』


なんかキッチンの方から雄叫びが聞こえますね…

ペタペタペタ…

漸くの事でキッチンにたどりツき扉を開けると…熊が突進してきた…


“ほえ??”


いや、熊は勘違いで、熊悟郎…もとい…この家の主のカールドがランに抱きついてきていたのだった。


「ランちゃん、本当にあれ貰っていいのか?いいのか?いいんだね?もう返せといっても返さないよ?」


ランの肩を捕まえて前後に揺するカールド。

興奮しているためか手加減が無い。

ランの首は前後にガックンガックン。


“あげるから、あげるから…揺するのやめて~、首もげる~”


どうやらご飯もお風呂ももう少し先のようだ。


“死ぬ~…”

ランのがとりあえず剣を2本打ってみました。

おかげでこの世界とゲームの差が露骨に判明。

どうやってこれを修正するのか…

作者にもまだわかりません(笑)

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