天才画家、ハロン様と婚約候補解消ですわ
本日は五人目の婚約候補解消の提案ですわ。
五人目は、伯爵家の息子、ハロン様ですの。
この方も私と同じ14歳ですわね。
ハロン様は、絵を描くことが全てですの。そしてそれ以外には、私にも、殆ど興味も無く、本能のままに動きますわ。
聖女が召喚されると、聖女をモデルとして絵を描くようになりますわ。そして気に入った題材として近くにいる様になりますの。
ゲーム内ではそれが近くに侍っているように描かれますわね。ただ、彼は『君を描きたい。』と言って絵を描くだけなのですよね。
「ようこそ、わが家へいらっしゃいました、ハロン様。」
「あ、そこに座って、手は膝の上で重ねて。」
ちょっと突然ですが、これは、ハロン様との会談では良くあることです。
ハロン様は付いている侍女から画材を受け取って書き始めました。
艶のある銀の長い髪はついている侍女が赤いリボンで纏めています。
水色のスーツの上には、生成りのスモックを侍女が羽織らせています。
この侍女がとても有能で、絵を描く準備は全てしてしまいます。
ハロン様は、いつも自然体で描きたいものを見つけたらこのように突然書き始めるのです。
その描いた絵が素晴らしくて、私もお父様も援助のつもりで婚約者候補にしていますわ。気分はパトロンですわね。
あちらのお家も、私と結婚出来れば一生絵を描いていられると思って婚約者候補に申し込んだようですわ。
あまり裕福な家ではないので、絵の具代を確保するのも大変だったようですわね。
ハロン様は絵描きとモデルの関係でいて、誤解を生むような行動をしなければ、パトロンとしての婚約者でも実は良いのです。別に絵の題材が聖女と言うだけなら問題は有りませんものね。
ただ、一人だけ婚約者候補の解消から外すわけにもいかないので、ちゃんと婚約者候補解消は致しますわ。
後はお父様に普通のパトロンになっていただきましょう。
……ドタ……
……ドタドタ……
……ドタドタ……ドタ……
あら、困りますわね。折角の絵が途中になってしまいますわ。
……ドタドタドタ……
……ドタドタ……にを……ドタドタ……まえ……ドタドタ……
……ドタ……ドタ……
遠ざかって行きましたわ。さすまたが有効だったのかしらね。
その後2時間ほどで絵は出来上がりましたわ。
今はお茶とお菓子をいただいた所です。
「ハロン様、婚約者候補の仕組みを解消しようと思いますの。」
「じゃあ、婚約者候補じゃなくなるの?」
大きな目をくりくりとしながら、こてんと首をかしげます。
絵を描いていないときは、本当に可愛いですわね。
「それで、まだ婚約者候補でいたい人は、条件を決めて、一月ほどその条件を守れるのかやってみて、条件を守れた人が二人以上いたら、一人を選んで今度は婚約者になりますの。」
「条件ってなあに?」
「まずは穀倉地帯は結婚してももらえなくなります。」
「そう言うのがもらえるんだったのかあ。」
「そうでしたの。」
ちょっと苦笑してしまいます。
「それから、結婚後子供が二人できるまで、貞節の誓いを立ててもらいます。」
「それを立てると絵が描けなくなる?」
「女の子に無闇に触れなくなるわね。」
「そっか。」
ハロン様ならこれも気になりませんわね。
「女の子と二人きりで部屋に入るときは、私か私が言う侍女と一緒に部屋に入って下さい。」
「え?」
良く分かってませんわね。
「女の子を家の中で書くときには、私も一緒か、私がいった侍女も一緒にいるの。」
「そおなのかあ。」
これは、分かってないときの返事ですわね。
「この中にみんな書いてありますから、ご両親に見て、教えてもらって下さいね。」
シモーニュ伯爵家の方々に、対策も説得も任せてしまいましょう。
お詫びの目録も一緒に入ってます。
「はあい。」
あ、いい笑顔ですわ。
「ではまたこんどですね。」
「またね。」
ハロン様との会談も無事終わりましたわ。
◇◇◇◇◇
「……と言う事が有りましたの。」
今は夕飯で、昼間にハロン様がいらした時の一部始終を話した所ですわ。
「ハロン君はちゃんと分かったのか。」
「怪しいのですがご両親がちゃんと教えて下さるのではないかと。」
丸投げですわね。多分大丈夫でしょう。
「あの家ならば、理解していなくても何とかなる仕組みを作るだろう。」
「でしょうね。」
今までもそうでしたからね。
だからこそハロン様は婚約者候補を務めあげているのですし。
私とお父様も基準はとても甘くしていますけれどもね。
「お父様、今日は突破はされませんでしたが……」
「分かっている、王家にはしっかり言っておく。」
突破されるされないよりも、まず突撃しないで欲しいですから。
来客中の応接間ですのよ。
「それで、オンジュ公爵家からは婚約の申し出が来ている。」
「妥当ですわね。」
「妥当だな。」
お父様と頷きあいます。
「ジェレミーが婚約者に名乗りを上げるのは予定通りなのかい?」
お兄様が不思議そうに聞きます。
「ジェレミー様自身は予定外でしたが、あの家は、どうにか私と結婚させたがっていましたから。」
「家が押し込むっと騎士殿とは逆だな。」
「婚約は家が主導ですもの。」
「まあな。」
お兄様も何か思う所があるようです。
自分の婚約相手でも考えているのでしょうか。
「でも、ジェレミー様が一月の試用期間を乗り越えたなら、私、ジェレミー様を見直しますわ。」
「儂もそうだな。」
「二人とも何気にひでえな。」
「あら、お兄様はジェレミー様が簡単に一月を乗り越えられるとお思いですの?」
「…………俺も見直しそうだ。」
「でしょう?」
あら、お兄様思う所と言うか何か言いたそうですね。
「どうかしましたのお兄様?」
「いや、父上。」
「なんだセルシオ。」
「公爵家を切り盛り出来るって娘が居るんだけど。」
「婚約者にしたいのか?」
「うん。エリン=パットン伯爵令嬢。俺より少し背が低くて、美人で、とてもスタイルが良いんだ。」
お兄様、外見しか褒めていませんわよ。
「パットン家か、では調べてみよう。」
「えっ」
「その娘を明日家に連れていらっしゃい。切り盛りできるのか軽く見て上げるわ。」
「ええっ」
「何を驚いているの?切り盛りできると自分で言うのと実際に出来るのとは別でしょう?軽く見て、出来そうなら仕込んでみないと。」
「相手が良くても家や周りがまずい事は良くある。婚約者にするなら調べるのは当たり前のことだ。」
「おとうさま、おかあさま、どうしたのですか?」
「お兄様が結婚したい人が出来たから、本当に結婚出来るのか調べてみようねって言ってるのよ。」
「そうですか。おにいさま、けっこんできるといいですね。」
「そうだね。レリンの言葉が暖かいよ。」
お二人のチェックを潜り抜けられる令嬢だと良いですね。
今日はこのまま終わりましたわ。
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