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第014話 品質の差

人は勝手にすれ違っていく。

どこかで元に戻せるのだろうか?


やはり日常の会話は大事です。

-王都リホン 王国冒険者ギルド本部-


「それで一体なぜあんな格好で檻に閉じ込められていたんだ?」


ギルマスであるロンドに問いにレウリーは力なく答える。


「人攫いか盗賊と認識されて問答無用でつかまった。」

「…お前何をした?」


レウリーの答えに訳がわからず再び問い直すロイ。

レウリーもとにかく村についてからのことを話し出した。


村に着いたら以前はなかった村を囲むように作られた壁のせいで村を監視するため少し離れた木の上から村の中を監視していたこと。

日が昇って1時間ほどすると教えられたガキが村長宅から出てきたこと。


「まて、村を囲んでる壁ってそんなに高いのか?」

「あぁ、でっかい丸太を何本も地面に突き立てて作ったような壁だよ。

構造そのものは単純だが丸太そのものが直径1m前後のものばかりだった。

地面にどれくらい埋まっているのかまでは判らんが上は5m前後はあるんじゃないかな。

正直俺が『遠見』のスキル持ちでないと見れなかったところだ。

その壁がずっと村の真ん中の広場を中心にして3kmほどの距離で四角に囲っている。

出入り口は主に街道沿いに2箇所。

あと閉まっている門がその街道を直角にする感じで2箇所。

丁度広場を中心に十字の形で村の中に道を作りそれぞれの先に門があるという感じに作ってある。

ありゃちょっとやそっとで落とせない感じだったな、丸太にも何か塗ってあるようだったし耐火、対腐敗効果もそれなりにあるよだったしな。」


サンプルを削って取っていたが身包みはがれたときにそれも持っていかれたとため息をつくレウリー。


「それだけでもそこいらの村じゃお目にかかれない重防御なのにしかもいまだ作りかけらしくて角のところに物見台らしいのが石を組上げて作っている最中だったぞ。

壁の内側もなにやら補強作業の最中みたいだったしな。」


レウリーの話をまとめると1辺3km前後の丸太の壁で村全体を囲み中に畑と井戸を各所に設置。

見張り台を各角と門の横に設置して見張り兼高所からの攻撃の台を確保。

食料さえある程度備蓄してあればある程度の期間篭城戦も可能な村に変わっているという。


「よっぽと春先の魔物襲撃が効いたのか…ありゃ一種の砦だ。

下手したら国の騎士団やこの冒険者達もほとんど信頼してなくて独力で撃退するための設備を作り上げる気だと思うぞ…」

「それとな…村の中と村から5kmぐらい先まで王都の道より立派な石畳の道が出来てたぞ…」


ロンドはそれを聞いて驚いていた。

魔物襲撃前からエルシア村の村長をしているカールドから村にギルドの支店を開いてくれと頼まれていた。

ただ村の人口が150人たらずでは冒険者が食べていけるだけの仕事が発生しないだろうと言って断っていたのだが。

ただカールドは魔物の討伐で得る素材だけでも大丈夫なはずだと言っていたが。


そして春先のエルシア村魔物襲撃事件。

早馬による連絡を聞いた騎士団や冒険者グループも村についたのは翌日であり村は魔物や魔眷属に蹂躙を受け壊滅状態になったあとだった。

しかも騎士団も冒険者達も村に残って調査や復興に手を貸すものは無くそのまま帰ってきたという。

それでは復興するに当たって騎士団や冒険者達を当てにすることは無いだろう。

聞き様によっては騎士団や冒険者が到着するための時間稼ぎ用と聞こえなくも無いがレウリーの見立てではそんな可愛い物ではなくまさに『砦』と言っていい仕様だという。

これはおそらく独力による撃退のほうが主眼に置かれているのだろう。

おそらく彼らはもう他人を当てにはしていないと思われる。


正直冒険者ギルドとしては失敗したと思っている。

支部は無理でも買い取り程度は出来る出張所程度は作っておくべきだったかもしれない。

そうすればここまであの村から信頼を失うことは無かったかもしれない。

ロイドにとりエルシア村のカールド夫妻は以前組んでいた同じパーティの年の離れた仲間であった。

現役時代はきちんと信頼関係が結べていたはずなのにあの事件以来見限られてしまったのかもしれない。

現にこの3ヶ月エルシア村からなにひとつギルドに依頼が無い。

外から独自に人間を呼び込んで村の中で済ませられるようにしてしまったのだろう。



「一度お詫びも兼ねて尋ねるのが筋だろうな…」


ため息をつき悩むロイドであった…


「俺の装備どうなるんだ?」

「人攫いと思われるような行動とったお前が悪い。装備はあきらめろ。」

「そんな…」

「すでに向こうで必要ないものは商人に売り払われているだろうから回収は無理だろう。」

「ガク…」


ロイドの言葉にレウリーは力なくうなだれる。

特殊な装備ならともかく今回の装備はほとんど金を出せば店で買えるものばかりだ。

それゆえに冒険者崩れの盗賊もしくはたちの悪い冒険者とランに認識されたのだが。

また金に関しては外に出るのに大金を持ち歩く冒険者はいない。

大抵は宿屋に預けるかお金をある程度払ってギルドに口座を作ってそこに預けるかをしているものだ。

それゆえに壊滅的な被害ではないが…

冒険者としてのプライドがズタズタにされたのだけは間違いなかった。



-エルシア村-


先日の野盗 (ランはレウリーのことを今でもそう思っている) から没収した装備を眺めて唸っていた。

内容は皮装備一式(狼の皮)と鉄製のナイフ3本にポーション数本。

保存食に半銀貨1枚に銀貨7枚銅貨22枚と鉄貨4枚。

さらに魔道具が3個。

内訳は『イグナイテッド(点火)』2個と『アクア(蒸留水生産)』1個である。

他にもこまごました物があったが(コップだのタオルだの)燃える物と金属物にわけて処分した。

金属物はとうぜん屑金属の保管庫に放り込んである。

そして…刻みタバコまであった…


“タバコあるんだ…”


カールドによればこれらは冒険者としての基本装備らしい。

でだ…カールド曰くほとんど『高性能(高級品)』であるらしい。

『らしい』というのはランにしてみれば『普通品』にしか見えないのだ。

実際『鑑定』スキルで検索してみても…





 【鉄製のナイフ】


 種別:ナイフ(短剣)

