騎士団長の息子、アクテア様と婚約者候補解消ですわ
本日は三人目の婚約候補解消の提案ですわ。
三人目は騎士団長の息子、アクテア様ですの。
この方も私と同じ14歳ですわ。
この方は、私に心から忠誠を誓っているようですの。
それでも聖女が召喚されると、聖女の護衛役として、聖女の側に侍ってしまうのですけれどもね。
「ようこそ、わが家へいらっしゃいました、アクテア様。」
アクテア様は椅子には座らず私の前に跪き、胸に手を当てています。短く刈った茶色い髪が、私の胸の下に見えます。
ベージュのスーツに身を包んでいますが、このスーツ、詰襟でちょっと見には騎士服っぽく見えます。アクテア様の憧れの表れでしょうね。
「シャリア様、アクテア=ドニントンお呼びにより参上しました。」
いつも私の所に来るとこの騎士の礼をしてくださいますの。
私に忠誠を尽くす証だそうです。
「アクテア様、顔を上げて、そちらの椅子に座って下さいな。」
「椅子になど、私はあなたの前にこうして跪いていたいのです。」
アンバーの瞳に熱を帯びながら、私に訴えかけます。
「私もこのままのあなたとゆっくりお話をしていたいのですが、あなたに正式に伝えないといけない話が有りますの。そちらの椅子に座って下さいな。」
出来るだけ穏やかに、アクテア様に伝えます。
「それは残念ですね。貴方に跪くと、主の元にいる嬉しさで、心が沸き立つのですが。」
「それは、ごめんなさい。私もこうしていると楽しいので、ただのお話ならそのままの方が好きなのだけれど、家同士の話になるの。」
「それでは仕方が無いですね、どういったお話ですか?」
そう言いつつ、立ち上がってソファに座ります。
「婚約者候補の仕組みを解消しようと思いますの。」
「何故です?それでは私はどうなるのですか。」
悲しそうな表情で必死に私にすがって来ます。
やっぱり、本気で私に仕えて下さっていたのですね。
「身の振り方は二つ。そのまま婚約者候補から降りるか「それは嫌です」新しく婚約者としての条件をお互いに出し合って決めた上で、一月ほど試用期間を設けて、条件を本当に履行できるか確認した後、履行出来た方が複数いるようならその中から選ぶことになるかと。」
「私の他には居ない事を願いますね。新しい婚約者の条件とは何ですか。」
命に係わる何かを突き付けられたように真剣な瞳で私の言葉を待ちます。
人生にはかかわるでしょうが、もう少し肩の力を抜いてくださいな。
「まずは、穀倉地帯は結納から取り下げます。」
これは最初に告げないと。
「分かりました、次は何でしょう。」
まるでいらない物の様にあっさり流します。
「次に、結婚後子供が二人できるまで、貞節の誓いを立てて下さい。」
ええ、皆さんに入れますの。
「もとより浮気などする気も有りません。次は。」
ここまできっぱり言われると嬉しいですわね。
「それから、最上級の騎士の誓いをお願いしますわ。」
他の女性の護衛と被っても私を優先してほしいので。保険ですわ、乱用しませんわよ。
……ドタドタ……
「望むところです。他には。」
これ、仕事より私の願いを優先させるのですけれど、望むところなんですか?それでいいのですか?
