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『親から子へ ~シャンテの宇宙創世記~』  作者: ひややっこ万次郎
第三章:無垢なる赤子の胎動、そして死を知らぬ陽炎
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第六話:虚空のゆりかご、吸い寄せられる体温1

最高意思決定機関「テトラグラマトン」から放たれた黄金と青の光の船「オリゾン」は、魔の小惑星帯を突き抜け、ついに第三惑星・地球(アース)の軌道へと滑り込んだ。

しかし、その舳先から見下ろした光景に、見習い女神のシャンテは言葉を失い、その場に立ちすくんだ。

彼女が夢見ていた「可愛い動物や色鮮やかな花々が咲き乱れる、綺麗なお庭のような楽園(エデンの園)」の面影など、そこには欠片も存在しなかった。

眼下に広がっていたのは、まだ時間も個の境界線も持たない「大いなる宇宙の平穏の海」から、コップで一滴の水が汲み上げられるようにして、ようやく「肉体」という物質の形をとり始めたばかりの、混沌と沸騰の原始地球の姿であった。


「これが……私の創る地球? お花を植える土どころか、足をつける場所さえないじゃない……!」


地表には硬い地面など一坪もなかった。

粘り気のある、どろどろとした暗赤色の溶岩の海が、巨大な生き物の皮膚のように地を這い回り、波打っている。

マグマの表面が宇宙の冷気に触れてわずかに冷えると、引き裂かれた火傷の痕のように黒い岩の膜(原始の地殻)が浮かび上がるが、内側から噴き出す凄まじい熱圧によって、すぐにメキメキと音を立てて引き裂かれ、再び眩しい黄金の流液が噴き出す。

あちこちで、ガソリンが爆発したかのような巨大なマグマの水泡が「ボコッ……バシャァン!」と不気味な音を立てて弾け、周囲の空間に無数の火の粉と高熱の飛沫を撒き散らしていた。

青さの欠片もない空は、地底から噴き出す硫黄や二酸化炭素の重苦しい「漆黒のガス雲」が何層にも重なり、圧倒的な重圧となって地表を押し潰そうとしている。

気温は数百数千度。気圧はあまりにも高く、空間そのものが濁って歪んでいた。

音の世界はまさに、生まれたての星の凄まじい産声だった。

地底の奥深くから地鳴りが「ゴゴゴゴゴゴ……」と絶え間なく鳴り響き、黒い雲の隙間からは、全長数十キロに及ぶ紫色の「原始の稲妻」が間断なく、音を置き去りにして地表へ激突する。

そのたびに、鼓膜を激しく揺さぶる大音響が、熱い大気の中で四方八方へと反響し続けていた。

しかし、シャンテが何よりも恐怖し、胸を締め付けられたのは、その灼熱の地獄の光景そのものではなかった。

そのドロドロと沸騰するマグマの熱気と、激しい静電気の嵐の狭間に、あり得ない「陽炎(蜃気楼)」が大氾濫を起こしていたのだ。

それは、先ほど通り過ぎた火星と木星の狭間で砕け散った、あの「惑星オルテリウス」の民たちの、生々しい電気信号の残響(バグ)だった。

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