 評価:★★★★☆☆☆☆☆☆

 素材:鉄

 攻撃力:4

 耐久度:8/10

 製作者:ガルム工房


 エンチャント効果:なし





と表示されるだけ。

ゲームでは店で売っている商品(NPC製)は基本評価は3であった。

確かにこのナイフは評価4である。

これの評価3の時のステータスが判らないためなんとも言えないがひとつ評価が上がるくらいならあるていどこの製品作りなれてさえすれば初心者でも出すことに出来る数値だ。

そしてこのナイフが何か優れているわけでもない。

正直ゲームならクズアイテム扱いにしてしまうほどのものだったりする。

それが『高性能品』なのだからこの世界の普通の意味が正直わからなくなる。


悩んでみても仕方が無い。

とりあえず村長宅の裏に増設させてもらった【ラン実験工房】と書かれた小屋に行き自分で同じナイフを打ってみることにする。

本来ならこの世界の道具一式王都で購入して備え付けてからするつもりだったのだがさすがに好奇心に負けた。

ゲームで使用している道具一式もこちらに持ち込んでいる。

そんなわけで【魔道炉】と金床・スミスハンマーを取り出し仮設してやってみることに。

とりあえずの材料は居間まで集めたコボルト等が持っていた武器防具をインゴット化して使うことに。

最初の二時間ほど全部の武器等を【魔道炉】の坩堝を使い金属の種類別に溶かしインゴット化。


まぁ、これだけあればいくつか作れるだろう…

なんか異様なほどの鉄のインゴットの塊が出来たが見えないことにしておこう…

ある意味反則的機能のついた道具を使ったためほぼ100%素材がインゴット化してしまいかなりの量になっていた…


まず鉄のインゴットを板状にして細かく切る。

【てこ棒】とよばれる先の平たい道具の上に切った板を積み載せて藁灰と水に溶かした粘土をその上にかけ1300~1500度の炉の中に入れる。

炉の中に入れ鉄の板を一塊にする作業【沸かす】というらしい。

俺は本職ではないから名前などどうでもよく結果だけ判ればいい。

そもそも今回の鉄の板だって本来なら【玉鋼】と呼ぶ鋼を使うもんだがそのあたりはすっとばしである。

というか実験なのだから刀作っているわけじゃないんだし…


一塊になった塊をスミスハンマーで叩いて長方形にし横に切って重ね再び熱しまた長方形に叩いて今度は縦に切って重ねて再び熱しと繰り返すこと15回。

最後は熱しながら平たい棒状の形に整形する。


そして同じく適宜熱しながらナイフの形に整え刃の部分を整形していく。


あらかた形になったらヤスリ等で形を整形すし砥石で等で場ならしをしてナイフの形を整える。


藁灰で油取りを下のち水洗いして粘土、炭粉、砥の粉などを水で溶いて混合したもの を全体に塗りつける。

この際刃の部分は薄く他の部分は厚く塗る。


炉の温度を800度ほどに落とし横に水属性ランク1の『アクア』で作った蒸留水を貯めた水槽を用意し今まで作った刃物を炉で焼く。

全体が赤く赤熱したら水槽に一気に突っ込んで焼入れを行う。


日本刀ならこのあと彫刻を施したり銘切りをしたりするのだがその辺は今回はどうでもいいのでそのまま磨ぎを行う。

数種類の砥石を利用して丁寧に磨いで握りの部分は木ではさんで整形として皮をひも状に切って巻きつけると…


まぁ、こんな所か…




 【鉄製のナイフ】


 種別:ナイフ(短剣)

