↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『親から子へ ~シャンテの宇宙創世記~』  作者: ひややっこ万次郎
第一章:テトラグラマトンの天裁と母の条件
PR
2/22

第一話:オルテリウスの残響と、母の条件2

「待ちなさい、シャンテ。楽園を創るということは、ただ緑や命を増やす足し算ではない。地球には、あのオルテリウスの『途中で断ち切られた生命の残響』が未練の電波となって必ず降り注ぐ。

お前が向き合うのは、その目に見えない宇宙のバグなのだ」


ゼウスは語気を和らげ、壁面にひとつの美しい女神のホログラムを映し出した。

それは、シャンテの母であり、かつてひとつの惑星を完璧に調律してみせた偉大な女神「ヴィーナス」の姿だった。


「お前の母ヴィーナスもまた、かつて自らの星を担当した時、その最期に凄まじい残響の嵐(スクリーンの大氾濫)を経験した。

滅びゆく星の民たちが『個の器』を失う恐怖から放つ、悲しい映像の叫び。

母はそれを見て貰い泣きをしたが、決してその電波に自分の意識を合わせることはしなかった。

『可哀想だから、その影をもう一度生き返らせてあげたい』と同情して残響に囚われれば、新しい星もまた前世の呪縛に巻き込まれて崩壊する。

母は冷徹なまでの『澄んだ第三者の心』を保ち、彼ら、彼女らの意識が、宇宙の海へ還るのを信じ、この大地からの祈りによって、

その生活や想いの映像を『愛する我が家で笑い合う温かい記憶』へとチャンネルを回すように移し替えてみせたのだ。

そうして、星全体の魂を本当の平穏へと導いた」


ヴィーナスの姿を見つめるゼウスの言葉は、シャンテの胸に重く響いた。


「シャンテよ。母ヴィーナスからお前へ受け継がれる、地球を引き受けるための唯一の条件がある。それは、どれほど美しく悲しいオルテリウスの映像が目の前に現れても、決してその電波に巻き込まれないこと。

それらはすでに抜け殻であり、その惑星に生きた生命は、大いなる宇宙の海で安らいでいると100%信じること。

そして、お前自身が、これから地球に誕生するであろう生命たちが生み出す組織のルールや誰かの言葉に盲従せず、『自分の足で立つ澄んだアンテナ(孤独な自立)』であり続けることだ。その覚悟が、お前にはあるか?」


ゼウスの問いかけに、シャンテはハッと息を呑んだ。

可愛いお庭を創りたいという乙女じみた理想は消し飛び、自分がこれから引き受ける「命の重さ」、そして宇宙と大いなる海を調律するというエデン・チューナーとしての真の責任の大きさを、初めて肌で理解したのだった。

シャンテは、自身に流れるヴィーナスの血の熱さを自らの胸に感じながら、まっすぐにゼウスを見つめ返した。

その瞳からは甘えが消え、一人の自立した女神としての確かな光が宿り始めていた。


「……おじいさま。私、行くわ。お母様のように、自分の目で世界を見つめて、地球を本当の平穏の惑星へ導いてみせる」


ゼウスは深く頷き、ついに7つの道具をシャンテへと授けた。

無数の神々が見守るなか、まだ見ぬ地球へ、そしてこれから始まる壮大な生命と残響の調律の旅路へ向けて、シャンテは自立した一歩を踏み出すのだった。


第2話へつづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。