第26話弱気
幼き頃から、どこか孤独を求めるような子供だった。
目は淀んでいたし、関わりを持つことを何よりも恐れた。
自分が開いていた道場は当時は小さいもので、門下生も少なく、少数精鋭派を採っていた。
特に、弾の世代は強く、小学生なのに既に、黒帯を手にしてた。
良くも悪くも、強きを求めた世代は、みるみるうちに成長を遂げた。
武道。
それは精神の修行でもあり、ただ強いだけでは武力ではない。
能力を主軸とした鍛錬を基礎としてきたが、今、弾が死んだという報せを受け、それが正しかったのかどうか、悩みの種となっている。
弾の世代の5人は、皆が中学へ上がるときに世界中へ散らばり、弾自身も辞めてしまい、残ったのは1人となってしまった。
いつか弾に……精神の修行を…幸せというものを、教えてやりたい。
自分を殺すことと、自身の存在を無くす事は、心の方へのダメージに違いがでる。
自分を認める存在が鳳のみになった今、俺は少し気怠さを感じてしまっていた。
鳳と出会った夏、テロを起こした冬のはじまり。
冬も深くなり、もう直ぐ年が明けるかという時。
俺はまた人を傷つける為に奔走していた。
仮面を付ければ意外とバレないもので、日中でも行動ができることを知った。
明王が居なくなった今、俺という盾をなくした明王院学園は近畿中のヤンキーの標的となってしまった。
かつては弾圧したのだ、復讐の好機と考えるのは当然だろう。
今もまさに、そんな輩を尾行している。
私立岳南学園。
在校生全員がヤンキーの、掃き溜めのような学校で、番格を呼び出すのではなく、学校への乗り込みという形で制圧した学校だ。
そんな岳南の番長グループが、明王院の生徒にちょっかいを出したり、学校を支配下に置こうとしているみたいだ。
今は昼下がりだというのに、こいつらはまた明王院に乗り込もうと、地元駅まで来ていた。
俺は近くの公園の木の陰から、襲撃の機会をうかがってる。
木の直線上には、道路を一本挟み、路地裏へと続く道がある。
ここへ誘導し、一気に殴り込む。
ふと、一行が近づくのに気付く。
俺は目を凝らし、機会を狙う。
一歩、二歩と奴らは近づいてくる。
今だ!
と感じた時、俺は木を大袈裟に蹴り、一行に向かって走り出した。
木のガサガサという音に気付き、視線を向けた一行は俺の存在に気付く。
下っ端の1人の足元にスライディングをした後、その勢いで立ち上がり、また勢いを殺さずに路地裏へと入る。
威嚇をすれば、奴らは必ず追いかけてくる。
「テメェ、待てコラ!!」
予想通り。
奴らが追いかけて来ていることを確認し、俺はわざと行き止まりへと行き、足を止めた。
追いついた岳南の奴らは
「テメェ誰だ!コッチ向けやボケェ!」
と威嚇してきた。
俺は要求通り、振り返った。
「仮面なんかつけやがって、頭イかれてんじゃねえのか?」
あながち間違いでもないぞ、と心で答えた。
「お前ら、明王院を襲撃するのか?」
俺は低めの声で訪ねた。
「あぁ?それがどうしたってんだ。」
「お前ら、岳南だろ、明王院の支配下ではないのか?」
「明王が死んだからな、今迄のお礼をしに行くんだよ!」
ヘラヘラとしながら答える。
「辞める気は無いか?」
これは最後の問いだ。
ここで辞めると答えれば、俺は何もせずに姿を消すつもりだった。
だが……。
「あぁ?テメェ何なんだよ!うるせえんだよ!」
まぁこうなるか。
これで、もう何回目だろうな…。
鼻で笑い、
俺は奇眼を出した。
奇眼の放つ威圧感だけで、一行は失禁しながら倒れた。
この岳南の奴らで、大阪のお礼参りを企む学校の牽制は終わった。
まずは一つ目の仕事を終えた。
二つ目は……和歌山を本拠地とする黒間組を……黒間五歌を殺す事だ。
ただ、五歌は黒間の代紋を15にして手にした男だ。
真中を殺す事ほど簡単では無いだろう。
今度こそ、死ぬかもしれない。
そう感じてしまった自分を大笑いし、俺は拠点へと帰った。