……ドタドタ……下……
「最後に、私以外の妙齢の女性の護衛にはつかないで下さい。」
聖女などの護衛につかれては困りますからね。
聖女から離れる方でないと婚約できません。
……ドタドタ……下さ……
「それは、私から申し出ることはしませんし、断りの要望も出しますが、仕事で命じられると断れないことも有ります。」
……ドタドタ……待っ……様……ドタ……
なにか騒がしいわね、昨日も同じようなことが有った様な。
「それは困りますわね。妙齢の女性の護衛をずっとされると、その方と噂が立って、私は浮気をされたと誹ら(バタン)「おい、シャリア」
昨日と同じ、アウグスト殿下の登場ですわ。
そのまま私の方に迫って来られて
「女性に向かって何をする。」
アクテア様が取り押さえてくださいました。
「この者はいかがしましょうか。」
「狼藉者ですの「おい」家から放り出していただけますか。」
「何をする。お前ドニントン騎士団長の息子か。俺に手を出すと王立騎士団には所属できんぞ。」
アウグスト殿下がアクテア様を脅しておりますわ。
「構いません。女性に乱暴狼藉するものに仕えたくはありません。シャリア様の騎士団に入れてただけば、先ほどの条件も守れますか?」
「そうですわね。我が家の騎士団に所属できるようお父様にお願いしておきますわ。」
「助かります。」
あら、満面の笑みですわ。
「今日の会談の内容と、今まで拘束したお詫びは、書類にしてお家に送っておきますわね。」
「お願いします。」
暴れる殿下を連れて、アクテア様は帰って行きましたわ。
◇◇◇◇◇
「……と言う事が有りましたの。」
今は夕飯で、昼間にアクテア様がいらした時の一部始終を話した所ですわ。
「最上級の騎士の誓いって、あれだろ、仕事を放りだす奴。シャリア、お前も相当な悪女だな。」
「まあ失礼な、使う所は選びますわよ。」
むやみやたらと使ったりしませんわ。
「どんな時に使うんだ。」
お兄様が、興味八割といった様子で聞いて来ました。
「私をパーティに一人で行かせて、他の女の護衛をしているときなどに。」
「しっかり相手の仕事中じゃねえか!」
あらそんなに驚かなくても。
「そのままだと奪われた女のレッテルを張られてしまいますわ。」
「だからって仕事中の男に使うなよ。しっかり悪女じゃねえか。」
まあ、お兄様何をぶつぶつ言っているのかしら。
「大体妙齢の女性の護衛をしないという条件も有りますもの、先にあちらが条件を破った時ですわ。」
「その条件も問題だろうが。」
お兄様、騎士が仕事を選べるかとか、ぼそりとつぶやいてますわね。
「それよりうちの騎士になりたいと言うのは本気なのか?」
お父様が聞いて来ましたわ。
「本気の様でしたわお父様。どうでしょうか?」
「本気なら構わん。あの王太子を制して見せたのだ、胆力は十分だろう。我が家の騎士になるなら、あの条件も満たし易いからな。鍛えたらお前の護衛につける。」
「有難うございます。」
「本気かよ。」
お兄様、一言多いですわよ。
「家の騎士団に入るのならば、婚約しても構わんぞ。家から出されたならば、うちが持っている伯爵位をやる。二人で暮らせ。
「有難うございます。」
「信じらんねぇ。」
お兄様うるさいですわよ。
「トミアセ侯爵家から婚約候補解消の知らせが来た。」
「早いですわね。」
「トミアセ宰相とはそう言う男だ。一日あれば十分だろう。」
お父様がコーヒーを飲みながら答えています。
「こんやくこうほかいしょうって、どういういみですか。」
レリンが尋ねてきました。
「今まで婚約者候補だったけどやめますねってことよ。」
「シャリアは振られたのさ。」
「おねえさまをふるなんて、ひどいです。」
レリンが頬を膨らませて怒っています。本気で怒ってくれるのね。
「酷くないわよ。婚約者候補をやめましょうねって二人で話し合ったの。振られたんじゃないのよ。」
「じゃあよかったのです。」
レリンがにこにこと笑顔になりました。
この笑顔が癒しですわね。
「セルシオ、お前の方はどうなっている。」
「どうもこうもすぐには何も変わりませんよ。」
「そうか。お前の相手も選ぶことにする。」
「なんで。」
お兄様、そんなに驚くことですか?
「いままで、他の者達はシャリアの婚約者候補だったからお前の好きにさせてきたが、そうでもなくなったからな。トミアセ侯爵家なら、すぐに結果を出すだろう。一向に動かんお前に変わり儂が選ぶ。」
「父さんが出なくても僕が探しますって。」
「なぜ今まで動いていない。」
「二日じゃ動いても結果は出ませんって。」
「学園に入学してから一年以上だ。やはり儂が選ぶ。」
「そんなあ。」
「お兄様、好みの女性が選べなくて残念でしたわね。」
「うるさい!」
「おやおや。」
そして食事が終わり、一日が終わりましたわ。
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