 評価:★★★★★★★★☆☆

 素材:鉄

 攻撃力:20+5

 耐久度:250/250

 製作者:ラン


 エンチャント効果:

 攻撃力+5





まぁ、普通こんなもんだよな…

作り方が違うのもあるかもしれないが『鍛冶』スキル持ちの普通、職人と呼ばれる者が鍛造でつくれば大体こんなものだろう…

なんなんだあの全体的に低い仕上がりは?


【魔法炉】の冷却時間を待っている間盗賊から取り上げたナイフと今自分が作ったナイフを目の前に並べなぜこんなに違うのか悩みまくっていた。


大体攻撃力が素で5倍も違うのが納得いかない。

なぜこんなに低い?

そもそも鍛造でも作り方が根本的に違いすぎるのか?


うんうん悩んでいるとそっと近づいてきたアンヌさんが上から覗き込んできた。


「ランちゃん何作ってたの?」


そういいながら目の前に飛び込んできたのはナイフとしてはアンヌの常識から外れたナイフであった。


“ナイフなんだけどね…”

「ラ、ランちゃ~ん…ちょっとこっちのナイフ見せてもらってもいいかな?」


ランの答えに動揺しつつもランの作ったナイフを見せて欲しいと頼むアンヌ。


“ん”


ランからアンフはナイフを受け取り『鑑定』スキルでみる。

アンヌもカールドも冒険者をしていて大陸西部を旅していたときに覚えたスキルだ。


ナイフを引きつりながら見ていたアンヌは「ありえない、ありえない」とつぶやきながら「ちょっと貸してね」といって母屋に走っていく。


「あなた!あなた!」


ランにしてみれば普通の作品である。

大騒ぎするようなものでもない。

それよりなんでこんなに性能の差が出るかを突き止めるほうが先であった。


胡坐をかきさらに唸りつづけるランに今度はカールドも伴ってアンヌが戻ってくる。

後ろにはちゃっかり琥珀を伴ったマリが付いてきていた。


「ラ、ランちゃん!、こ、このバスタード並みの威力のあるナイフどうやって作った?!」


カールドの言葉に今度はランが胡坐をかいたまま横にこけた。

器用である…


“まてーーい!!攻撃力が20前後のバスタードソードなんてなんの役に立つんだ?!”


ランの知る【バスタードソード(片手半剣)】とはNPC物で30前後プレイヤー物で40前後の攻撃力がある。

ランに言わせて見れば20前後の物なんて評価1か2のナマクラ物どころか壊れていると判定される物でしかない。


「【バスタードソード】といえば22~23あたりが当たり前に決まっているだろうが!

25以上なら超がつく一級品ものだ!」


どうやらこの世界、制作方法が違うのかそもそも似て異なるものなのか…

ランが思っている以上に全体の物のステータスが低いようだった。


“こんななナマクラで魔物と戦える冒険者に私は今感動したよ…”


どうやらまた認識の調整が必要であるようだ。

すみません、いつもよりなんか長くなってしまった。

どこかで切ると中途半端になりそうなのでこのままにしてあります。


さて、ランのゲームでの認識とこの世界での認識がまず品質の差であらわれ始めました。

他にもいっぱいでると思いますが。

さてどうやって補正しようか?(笑)


そろそろマッド生産者の地が出始めてきました…(笑)

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